時事
下記はロイターの記事です。ロイターも日本以外はまともです(笑)。
日米首脳会談を経て、本日調印された日米貿易協定について、アメリカ側から見た視点で書かれており、概ねその通りですが、最後の段落が事実と違います。TPPという多国間協定を結ぶため、最後の最後までアメリカが渋ってきたのが知的財産権とデジタル貿易に関する条項で、日本はそれらの仲裁にあたってきました。TPPを纏めるために日本が用意したA案とB案には今回と同じ内容が盛り込まれていましたが、トランプ大統領になってアメリカがTPPから離脱したのを受けて、東南アジア諸国から反発が大きかった知的財産権とデジタル分野を緩和してTPP11がまとまったのです。もとより、日本としては後退と呼ぶものではなく、いずれアメリカもTPPへ加わるでしょうから、その時にアメリカの顔を立てる人参として残しておいたと言うのが結末です。それはトランプ大統領の理解しており、今回の日米首脳会談、日米貿易交渉は安倍総理とトランプ大統領の出来レースであり、歴史上、最もストレスフリーな日米交渉でしたが、左巻きの識者は、そういう機微が理解できていませんから、下段のニューズウィークの記事のようにトンチンカンな屁理屈を述べています。因みに、コラムの冷泉氏は京都の冷泉一族とは何の関係も無く「冷泉」というのはペンネームのようなもの(笑)と述べているような程度の悪い左巻きです。
アングル:対日貿易協定、TPPと比べた米国産業の得失
Reuters Staff
[ワシントン 7日 ロイター] - トランプ米大統領は、日米貿易協定が国内農家にとって「素晴らしい」勝利だと強調した。
しかし日本で、米国製バター「ランド・オ・レーク」がニュージーランド産やフランス産を押しのけて商店の棚に並ぶと期待してはいけない。バターは、日米協定で日本市場へのアクセスが改善されなかった米乳製品の1つだからだ。
通商専門家や業界団体の話では、米国の農産品の中には、環太平洋連携協定(TPP)で付与されていたよりも日本向け輸出の条件が悪くなったものが幾つかある。バターやミルクパウダー、一部穀物などは、米国がTPPにとどまっていれば、他の署名国の製品と同じ競争条件が得られただろう。
米国がTPPを離脱した時点で、ニュージーランドやオーストラリアのバターにとって輸出余地が拡大した形となり、日本政府は今回の協定でこうした製品の輸入枠を米国向けに新たに設定するのを拒んだ。
一方、米国の牛肉や豚肉、ワインなどはTPPに加盟しているオーストラリア、ニュージーランド、カナダと同じ関税撤廃スケジュールが適用される。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のアジア経済専門家マシュー・グッドマン氏は「日米協定で実際に恩恵を受ける一部の農業セクターは存在する。より全般的に言うと、商業的見地からは協定にはそれほど大きな意義はない。両国の最大の貿易品目である自動車と自動車部品を含んでいないからだ」と指摘した。
<協定対象外の分野>
日米貿易協定は、むしろ対象外となった分野が注目を集めている。両国の貿易関係の大きな部分を占める品目、特に日本からの自動車輸出と、米国からの航空機、液化プロパンガス、半導体製造装置が含まれていない。
日本から米国に輸出された自動車・自動車部品は昨年560億ドルで、全輸出品目の中で圧倒的な大きさだったが、通商合意は今後の話し合いに持ち越された。安倍晋三首相は、トランプ氏が協定発効中は日本の車と部品に安全保障上の懸念に基づく関税は課さないという点に同意したと明らかにしている。
日本も米国から輸入する自動車とトラックには関税をかけない。ただ米メーカーの主張では、大半の車は環境規制や安全基準や、日本の円安誘導によって日本市場から締め出されているという。
TPPでは日本の規制面の障壁が緩和されただろうが、TPPと日米協定のいずれも、為替操作に対処するためのルールは定められていない。
<TPPより悪条件>
米国のコメ農家は日米協定のメリットを享受できない。1990年代初めに日本が設定した米国からの輸入枠は維持されるからだ。
