時事
下記は二つともWSJの記事です。中国の一対一路が閉鎖的で、それに代わる日本の融資に伴うインフラ整備は大いに伸びているというのが二つの記事でわかります。
もとより一帯一路の目的の一つは、公共工事などのインフラでGDPを無理に引き上げてきた中国が、すでに国内需要がオーバーシュートしているために海外へ活路を求める政策ですから、外国企業が参加できるはずなどありません。ごく一部の参加外国企業は中国にない技術を持つ企業が限定的に参加しているだけで、それも技術吸収されれば梯子を外されるでしょう。また、インフラ整備後の運輸に関しても、中国の運送会社は補助金をたっぷりもらい低価格で提供するので、他国の運輸会社の提供する価格では勝てません。結局、庇を貸して母屋を取られるのです。
しかも、インフラ整備に関して中国はドル融資を提供できません。中国のドル準備高は張りぼてで、6割以上が短期の準備ですから、すでに中国の対外債務を大きく上回るリスクを抱えています。ところが円融資はどの国も喜んで受けます。ドル円は安定通貨ですから各国も躊躇する必要がなく、結果として円融資から円支払いの利く日本企業への発注が増えるのです。
中国「一帯一路」、外国企業は置き去りか
参加に招かれた外国企業はごく少数 EU商工会議所はプロジェクトの閉鎖性を指摘
Julie Wernau
2020 年 1 月 17 日 12:04 JST 更新
【北京】中国政府が外国との友好関係の構築と経済協力を掲げ、大陸横断のインフラ整備プログラム「一帯一路」に着手してから約7年がたったが、一部の外国企業はプロジェクトから除外されていると話す。
「一帯一路」は1兆ドル(約110兆1850億円)をかけた中国の外交政策の取り組みの1つ。だが参加に招かれた外国企業はごく少数にとどまり、多くの提携諸国と距離を保つ中国政府の姿勢によって経済協力というメッセージも損なわれている。在中国の欧州連合商工会議所(EUCC)は新たな調査でこう指摘した。この取り組みはインフラプロジェクトに重点を置いている。
「中国は資金や建物、機器のほか、労働力まで提供している。非常に閉ざされたシステムだ」と在中EUCCのイエルク・ブトケ会頭は述べた。
中国は「一帯一路」を主にインフラプロジェクトを通じてアジア、アフリカ、欧州、中東、中南米と経済的連携を深める手段の1つと位置づけている。そのため、米国が数十億ドルを投じて欧州復興を支援し、戦後の経済秩序の中心に立つきっかけとなった「マーシャル・プラン」になぞらえられている。
中国商務省によると、中国企業が「一帯一路」の一環として2019年1~11月に交わした契約は61カ国で6055件に上り、その総額は1276億7000万ドルと前年同期比で41.2%増加している。
しかし、「一帯一路」は資金に関する透明性の欠如や汚職の誘発、無駄な返済しきれない債務などが批判を呼んでいる。中国の習近平国家主席は、その一部に対応し、自らの看板政策を修正するとともに、透明性や財政的な持続可能性の向上を表明している。
補助金頼みのプロジェクトも
しかし、EUCCは16日に公表した報告書で、成功したように見える一部プロジェクトが、存続を中国の補助金に大きく依存していたことを明らかにした。そこで言及されたある物流会社は、補助金によって中国西部と欧州間の貨物輸送の市場価格がいかにゆがめられたかを詳しく語っていた。
EUCCによると、中国のEUCC加盟企業1700社のうち「一帯一路」のプロジェクトに参加したのはわずか20社だった。そうした企業が参加できた理由は、中国政府との既存の関係や中国企業が提供できない技術的な専門性を持っていたことだった。
参加企業のほとんどは中国国有企業との合弁事業を通じて参加しており、ほぼ全てのケースでプロジェクトに少数株式を保有していた。入札に参加した企業もあったが、受注したのはごく少数の企業だけだったという。報告書では、プロジェクト用のオフィスや電話番号さえなかった点も指摘されていた。
中国外務省の耿爽副報道局長は、EUCCの報告書には偏見があると一蹴し、「一帯一路」は開放性、包摂性、透明性の精神にのっとって開始されたと述べた。
