時事

年金のマクロ経済スライドをめぐり、共産党や社民党は廃止や中止を参院選の公約で掲げていますが意味が分かってるんでしょか。

ここで何度も書いていますが、年金は保険であるということです。極端に単純化すれば、平均的な人で20歳から70歳まで保険料を払って、70歳から90歳まで年金を受け取るようなものでしかないのです。そしてそれは、世界の基準で比べても上位に位置します。

年金給付水準の所得代替率(年金額と現役時代の給与との比率)を50%とすれば、平均的な70歳から90歳までの20年間で受け取る年金は所得の10倍になります。簡単な数学ですが、20歳から70歳までの50年間の保険料率は20%になり、70歳で死ねば年金が受けられませんが、90歳まで生きれば所得の10倍、100歳まで長生きすれば所得の15倍の年金を受け取れる仕組みです。

要するに、年金は早く死ぬ人から長生きの人への資金移転という極めてシンプルな仕組みで、支払う保険料と年金給付水準(所得代替率)には密接な関係があります。

2004年の改正以前は、大ざっぱにいえば年金給付水準を先に決め、それに応じた保険料率を示していました。この仕組みでは、現在の賦課方式のもと、少子化と平均寿命の伸びがあるので、基本的には保険料率の引き上げという形で調整が行われてきました。

04年改正は、保険料率の上限とそれに至るまでの毎年の保険料率を先に決め、それに応じた年金給付水準を示すこととなり、この仕組みでは、少子化と平均寿命の伸びは年金給付水準の減少で調整されます。この調整方式を、『マクロ経済スライド』といいます。

少子化と平均寿命の伸びという人口要因は、02年人口推計の予測通りなので、これまでほとんど問題ないといっていいでしょう。人口推移の予想は戦争でも起こらない限り外れません。

しかし、マクロ経済スライドでは、名目値の年金給付水準を下げないようになっています。このため、デフレ時には本来名目値の年金給付水準を下げないと年金財政に支障が出ることになり、04年以降デフレだったのでその調整はうまくいかず、やや過大な年金給付になっていました。

マクロ経済スライドが年金を減らす仕組みというのは、一面の真理ですが、少子化が進み、平均寿命が伸びている限り、年金給付を減らさなければ、基本的には保険料率の引き上げを選択せざるを得ません。

マクロ経済スライドの廃止や中止を主張することは、事実上、04年以前へ戻ることだといえ、換言すれば、基本的には「保険料率の引き上げ」です。

年金を保険として運営するのは世界共通。年金数理のような厳格な方法でないと運営が破綻するからですが、年金数理は今の国会議員でわかる人は100人に一人でしょう。

一部野党の公約は、年金のマクロ経済スライドをやめれば、年金を増額させられるという誤ったイメージをまき散らすだけ、というか、ほとんど騙しです。

無から有を生じさせるような手品はありません。年金はミニマムの保険であり、自動車保険でいうと、強制の自賠責のようなものですから、それで足りないと思う人は自分で任意保険に入ってくださいと言うだけです。何でも国が面倒見てくれるなどと思いたい人は、共産主義、社会主義国へ移民すればいいのです。ただし、そういう左巻きの国は国民をポイ捨てしますが(笑)。