時事

小泉進次郎氏が初入閣。安倍総理の思惑と環境相というポストの意味、大臣として直面する課題を考えます。

今回の内閣改造は安倍総理がやりたいようにやった「人事」と言えるでしょう。どこの組織でも人事には批判はつきもので、結果が悪ければ人事を行った人だけが責任をとるのが日本型システムです。

今回の内閣改造は、これまで安倍政権の中で安倍総理を支えてきた人たちを中心に組まれています。小泉氏の場合、必ずしもそうではないが、その起用は菅義偉官房長官の意向が大きかったのでしょう。これは、小泉氏の発信力を評価するとともに、改造内閣が「お友達内閣」とのステレオタイプの批判を避ける「弾よけ」にもなり得るという人事の妙です。

小泉氏が就任した環境相は、初入閣としては厚遇で、通常、初入閣は内閣府特命相ポストが多いのですが、特命では官僚の人事権が伴いません。内閣府官僚の人事権は官房長官が持っているのです。それに比べて環境相は環境省官僚の人事権を持っているので、その分政策をやりやすいはずですし、小泉氏が成長する上で人事経験は外せないので期待の大きさがうかがえます。

いずれにしても、今後の活躍次第では首相候補になる逸材で、これまで国会議員では実行をさほど考えずに発言できましたが、大臣になると結果を求められますし、今説明したように数千人の部下がいることも忘れてはなりません。

就任初日の記者会見で、福島第1原発の処理水の対応でつまずきました。小泉氏は、前任の原田義昭氏が「所管外の個人意見」として、「処理水を希釈して海洋に放出するしか方法がない」と述べたのに対し、国の方針ではないと事実上否定し、関係者に謝罪してしまう不手際をさらしました。その理由は「福島の漁師の皆さんに思いをはせなければいけない」というもので、全く科学的な根拠がなく情緒的でした。

小池百合子都知事の豊洲市場移転問題への対応の失敗と同じです。「安全より安心が重要」と移転問題を長引かせたのは記憶に新しいところです。「安全基準」と飲用にできる「環境基準」を混同し、合理的ではない安全基準以上の無理難題を求めました。「安心」という感覚的なものではなく、「安全」にもっと科学的な知見を使えば、時間の浪費は避けられたのです。

福島第1原発の処理水については、多核種除去設備(ALPS)でトリチウム以外を基準以下にすれば、トリチウムは希釈して海に放出するのは、世界のどこでも行われている方法で、安全に問題はないとされています。たしかに、国内で処理方針を政府として定めていないので、所管外のことですが、「政府として検討する」と答えればいいことです。就任当初から全ての問題に精通しているはずもないので、こうした「逃げ」も覚えていく必要があるでしょう。もし勉強して自信があるのなら、世界のどこでも行われているという事実を述べ、政府内の議論をリードしていくことも可能でした。日本の政治家が海外視察で何も見聞きしているのか知りませんが、国際比較する知識ぐらいは身につけるべきです。はっきりしたのは、小泉氏は今のところ勉強不足だということです。しかし、そんなものは専門書の二三十冊、論文の数千ページを読めばいいだけですから、今後どのように政治家として成長していくかを見守りたいと思います。