時事
アメリカの力強さの源泉を見るような記事です。いつも書いている通りNFLという組織の先進性、柔軟性、公平性など、日本のNPBなど足元にも及びませんが、その組織を支える球団にも多様性が有り、下記の記事のフィラデルフィアもその一例にすぎません。NFLのプロチームに比べると日本の球団は、何を優先順位にしているのかわからない球団しかなく、双方の格差は絶望的に広がってゆくでしょう。
今、クライマックス・シリーズを戦っているプロ野球ですら、敗戦しても会見を開いているのは横浜のレミレスだけというお粗末さで、どのチームもファン・ファーストと口では唱える者の実が伴っていません。NFLではヘッドコーチ、オフェンス、ディフェンスの主要選手の3人以上が、勝っても負けてもプレスカンファレンスに出席しなければ罰則が下るルールになっています。日本でもNPBが同じようなルールを決めれば、チームや選手の社会性も向上するでしょう。
女性幹部が強さに貢献、NFLイーグルスに学ぶ
働く人の多くが男性であるアメフト界でイーグルスは異色の存在だ
フィラデルフィア・イーグルスで働く5人の女性幹部
By Andrew Beaton
2019 年 9 月 27 日
【フィラデルフィア】米プロフットボールリーグ(NFL)のフィラデルフィア・イーグルスでシニア・バイスプレジデントを務めるキャサリン・カールソン氏は今春、初めて臨んだ幹部会議で驚くことがあった。
会議室を見渡すと、「他に4人の女性幹部がいた」からだ。
最高幹部をはじめ、働く人の多くが男性であるこの世界で、イーグルスのフロントは異色の存在だ。NFLはファンの半数近くが女性だが、セントラルフロリダ大学の最新報告書によると、職員に占める女性の比率は35%で、幹部職では29%にとどまる。
この比率はチームレベルではさらに低くなる。NFL各チームで女性が従業員に占める割合は昨年の時点で28%で、シニア・バイスプレジデント以上の役職では18%だった。またNFL全32チームのうち、女性バイスプレジデントが複数いるのは23チームだった。
しかしイーグルスでは、オーナーのジェフリー・ルーリー氏に助言する幹部の半数以上が女性だ。
ルーリー氏はあえて女性を採用したつもりはなく、「戦略的なものではなかった」と話す。ただ最高のチームをつくるため、ベストな人材を採用したいという思いはあった。ルーリー氏は性別の多様性を重視していたわけではなかったが、思考の多様性は求めていた。
「その結果、多くの女性が採用を勝ち取ったのではないか。非常に興味深い」とルーリー氏は語る。
イーグルスのオーナー、ジェフリー・ルーリー氏(左から3人目)は最高のチームをを作るためベストな人材を採用したかったと語る PHOTO: RACHEL WISNIEWSKI FOR THE WALL STREET JOURNAL
イーグルスはその他の点でも、他の多くのチーム以上に革新的な考え方を持っている。選手の評価や試合中の意思決定では率先して分析に基づく決定を重視してきた。2年前のシーズンではそれがスーパーボウル制覇にもつながった。NFLが政治論争に巻き込まれたとき、イーグルスは社会正義について自らの主張を積極的に訴える選手を支持し、協力を惜しまなかった。
最高幹部に多様性を持つことは、どの業界でも最善の経営手法であることが最近のさまざまな研究から分かってきた。マッキンゼーが2018年に1000社以上の財務データを調査したところ、多様な経営幹部を擁する企業は同業他社より利益率が高かった。
イーグルスに女性幹部が多い理由の一つは、閉鎖的なアメフトの世界では珍しい外部人材の起用を重視したことにある。幅広い経験を持つ人材を採用したければ、時代に逆行した採用慣行が続く業界内で探すのはばかげている。イーグルスはそのことに気付いた。
カールソン氏ほど長い道のりを経てNFLにたどり着いた幹部は他にいないだろう。オーストラリア出身の同氏はラグビーリーグの認定コーチで、同国の野球機構で働いた経験もある。しかし米国のスポーツへの興味を持ち続けていた。それがフロリダ州オーランドにあるウォルト・ディズニー・ワールドでの仕事につながり、その後、米プロバスケットボール協会(NBA)のオーランド・マジックに移った。
イーグルの別の女性幹部、ジェン・カバナー氏はスポーツ業界で働いた経験はなかった。NBCユニバーサルで幹部を務めた後、メディア企業に助言する事業を立ち上げようとしていた。そこで休暇に入ると、これまでとは全く違う仕事に関心はないかと誘いを受けた。「娯楽のDNAはあったが、アメフトについては学ばなければならなかった」
しかし、知らないことはそれほど多くないとカバナー氏はすぐに気付いた。アメフトも娯楽であり、用意されていたポストがメディアとマーケティングを担当するシニア・バイスプレジデントだったからだ。
イーグルスで法務責任者を務めるアイリーン・ダグローサ氏は「物の見方が異なる人々を採用する努力をしている」と話す。「われわれには『これまでずっとスポーツ業界で働いてきた』というような人は必要ない」
ダグローサ氏はイーグルスのゼネラル・マネージャーであるハウイー・ローズマン氏の下、サラリー・キャップ部門のインターンとして働いた後、ニューヨークの名門法律事務所プロスカウアー・ローズに移り、再びイーグルスに戻ってきた。ダグローサ氏の有能さを物語るエピソードがある。
2011年、NFLと選手は数カ月のロックアウトを経て、ようやく新たな労使協約で合意した。その一環として、新人選手の年俸が見直された。全ての契約を丸ごと書き直すためにチームは突然、サラリー・キャップの経験がある人材が必要になった。7月にはダグローサ氏が毎晩泊まり込みでイーグルスのドラフト指名選手11人全員の契約書を用意した。
自閉症研究のための資金集めを行うイーグルス・オーティズム・チャレンジの事務局長、ライアン・ハモンド氏の目には、イーグルス内部のこうした文化的な変化は明らかだった。ハモンド氏は2008年までイーグルスで働いていたが、この年、3人目の子どもが生まれ、セントジョセフ大学のキニー自閉症教育センターのトップに就くため退職した。「当時、(イーグルスに)私のような人間はいなかった」ことが理由の一つだった。
その後、オーナーのルーリー氏からイーグルスの基金のトップとして戻ってほしいと声をかけられたとき、ハモンド氏は組織の変化を見て取った。「10年で文化がこれほど変わることができるのは素晴らしいこと」
イーグルスの幹部によると、ある決定に内部の変化がもたらしたプラスの効果が良く表れている。2013年、幹部は新コーチを採用するために集まった。決定に関わった幹部は少人数で、全てが男性だった。
3年後、後任コーチ選びが再び始まった。今回は前回より多くの関係者が参加し、ルーリー氏の補佐役ティナ・ドラジオ氏など多くの女性も加わった。「これまでとは少し違った」とドラジオ氏は言う。
イーグルス社長のドン・スモレンスキー氏は「われわれは情報に基づいて決定を下したい」と話す。「情報が多ければ多いほど、さまざまなソースから情報が得られれば得られるほど、優れた決定ができる」
このとき選ばれたのがダグ・ペダーソン氏だ。2年後、イーグルスは初めてのスーパーボウルで優勝。この選考プロセスが正しかったことが証明された。
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