時事
今日の話は非常にためになり、且つ、わかりやすく書いていますので丸暗記してください(笑)。
8月29日に長期金利を見る上での代表指標である10年物国債金利が一時▲0.290%と、2016年7月下旬以来、約3年1ヵ月ぶりの低水準となりました。マイナスですよマイナス。
超低利が長く続くなかで、期間が長くなるほど金利が低くなる「逆イールド」が期間7年物まで続いています。しかも、マイナス金利は15年までというかつてない状況です。
金利は期間ごとにあり、残存期間が異なる債券の利回りの変化の状況をイールドカーブ(期間別の金利)といいます。ちょっと推移を見てみましょう。
例えば、8月30日の国債利回りは、1年▲0.268%、2年▲0.307%、3年▲0.326%、4年▲0.353%、5年▲0.362%、6年▲0.378%、7年▲0.385%、8年▲0.383%、9年▲0.333%、10年▲0.275%、15年▲0.095、20年0.05となっています。
1年前の利回りは、1年▲0.115%、2年▲0.119%、3年▲0.1%、4年▲0.085%、5年▲0.073%、6年▲0.036%、7年▲0.007%、8年0.029%、9年0.069%、10年0.11%、15年0.37、20年0.62です。
1年前は、期間が長くなるほど金利が高くなる「順イールド」でした。マイナス金利も7年まで。今は、期間が長くなるほど金利が低くなる「逆イールド」が7年まで続いています。しかもマイナス金利は15年まで。この1年間で、イールドカーブはずいぶん様変わりしました。
さらに長い期間で比べたイールドカーブの違いも見てみると、下の図は、直近の5年間で、8月末のイールドカーブの推移を示したものです。
これを見るだけでも今年だけが「逆イールド」になっており、またマイナス金利の幅も際立っているのがわかります。
次の図は、2015年以前で、5年ごとの各期間の金利を平均したもののイールドカーブです。1990年代前半、1990年代後半、2000年代前半、2000年代後半、2010年代前半を比べました。
またこの期間のイールドカーブについて、10年金利から1年金利を差し引いたスプレッドは以下の通りになってます。今は、「スプレッドがない状態」です。
アメリカでは、2年と10年の金利が逆転すると、景気の先行きが怪しい兆候といわれています。今の日本で見ると、形式的には、2年と10年とで金利逆転はありませんが、2年と7年とではかなりの金利逆転になっている状況です。
一般論として、長期金利は将来の短期金利の積み合わせになっています。 例えば、2年金利は1年金利と1年後の1年金利、数式でかけば、1+2年金利=(1+1年金利)×(1+1年後の1年金利)となります。
3年金利は2年金利と2年後の1年金利、1+3年金利=(1+2年金利)×(1+2年後の1年金利)。
そして、10年金利は、今の1年金利、1年後の1年金利、2年後の1年金利、…9年後の1年金利によって決まるのです。
10年金利が今の1年金利より低いというのは、これからの1年金利が今より低くなることを意味します。「逆イールド」は、将来の短期金利が現在より低いと予想されると起こるのです。
金利が低いというのは経済活動が盛んでないことを意味するので、不況の前触れという連想に繋がります。
7年金利まで「逆イールド」になっている現在の日本経済に当てはめると、今後7年間は景気の先行きが明るくない、ハッキリ言えば「景気悪い!」となります。巷では、消費税の悪影響、オリンピック後の反動、米中のしわ寄せなどと、あやふやで数字で説明できないことを「感覚」で語る似非識者が沢山いますが、そういうバカは数字で説明ができません。金利を見るだけで明日が暗いのは証明できるのです。
少なくとも1年前は、金利の状況からはそこまでの先行きの不安はありませんでした。それに比べると、今は先行きの不透明感がかなり増しています。
その原因は、(1)米中貿易戦争の激化、(2)10月末のハード・ブレグジット(英国の合意なきEU離脱)、(3)アメリカとイランの対立によるホルムズ海峡での不安、(4)日韓関係の泥沼化、(5)日本での10月からの消費増税です。
金融機関にとって、マイナス金利や長短金利の逆転は利ざやが取れず、経営に悪影響があります。特に、今の地銀の体力では半数以上が無理でしょう。
金融機関は、預金で集めたカネを貸し出しや有価証券で運用して利ざやを稼ぐのが基本で、 一般的に運用の金利は同じ期間の預金金利に信用スプレッドを加えたものです。また預金の期間は運用の期間より短く、金融機関は、通常は短期で金利の低い預金を集めて、金利の高い長期で運用します。
