日経が3万円

日経平均がバブル以来の3万円台に乗りました。あれこれ言う前に、高橋教授のコラムをお読みください。



30年前の水準に戻った日本株、アベノミクスでバブルの後遺症を脱却 コロナ収束と景気回復反映か 

 高橋洋一 

 日経平均株価が約30年半ぶりに3万円を回復したが、なぜこの水準に戻るのに30年もかかったのか。経済的な背景はどうだろうか。  株価は、半年後の経済を映し出すといわれる。世界経済の落ち込みは、新型コロナ禍に伴う経済活動の抑制によるところが大きい。昨年末からワクチン接種が世界各国で行われた始めたのとともに、既存の薬も効果の高いものが判明しつつある。  感染症の一般論であるが、季節が暖かくなると流行らなくなる。となると新型コロナ禍は今年後半には、かなり波が静かになるだろう。そして景気回復が予想されることが今の株価に反映しているとみていいだろう。  たしかに今の株価については金融緩和が後押ししている側面があるものの、将来の先行きが悪いのであれば、そもそも株価が上がるはずないだろう。  ここ30年間の日本の株価を米国と比較してみると、1990年代は日本が下がり続けたが、米国は堅調に上昇した。この時期の日本の金融政策は猛烈に引き締めを継続したので、当然ながら株価は上がらなかった。  2000年代になると、日本でもデフレが意識され始め、金融政策は若干緩和基調だったが、インフレ目標が導入されていなかったので、金融政策は不徹底だった。その結果、日本の株価は徐々に上がりだしたが、08年のリーマン・ショックで日米ともに沈んだ。  10年代は、日米ともに上昇し、特に、インフレ目標が導入されたアベノミクスの13年以降、日本のほうが値上がりスピードが若干速くなった。

こうしてみると、金融政策がインフレ目標で運営されていると為替が大きく変動しづらくなり、日本の株価は米国とほぼ連動してくる。  アベノミクスは、マクロ経済からみれば、金融政策についてはインフレ目標を中央銀行に課し、財政政策と金融政策を協調させ、GDPギャップ(完全雇用を達成する潜在GDP水準と現実のGDP水準の差)を少なくするように運営するものだ。これは、失業率を最小化させる効果を持ち、そうした意味では世界標準である。  これが、良好なマクロ経済環境を招き、実体経済を回復させ、13年以降、株価は日本で2・5倍程度になっている。なお、同期間の米国の株価は2・2倍程度だった。  以上をまとめると、30年間のはじめの10年間、次の10年間、最後の10年間で、だんだんとマクロ経済政策、特に金融政策が世界標準に近づいてきたので、株価も先進国並みになってきた。こうした意味において、日本でのバブルの後遺症は、13年以降のアベノミクスでやっと脱却できたともいえる。その象徴が30年半ぶりの3万円台だ。  米国の株価は、00年ごろのITバブルの崩壊、08年のリーマン・ショックなどで一時落ち込むことはあっても、その後は回復して、結果として右肩上がりになっている。おそらくきちんとしたマクロ経済政策をとれば、長期にわたる落ち込みはなく、それは日本でも同じであろう。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)