FA
プロ野球もシーズン終わりが見えオフシーズンの契約や移籍の話が出てきました。今年はコロナのおかげで各球団が赤字なのでFA市場は低迷するんじゃないかとの予測が出ていますが、果たして結果はどうなんでしょうか。
FAというのは日本語にすると「自由契約」という意味です。一般社会では転職してキャリアを重ねることが良しとされる時代になったにもかかわらず、相変わらず日本のプロ野球では9割の選手がFAせずに契約更新をします。たった1割しかFAしないので注目も集まり、人情沙汰のようにファンと球団、選手の愛憎が繰り広げられるのはシステムに問題があるからです。
タンパリング違反を犯している日本のプロ野球界に対しメジャーから要望書が届いたと昨年に報道がありました。タンパリングとは、契約可能期間前に選手に接触する、第三者を通じて打診するなどを意味します。選手や球団の権利だけではなく、ファンに支えられているプロスポーツが「公平」を保つためのルールで、メジャーとNBAはタンパリング違反の罰金が1000万ドル、NFLは翌年のドラフト指名権はく奪と罰金という具合に、かなり厳しい縛りを設けることでファンへ忠誠を尽くしています。
たとえば、ボクの贔屓の西武ライオンズの場合。石毛や工藤などから始まり主力の流出が茶飯事のチームにも拘らず、10年ぶりの優勝に貢献した浅村と引き抜いた楽天は西武ファンから恨まれています。理由は一つ、タンパリングです。2018年オフ、東北楽天ゴールデンイーグルスに移籍した浅村。この年、西武のキャプテンとして10年ぶりのリーグ優勝に貢献した浅村は、CSファイナルステージ敗退から15日後、FA権の行使を表明しました。最終的に楽天への入団が発表されるまでに囁かれた噂は、西武ファンにも各種メディアを通じて届きました。「楽天 浅村獲得成功の裏に『情報戦の完勝』」などというように、西武時代にチームメイトだった石井一久がGMを務める楽天は、浅村の交際相手である女性フリーアナウンサーを自社制作の動画メディアでインタビュアーとして起用するなど“外堀”を埋めていき、浅村自身も楽天を上回る条件を提示したと報じられるソフトバンクを移籍先に選ばなかったばかりか、獲得に手を挙げたオリックスには交渉のテーブルにつくことさえ断っています。こうした一連の動きを報道で知った西武ファンは、浅村と楽天が初めから「話ができていたのでは」と勘ぐり、10年ぶり優勝の「功労者」は「裏切り者」に変わってしまいました。移籍直後に上記の女性と結婚したという事実があってもアメリカではタンパリングに抵触します。
これはシステム不全が招いた悲劇です。NFLのように全選手が一定期間の契約値を経て自動的にFAとなるようにする。タンパリング違反は翌年ドラフト権をはく奪するなどのシステム変更が必要で、それを怠っている日本のプロ野球は、結局「ファンに忠誠を尽くしていない」のです。制度は「使う」中で改善が進むものです。使うためには「使いやすい制度」にする必要があり、今のFA制度は、如何にも「社団法人日本プロ野球機構」という『お役所仕事』に他なりません。
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