時事
昨日に続いて。
今は先進国でも日本とEUはマイナス金利が常態化しています。日本とEUはマイナス金利であるとともに、長期金利のほうが短期金利より低いという「逆イールド」になっています。
金融の一般論として、長期金利は将来の短期金利の積み合わせになっています。逆イールドは将来の短期金利が現在より低いと予想されるために起こる現象です。低金利は経済活動が盛んでない、低調だということを意味するので、不況の前触れという連想になるものです。国際経済情勢の先行き不安は、逆イールドになる要因の一つとなっています。長期金利のマイナスそれ自体は、金融機関の経営にとっては、利ざやが取れず悪影響を及ぼします。
金融機関は、預金で集めたカネを貸出や有価証券で運用して利ざやを稼ぐのが基本ですが、運用の金利は同じ期間の預金金利に信用スプレッドを加えたもで、預金の期間は運用の期間より短くなりますから、金融機関の利ざやは、信用スプレッドと長短スプレッドから構成されているのです。
これまで、日本の金融機関は、信用スプレッドよりも長短スプレッドに依存して利ざやを稼いできました。理由は単純に簡単だったからです。信用リスク管理をさほど厳格にしないですんだのは、逆イールドの期間がそれほど多くなかったからです。
その場合、運用金利がマイナスになると、順イールドでも金融機関は利ざやがとれません。というのは、預金のマイナス金利は、預金者が損をするということになるので、預けた金が減るような銀行はつぶれますから、有り得ないのです。
マイナス金利に逆イールドが加わっている現在の状況は、金融機関にとっては最悪の経営環境ともいえるでしょう。しかし、実態経済にとっては、金利負担なしで長期資金が借りられるので、設備投資の絶好のチャンスになります。借りられるだけ借りても金利が付かないのですから、誰がやっても失敗しません。
また政府は、この機会にインフラ整備をどんどん行いましょう。今回の台風で千葉県で広域停電が起きていますが、今後も地震の備えが必要ですから電柱電線の地下埋設など、インフラ整備をどんどんやればいいのです。長期金利がマイナスということは、金利コストがゼロなのですから、費用対効果さえ算定すれば、ほぼすべてのインフラ投資が正当化できることを意味します。
さらに、インフラ整備に限定せず教育、研究開発や国防などについても、政府は国債をもっと多く発行し、将来投資の観点から積極的に行うべきです。
これらは通常時でも考え得る普通の政策ですが、マイナス金利環境をさらに生かそうと思えば、次のような仰天施策もあります。
「金利がゼロになるまで無制限に国債を発行し、何も事業をしない」というだけでもいいのです。例えば、10年国債金利は▲0・3%程度です。これは、100兆円発行すると、年間金利負担なしで、しかも103兆円の収入があることを意味します。マイナス金利というのは、毎年金利を払うのではなく「もらえる」わけで、0.3%の10年分の3兆円を発行者の国は「もらえる」のです。ここで、「100兆円を国庫に入れて使わず、3兆円だけ使う」とすればいいわけです。もちろん、国債を発行すれば若干金利も高くなり、このような「錬金術」が永遠に続けられるわけではありませんが、少なくとも金利がゼロになるまで、国としてコストゼロ、リスクゼロで財源作りができますし、モラルにも反してませんから海外からは羨望の目で見られるでしょう。
この施策をお勧めするのは、これまで財務省が国債を「悪いもの」として扱ってきたのと発想が真逆なことです。財務省がゼロ金利までの無制限国債発行を行うと、日銀が今やっている金融政策とも相乗効果が出てきます。日銀は、イールドカーブコントロールといい、長期金利がゼロになるように国債買入を行っていますが、最近の日銀の国債購入は、異次元緩和が始まった当初の年間80兆円ベースから、30兆円ベースまで落ち込んでいます。これは、市場の国債が品不足ですから民間金融機関へ大量に天下りしている日銀も要望を呑まざる得ないのでしょう。このため、金融緩和圧力は学者が言うほど高くありません。
ここで、財務省がゼロ金利まで国債無制限発行に乗り出せば、日銀の金融緩和効果はさらに高められます。しかも、得た財源で景気対策を行えば、まさに財政・金融一体政策となり、目先の消費増税ショックを回避できる可能性もあるでしょう。しかも、金利正常化で金融機関支援にもなるのです。
逆にいえば、こうした「美味しい」金利環境を財務省が見過ごし、金利ゼロまでの無制限国債発行を行わないとすれば、それは彼らが増税しか頭にない「無能官庁」であることの証明といえる。
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