つまり金融機関の利ざやは、信用スプレッドと長短スプレッドから構成されているということです。これすら一般の銀行員は理解していませんし、知らないものの方がはるかに多いのが現状ですから、自分のところの銀行が危ない事も「空気」でしか察知できないのです。
これまで日本の金融機関は、信用スプレッドよりも長短スプレッドにより依存して利ざやを稼いできました。信用リスク管理をさほど厳格にしないで済んだのは、「逆イールド」の期間はそれほど多くなかったからで、旧大蔵省の護送船団方式というのは、これをさします。
しかし、今は長短スプレッドがマイナスで利ざやが取れません。
「順イールド」の場合でも、運用金利がマイナスになると金融機関は利ざやが取れなくなります。預金のマイナス金利は、預金者が損をすることになり、社会的な反発もあるので、まずあり得ないからです。誰も預けた金が減る銀行へ預金しません(笑)。
マイナス金利に「逆イールド」が加わっている現在、金融機関にとっては最悪の収益環境といえます。
しかし一方で、企業や家計、政府による実体経済では、金利負担なしで長期資金が借りられるので、投資の絶好のチャンスです。実際、実体経済でも不動産投資や住宅投資はかなり良好です。
政府は、またとないこの機会にインフラ整備をどんどん行ったほうがいいのです。金利コストゼロなので、国債で賄う全てのインフラ投資について、費用対効果を算定すれば、投資が正当化できることを意味するからです。
東日本大震災以降、日本列島で地震が活発化しているという意見も多く、そのリスクに備え、震災被害を事前に最小化するために、将来投資が必要なのは子供でも分かる話です。日本の国債が暴落すると脅す識者は、「じゃあ、何年後に暴落するの?」って聞いても答えられず、10年20年は大丈夫でも50年後はわからないなどと意味不明な返事をしますが、南海トラフや関東大震災は、今後20年以内に70%の確率で起きるとされていますから、今から投資し続けなければなりません。
こうした投資の場合は、物的資産が残るので資金の調達は建設国債になります。政府のBSの資産の部に物的資産が計上され、負の部分に国債発行額が計上され、イコールから目減りはしますがBSは悪くならないのです。建設国債は赤字国債とは違って、一定の資産が残るので必要であればどんどん発行すればいいのは世界の常識です。
今の国債市場は、マイナス金利なので金利負担は考えずに済み、よほどひどい公共事業でなければ採算性があります。将来投資をするには良好な環境です。
南海トラフ地震や首都直下地震はいずれは確実にやってくるので、今の時期に防災対策投資を行い、またインフラ整備に限定せず、教育・研究開発や国防などでも、政府は国債をもっと多く発行し、将来投資の観点から積極的に行うべきなのです。それが20年後、30年後に大きなリターンを生み出します。皆さんが子供を育て、大学へやり、高い所得を得られるようにするのと同じです。
また、国債発行による投資は、一方で有効需要を増加させるので、先行き不安の要因になっている米中貿易戦争の激化や10月からの消費増税などで景気が悪化したときや、不安が強まったときの対応にもなります。
こうした投資の絶好のチャンスに、債務が大きくなるのを懸念し財政健全化をいい、国債発行を減額するのはまったくばかげています。目の前に儲けが転がっているのに動かない財務省は本当のバカです。
国債金利がマイナスというのは、国債市場の需給関係から見れば、国債供給が少な過ぎて品不足になっているという市場のサインでもあります。国債などの債権は物と同じように需要と供給で成り立っているからです。
それに応えるためにも、政府は国債をガンガン発行すべきで、マイナス金利のもとでの国債発行による政府の投資を増やすことで、金利が上がりマイナス金利が解消すれば、金融機関の経営を助けることにつながるというのが金融庁はわからないのでしょうか!?
今の時点での国債発行による政府支出は、大震災のリスクその他の政府として必要な将来投資、先行き経済不安への対応のための有効需要創出、金利正常化での金融機関の経営支援という「一石三鳥」の政策で、理論上も正しく世界が羨むこと間違いない政策です。中長期ゾーンでは金利がゼロになるまで無制限に発行するのが望ましい!以上です。
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