時事
1994年に自社さ政権が通した税制改革関連法には、「消費税については、社会保障に要する財源確保、行政改革の推進状況、租税特別措置や消費税の適正化の状況、財政状況などを総合的に判断し、必要があれば所要の措置を講ずる」という見直し条項というトラップが含まれていました。財務省がよくやる手のダマしなんですが、ボケーっとした社会党やさきがけにはわかるはずもなく、更に、見直し条項の日限は1996年9月までと明記されていましたが、その日限までに検討された形跡もなく、わかりやすく言えば、この自社さ政権時に大蔵省の増税工作は完了してたという事です。この消費税増税を既定路線にするために、1994年から1996年にかけ総額5兆5千億円の所得税減税が実行され、減税の財源は消費税と大義名分を掲げていました。マスコミは「直間比率の是正?」と思い反対するのでもなく、法案が国会を通過した1996年の通常国会は、俗に言う「住専国会」となり、不良債権に国費を投入するか否かばかりの不毛な論争が続き、ドサクサ紛れに消費税増税が決まったのです。
こういう経緯を受けて消費税は3%から5%へ増税されましたが、この増税が景気に大きなダメージを与えます。それまでもバブル崩壊で傷んでいた日本経済に消費の足を引っ張る増税。ちょうど今の消費税増税と同じで、財務省は国民の懐など全く考慮しませんから、1997年度のGDP成長率は、前年度の+2.7%からプラマイゼロへ。更に翌年の1998年度のGDP成長率はマイナス0.8%へ転落します。マイナス0.8%と言う数字は、オイルショックの時がマイナス0.5%でしたから史上最悪の下落幅となりました。当たり前の話ですが、こういうバカげたことを屁理屈捏ねて行った橋本政権は吹っ飛びましたが、そんなことは財務省の知ったことじゃありません。「先生、ご苦労様でした。大義を果たされました」と寝ぼけたことを橋本元総理にいったに決まっています。大蔵―財務省は増税の為なら政権の一つや二つ飛ばして当たり前と言う考えが伝統的にあるのですから、担がれる政治家がバカなんです。この年の参議院議員選挙前には、アメリカから再三再四、日本の増税、緊縮財政への懸念が表明されていました。当時のクリントン政権のルービン財務長官は宮沢総理に対して、減税を含めた大型の景気刺激が必要と迫りましたが、日本側はカビの生えた大蔵経済理論しか知識のない宮沢、橋本氏ですから、内政干渉だと反発したとされており、マスコミや識者も、「言うべきことを言う日本の政治家が誕生した」と意味不明な論調を書きたてました。アホです。もうホンマに救いようのないアホばかりで、この時、アメリカの忠告を聞き入れ消費税を取りやめるか大型減税をしていれば、日本はデフレに突入しなくて済みましたし、至極真っ当な忠告を無視した日本に対し、世界はこれを契機に「ジャパン・パッシング(日本無視)」していくようになります。
今回も同じです。安倍総理の積極外交が実を結び、世界での地位が上がった日本ですが、先日の日本初開催となったG20財務大臣・中央銀行総裁会議の6月8日の討議で、麻生太郎財務相は10月1日に消費税率を10%へと引き上げる方針を説明しました。福岡で開かれた本会議では、世界経済の先行きについて「様々な下方リスクを抱えながらも年後半から来年にかけ、堅調さを回復する」との認識を共有した日本では報道されましたが、海外の経済首脳たちは、日本の消費増税をどのように評価しているのか。一般的にいえば、国際会議の場において、会期中に議長国を批判することはまずありません。したがって、表向きでは日本政府の消費増税路線について異を唱える国は存在しないのです。そもそも国家にとっての税(に関する取り決め)は、各国が持つ主権そのものであり、他国が四の五の言うことはまずありません。では、世界のエコノミストたちはどのように考えているかといえば、2016年、官邸で世界経済について有識者と意見交換する「国際金融経済分析会合」がありました。それに出席したノーベル経済学賞の受賞者であるジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は、「世界経済は難局にあり、'16年はより弱くなるだろう」との見解を示し、そのうえで、「現在のタイミングでは消費税を引き上げる時期ではない」と述べ、'17年4月の消費税率10%への引き上げを見送るよう提言しました。この意見を'19年の現状に照らし合わせると、'20年の世界経済は米中貿易戦争の影響が予想され、'16年より深刻な状況にあるとみてよいのですから、今スティグリッツ教授に意見を求めても、同じ答え以上に、増税ではなく減税を提案するはずです。
'17年に来日した、同じくノーベル賞受賞者クリストファー・シムズ米プリンストン大教授も、「消費増税は財政再建のために必要であっても、2%の物価目標達成後に実施するのが望ましい」と主張しました。ちなみにポール・クルーグマン米ニューヨーク市立大学教授も、今年に入り消費増税は見送るべきだと発言しています。これら経済学の権威の回答が、消費増税に対する海外の本音と見るべきです。
このところグローバル経済は軟調で、次の消費増税のタイミングと、経済の下り坂に入る瞬間が重なったらどうなるかなんて、いつも失敗ばかりする財務省は考えていません。前回消費増税時に起きた景気失速が繰り返されるかもしれませんし、そのリスクがあるのに行うというのは、ただのバカ、東大の文系で理屈ばかり覚え論理的でない只のバカです。
今後の世界経済の減速は、IMF(国際通貨基金)も警告し、中国などは減税措置の経済対策を打ち出そうとしています。その時に消費増税とは、各国の経済首脳も耳を疑ったに違いありません。ところが財務省は、開催国には批判が及ばないことを見越して、財務大臣に消費増税を言わせました。これで世界各国の「お墨付き」を受けたとする儀式のつもりでしょう。
会議で発した「年後半から来年にかけ、堅調さを回復する」という言葉は、あまりにも希望的観測すぎます。経済政策は最悪の場合を常に想定するのがセオリーですが、政府は大きな勘違いをしています。先のクルーグマン教授も、世界経済の見通しはかなり不透明で、その要因の一つが米中貿易戦争であると指摘していて、アメリカではトランプ大統領が関税率を設定する完全な自由裁量を持ち、その先行き不安がリーマン・ショック級の事態を引き起こす可能性を控えています。財務省の希望的観測を信じていたら、日本経済は再び深刻なダメージを受けるでしょうし、世界の識者からは「相変わらず日本はバカばっかり」と思われています。昔、よく言ったでしょ、「日本は経済一流、政治二流」って。アレは政治家がバカなだけではなく官僚が救いようのないバカなんです。
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