TPPの下では日本は米国のコメを年間で7万トン、関税なしで受け入れることになっていたが、今回の協定にこうした取り決めは入っていない。
カリフォルニア米生産業者団体の代表者ティム・ジョンソン氏は、今後の日米協議で条件が良くなると期待すると述べた。
米議会関係者によると、大麦の日本市場へのアクセスも向上しない。日本側はTPPで設けた枠を拡大しなかったという。
TPPでは16年間で関税が段階的に撤廃されてゼロになるはずだった米国産チーズの詳しい取り扱いはまだ分からない。
米国の乳製品業者で構成する国際乳製品協会(IDFA)のマイケル・ダイクス代表は、日米協定の成果は「恐らくTPPで得られる分の80%ぐらいだと思う」と話した。
日本の外務省が提示した文書に基づくと、米国の砂糖、チョコレートなどについて日本がTPPで用意した輸入枠も、別の国に振り向けられた。
<TPP並み>
米国産牛肉は、日米協定における主要な勝者の1つで、2033年までに関税率は38.5%から9%に下がる。TPP加盟国でライバルとなるオーストラリア、ニュージーランド、カナダと同じペースだ。
昨年日本に16億ドルが輸出された米国産豚肉も、現在はTPP加盟国や欧州連合(EU)に対して非常に不利な関税を課せられているものの、今後は平等な関税率の引き下げ(6年間で20%からゼロ)を受けられる。
これらの措置は、政治的に重要な米中西部の農家や畜産業者をある程度安心させる材料になるかもしれない。彼らは米中貿易戦争で打撃を受け、TPP加盟国やEUに日本市場まで奪われていたからだ。
業界関係者は、米国産エタノールも実質的にTPP加盟国並みに関税率が下がると話している。
米国穀物協会によると、日米協定で飼料用トウモロコシの関税はゼロのままで、食用など他の種類のトウモロコシにも3%の関税が撤廃された上で日本への輸入枠が認められた。このためほとんどの米国産穀物は、ほぼTPPと同じ条件に戻ったとしている。
米小麦生産者も、オーストラリアとカナダ並みに日本が関税を下げる、とトランプ政権から伝えられたと明かした。
米国産ワインは来年4月1日に、関税率が15%から7.1%に下がる。これも基本的にTPPで適用されていた条件だ。半面、他の酒類にこうした好待遇は与えられていない。TPPではバーボンとテネシーウイスキーに表示保護や関税率引き下げなどが認められていた。
<TPP上回る恩恵>
TPPよりも大きな恩恵を主にもたらしたのは、日米が貿易協定とともに合意したデジタル貿易協定だ、と議会関係者やハイテク業界の人々は口をそろえる。これは米通商代表部(USTR)が目指すデジタル産業や国境をまたぐデータのやり取りに関する国際的なルール作りと整合的な内容だ。
同協定では、デジタルダウンロードへの越境課税やデータのローカル保存義務化を禁止する規定がTPPよりも厳格に定められている。
クラウドコンピューティングやフィンテックの技術が、TPP交渉時より進展している点を踏まえ、TPPでは容認されたはずの一部の国の金融データのローカル保存基準が、禁止されている格好だ。
日米デジタル貿易協定は、新たな北米自由貿易協定(NAFTA)の意味合いを持つ米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)とも足並みがそろっている。
(David Lawder記者)
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冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
日米貿易協定を「ウィンウィン」と呼ぶ日本の敗北主義
2019年10月03日(木)
日米貿易協定を「ウィンウィン」と呼ぶ日本の敗北主義
日米間でとりあえず合意に達したことは評価できるが Jonathan Ernst-REUTERS
<「4兆ドル規模」の日本のデジタル市場は、関税ゼロでアメリカがごっそり持っていく>
日米の通商交渉については、茂木敏充現外相が延々と閣僚級協議を続け、なんとか先週の日米首脳会談で署名にこぎつけたわけです。トランプ政権の通商政策については、実は日本経済への影響という点では米中の交渉が妥結してくれないと困るのですが、それはともかく、日米の間でとりあえず合意に達したということは評価できると思います。
