時事

9月8日に書いたブログを深掘りします。

秋の臨時国会に臨むに当たり、10月からの10%への消費増税が控える中、国際経済は不安定要因ばかりですから、当然景気対策のための補正予算が作られるでしょう。ザっと問題を上げると、(1)米中貿易戦争、(2)イギリスのEU離脱、(3)日韓関係の悪化、(4)ホルムズ海峡の緊張など、どれもが一発で株価暴落の案件が目白押しです。

こうした国際経済環境の悪化は、ずっと前から読めていたので、「増税分を使って景気対策する」くらいなら消費増税自体をやめるべきでしたが、論理的にならないのが民主主義政治です。安倍総理は、盟友である麻生氏の顔にこれ以上泥を塗らないために、消費増税を政治的判断で決めたということでしょう。

消費増税への経済対策として理論的に最も優れているのは、「10%への消費増税と同時に全品目を8%軽減税率の対象とすること」だと、この1年余り書き続けています。これなら、消費増税をしたい増税勢力、軽減税率を導入したい公明党、景気の悪化を避けたい一般人のいずれも満足させることができます。もっとも、これは冗談としか受け取られないので、実現可能性は殆どありません。ただし、消費増税対策としての経済政策を考える際には、このような考え方がベースになるはずです。

まず、景気対策として先立つものは財源です。消費増税分から吐き出すことも可能ですが、教育無償化などへの影響を避けつつ景気悪化を避けるためには、別の何らかの財源をねん出する必要があります。一番簡単なのが国債費の減額で、2、3兆円の財源なら簡単にひねり出せます。国債費は、財務省(理財局)が財務省(主計局)に対して概算要求を行います。来年度の国債費要求額24兆9746億円は、本年度予算額23兆5082億円より1兆4664億円多く、その内訳は、債務償還費16兆1112億円、利子及割引料8兆8259億円、国債事務取扱費375億円です。まず債務償還費は、減債基金への予算繰入というもので、減債基金とは、国債を漸次償還し、その残高を減らすために積み立てる基金とされています。そのため、国債残高の1・6%をこの予算に繰り入れると法律で決められてます。

ただし、民間会社の社債発行で、減債基金という話は聞いたことがありません。減債基金の積立のために、さらに借金をするのはおかしいというのは、誰でもわかる話でバカげています。民間の社債では、借り換えをして余裕が出たときに償還するというのが一般的で、これは海外の国債でも同じです。海外の先進国では、20世紀は国債の減債基金が存在していた国もありましたが、今ではなくなってます。ですから、債務償還費はナシでもまったく困りませんが、時代錯誤の法律があり、その改正が必要なので、おそらく減額・廃止されることはないでしょう。

次に、利子及割引料。日本の債務残高は1000兆円といわれますが、利子及割引料はその0・8%に相当します。そもそも国債金利はそんなに高かったのかと考えれば、おかしなカラクリに気が付きます。過去に発行した国債の利払いも必要なので、過去10年間の10年国債金利を調べると、平均で0・5%。このことから考えると、せいぜい利子及割引料は5兆円程度あれば十分はずです。それなのに、なぜ9兆円弱も予算を積んでいるのかというと、例年秋の臨時国会で補正予算が作られるときのための財源を、本予算に盛り込んでいるのです。こうすることで、当初の国債発行額も実態より水ぶくれとなり、財政危機を煽る財務省にとっては一石二鳥なんでしょう。査定すべき財務省(主計局)は要求する財務省(理財局)に対し、概算要求を水増しするように言いますが、同じ財務省内ならではの馴れ合い構造です。せいぜい5兆円くらいしか利子及割引料は使われないので、3兆円程度減額しても問題ありません。それが補正予算での財源になります。

さらに今年は、これらとはまったく違う財源があるのです。それは、先日も書いた通りの異様なマイナス金利環境です。国債金利は期間ごとにあり、その変化をイールドカーブ(期間別の金利)といいますが、推移を見ると、8月末時点で、1年▲0.268%、2年▲0.307%、3年▲0.326%、4年▲0.353%、5年▲0.362%、6年▲0.378%、7年▲0.385%、8年▲0.383%。 9年▲0.333%、10年▲0.275%、15年▲0.095、20年0.05。

8月末時点のイールドカーブを過去5年間とると、下図のようになります。


2015年以前、5年ごとで各期間の金利を平均したものを掲げてます。1990年代前半、1990年代後半、2000年代前半、2000年代後半、2010年代前半のイールドカーブです。


これを見れば、現在のマイナス金利が非常に珍しい状態であることがわかります。これは投資の絶好のチャンスになるのです。

なお、先進国G7と直近時点で比較してみると以下の図の通りです。


明日に続く。