「需要ショック」と「供給ショック」

世界中が中国のウイルスに侵され経済や社会生活が混迷しています。国民の生活への政府の方針には「需要ショック」と「供給ショック」があるというお話。

日銀は10月29日の金融政策決定会合で物価見通しを下方修正しました。コロナ・ショックからの経済立て直しで日銀は今後何をすべきなのか考えます。「経済・物価情勢の展望」では、日銀政策委員の見通しについて、2020年度の実質国内総生産(GDP)伸び率を7月時点の4・7%減から5・5%減へ、消費者物価指数(除く生鮮食品)伸び率も0・5%減から0・6%減へとそれぞれ下方修正となりました。なお、各政策委員の見通しは同じではないため、これらの数字は見通しの中央値で比較しています(日銀HP)。また、各政策委員はこれらの数字について下振れリスクがあるとしているのは共通しています。経済ショックの際に大事なのは、それが「需要ショック」であるか、「供給ショック」であるかを見極めることです。出ている「数字」は需要であろうが供給であろうが同じなのですが、「数字」へのアプローチが変わります。2011年の東日本大震災の際、何度も需要ショックだと言っていたのに、財務省に型をはめられた委員たちは「東日本のサプライチェーンが分断されるので、供給ショックになる」という意見を貫きました。供給ショックであれば、インフレ率が高まるので、総需要管理のために増税も容認されます。当時の財務省は、供給ショックであるとした一部経済学者の意見を奇貨として復興増税を主張し、民主党政権においてそれを実現させました。世界中から笑いものになった「復興増税」です。今回も、「中国のサプライチェーンが機能しなくなるので、供給ショックである」との意見が、世界の有力な経済学者からも出され、日本でも、一部の有力な経済学者は供給ショックと予想しました。今回は安倍政権において、賢明にも「需要ショックである」として、有効需要を創出する積極財政と金融緩和の一体政策を行いました。需要ショックであればインフレ率は下がるはずで、有効需要を作らなければなりません。しかも、今回は政府と日銀の連合軍で、政府が大量の国債を発行し、それを日銀が市場で買い取るという方式です。何度も何度も書いていますが、日銀が保有する国債への利払い費はありますが、それが日銀から納付金として政府に戻るので実質利払い負担は国にも国民にもなく、償還についても財政法で乗換ができるので次世代への償還負担もありません。つまり、インフレ目標に届くまでは財政負担を発生させない。従って将来世代にも国債の負担はない。この方式は、日本のみならず、欧米でもコロナ・ショックへの対策として行われている方法で、財政規律大好きのドイツでも行われました。今回も需要ショックであることが、日銀の物価見通しでも明らかになりました。世界中のエコノミストの間でも議論があったくらいですから、日銀内でも同様の議論があったはずです。誰が正しく予測して誰が間違ったのかをきちんと検証して記録されるべきです。日銀は2013年に黒田総裁体制になった直後から、年間80兆円ペースで国債買入による金融緩和を行ってきましたが、16年9月のイールドカーブコントロール(長短金利操作)の導入から年間20兆~30兆円にペースダウンしました。そして今年6月から50兆円ペースになった。これは大量国債発行によるもので、今後もこのペースの維持が必要だと思います。要は、インフレが2%で安定するまで国債を大量に発行し続けろという、数学ができれば誰でもわかる話です。