耿氏は16日、「中国企業と外国企業は市場ルールと公平性の原則に従っている」と指摘。プロジェクトに参加している欧州企業としてドイツのシーメンスやドイツポスト傘下のDHL、フランスのシュナイダーエレクトリックを挙げた。
シーメンスは「一帯一路」について中国企業といち早く協力した欧米企業の1つで、2018年に同プランへの関与を監督するためのオフィスを開設した。
米企業も関心を示したが、直接関与している企業はほとんどない。その中で最も注目度が高いのはゼネラル・エレクトリック(GE)だ。同社はアフリカの発電プラントと電力供給網プロジェクトで中国国有企業と提携している。GEのラリー・カルプ会長兼最高経営責任者(CEO)は昨年7月、中国の国有資産監督管理委員会(国資委)のカク鵬主任と面会し、「一帯一路」について協議した。
EUCCによると、「一帯一路」に参加しているとされる企業の中には、単に遡及(そきゅう)的に参加企業のレッテルを貼られたにすぎないものがある。EUが資金を提供して欧州とアジア間に輸送、エネルギー、デジタル網を構築する取り組みの一環としてクロアチアで橋を建設する計画があり、中国の企業連合が2018年にこれを受注した際、中国の報道機関はすぐに「一帯一路」に関わる案件だと称賛した。
日本の「一帯一路」、中国の陰でアクセル全開
Mike Bird
2019 年 8 月 3 日 01:55 JST
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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東方のある経済大国が、アジア新興国への金融支援で存在感を増している。いや、あの国ではない。
国際決済銀行(BIS)が今週公表したデータによると、対外融資で「ある通貨」が突出した伸びを示した。日本円だ。2019年1-3月期(第1四半期)に日本国外の円建て借り入れ額は前年同期比12.5%増加し、伸びはドルやユーロを上回った。これにより、総残高は8年半ぶりに50兆円の大台を突破した。
とりわけ借り入れの伸びが顕著なのが、日本の近隣諸国だ。アジア・太平洋諸国への融資は3月までの1年間に32.8%急増し 、6兆5800億円に達した。これは断トツで過去最高の水準だ。融資の大半は民間向けだが、その多くが政府系の国際協力銀行(JBIC)による支援を受けている。
もちろん、円建て融資の総額は、圧倒的な存在感を示すドルに比べるとまだわずかにとどまる。国境を越えるドル建て融資は20倍以上の規模だ。
だが、アジアでは増加のペースが重要になってくる。アジア向けの対外融資については、日本か中国が主な貸し手だ。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」はより多くの注目を集めているものの、途上国に対する日本の融資は中国よりも広範囲にわたり、しかも一段と速いペースで伸びている。
BISのデータは、中国人民元のように、国際的に広く使われていない通貨については内訳を示していない。国際銀行間通信協会(SWIFT)によると、国際決済システムで人民元が使われる割合は2%にも満たない。だがBISの国別データによると、中国の銀行による海外融資は1-3月期に457億5000万ドル(約4兆9000億円)増加した。それに対し、日本の融資は2225億1000万ドル増えている。
日本が自国通貨建てで対外融資を行えること(中国がなかなか模倣できないでいる点だ)が、おそらく最も重要な要因だろう。これにより、日本の借り手は大規模なインフラ案件で、日本企業を請負先に選ぶ可能性が高くなる。中国の銀行が供給できるドルには限界があるが、日本の銀行が供給できる円が同じように制限されるわけではない。
借り手が円を受け取ることに満足している限り、そして融資が金銭的に実行可能な限り、アジア諸国向けの日本の融資に限界はない。
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