時事
下記はWSJのコラムです。下記の記事の内容は一部おかしいのですが、総論として正しく、安倍総理の功績は「世界から見て日本を普通の国にした」ということです。裏を返せば、今までが異常だったわけで、それを是正するのが精一杯でした。
社説】安倍晋三氏のレガシー
在任期間が歴代最長の首相は日本を普通の国に変えようとしてきた
日本の安倍晋三首相は28日、健康上の理由で辞任することを明らかにした。これは日本にとって損失だ。安倍氏は同国の改革の必要性を認識していたが、根強い反対を克服するのに苦労することが多かった。それでもその意図は正しかった。
2012年に2度目の首相の座に就いた安倍氏は、日本の首相として最長の在任記録を残して退任する。1度目の在任期間は2006~2007年で、今回と同じ潰瘍性大腸炎によって早期の退任を強いられた。8年間の在任期間を特徴付けたのは、日本をより普通の国に変えるための多方面にわたる施策だった。
こうした表現で安倍氏の政策課題が説明されることは少ないが、実際はその通りだ。内政面では、1990年代の経済バブル崩壊後の成長なき低迷状態から日本を救い出す試みとして「アベノミクス」に取り組んだ。目指したのは、世界第3位の規模の経済を正常に機能する市場に変えることだった。
安倍氏は小泉純一郎元首相のモデルに従い、停滞の受け入れを拒否した。小泉氏が引き継いだ銀行危機の重荷から解放された安倍氏は、財政支出拡大、金融緩和、政策改革という「3本の矢」に着手した。
悲しいかな、硬化した日本政治の逆風にあらがって飛んでいったのは、最初の2本だけだった。安倍氏はいくつかの重要な勝利を収めた。例えば企業統治の改革は、アクティビスト(物言う投資家)による投資を喚起したほか、複雑で経営効率の悪い複合企業に整理を促してきた。また、長らく日本でタブーとされてきた、より多くの移民の受け入れを容認する措置を講じた。
しかし、税や規制に関する改革は未完のまま残った。政策課題の実行は、政治的に抵抗できない状況に置かれた2回の消費税増税によって妨げられた。増税のたびに経済成長は後退した。安倍氏の経済面での主なレガシーは、自ら選んだ黒田東彦日銀総裁による異例の金融緩和政策だろう。
普通の国に変えることは外交政策のテーマにもなった。課題は、自国の歴史にもかかわらず軍事面でより大きな地域的責任を受け入れるよう、国民を説得することだった。ここでも安倍氏は主な目標を達成できなかった。憲法を改正して、平和主義への明確なコミットメントを示す部分を削除することはできなかった。
しかし安倍氏は、自衛隊の能力向上に資金を投入し、近隣諸国や米国・オーストラリアなど同盟国との連携強化のために政治的資源を割いた。保護貿易主義者を自認し、日本との貿易関係に長い間懐疑的だったトランプ大統領への早い段階での接触は賢明なもので、良好な関係構築につながった。安倍氏が国内改革をもたらすと当てにしていた環太平洋経済連携協定(TPP)から米国が離脱したことで、トランプ氏は安倍氏に報いる機会を失った。
戦争中の朝鮮人女性に対する虐待をめぐる韓国との紛争への対応など、外交上の失敗は幾つかあった。それでも中国が地域で拡大主義を続ける中、安倍氏の外交と軍事面のコミットメントは日本にとって大いに役立つものだ。
自由民主党は安倍氏の後継者を選出する。日本経済を再活性化し、世界で日本がより積極的な役割を担うよう自国と有権者に備えさせるために、すべき事は多い。安倍氏は後継者にその基盤を残している。
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