その内容ですが、多くの報道では「日本車にかかる関税が継続協議となった」こと、そして農産品に関して「TPP並みの開放となったこと」を取り上げて問題視する考え方が多いようです。ですが、よく考えるとこの2つに関しては日本側として、大きな問題ではないと考えられます。
まず、日本車については、例えばホンダの場合はほぼ100%が北米での現地生産になっていますし、トヨタの場合も以前は日本の田原工場や、トヨタ自動車九州でのみ作っていた「レクサス」ブランドのモデルも、「RX」(加オンタリオ州)や「ES」(米ケンタッキー州)といった主力車種が現地生産に移行しているからです。80年代や、90年代とは異なり、完成車輸出というのは極めて限定的であり、したがって仮にこの問題が継続協議となっても日本経済への影響は限定的なものです。
ただ、実際の有権者には80年代や90年代の感覚を残している人が多いのも事実で、政治的な効果としてはこの点での綱引きがあったのは事実でしょう。日本だけでなく、アメリカの、それこそトランプ政権の支持者の持っている時間感覚も、それこそ80年代の日米貿易摩擦の記憶を引きずっているわけで、どちらも過去の幻影を材料に交渉していたようなものとも言えます。
次に農産品に関しては、オバマ政権とのTPP合意交渉の際に、これは国内的にはいったん決断もしたし、対策も用意していたわけで、今回の決定もその範囲内なのですから、こちらも交渉での譲歩とは言えないと思います。むしろ、当初想定したアメリカが入る形でのTPPの発足よりは、日程が大きくズレたことで、日本としては農業の抜本改革のタイミングを逸してしまったということはあると思います。ですが、交渉による譲歩ではないと考えられます。
では、安倍総理の言うように、今回の結果は「日米ウィンウィン」なのかと言うと、実は2つ大きな懸念があります。
1つは自動車部品の問題が継続協議になったという点です。日本からアメリカへの完成車の輸出は、現地生産化の進展により仮に関税が残っても影響は限定的と言ってよいのですが、部品の場合はそう単純ではありません。ハイブリッドやEV関連の部品など高度化した電装部品、自動変速機など高付加価値の部品で、日本からアメリカへの輸出となっている部分はまだ日本経済の重要な柱となっています。
今回の交渉では、この自動車部品への厳しい課税を避けられたというのは評価できますが、今後に含みを残す形で継続協議となったのは残念ですし、引き続き要警戒と言わざるを得ません。
もう1つは、今回の協議についてトランプ大統領が語った「日本のデジタル市場を4兆ドル規模で解放させた」というセリフです。この問題ですが、とりあえず現在そうなっているように、米国サーバーから日本の消費者がアプリやソフト、コンテンツをダウンロードする際に「消費税はかけるが関税はかけない」と言う扱いを今後も保証したということです。
安倍首相としては「消費者へのメリット」という部分に入るのかもしれません。ですが、トランプ大統領の言う「4兆ドル(約430兆円)」という数字はあまりに巨大です。
アメリカとしては、今後も進むコンピューター・テクノロジーの進歩により、日本におけるソフトウェアの市場はどんどん拡大する、その規模が、もちろん単年度ではなく何年にもわたってのトータルで430兆円になるとして、それをごっそり持っていこう、しかも関税ゼロで儲けようというのです。
これは大きな問題です。現在でも、日本人による日本語を使ったコミュニケーションが、米国の企業が運営するSNSのサーバーを通っているわけですし、コンピューターもスマホもタブレットも、日本が開発したOSなど影も形もありません。ソフトウェアに関しては、かつて技術立国を自称し、情報立国を目指していた国の面影はどこにもないのです。
そのような「全敗」状態が今後も続く、その際に動くカネには関税はかけられない、そのトータルの市場規模は430兆円にもなる。そうであっても、関税ゼロなら消費者にメリットがあるのだから、それも「ウィンウィン」というのが全体のストーリー......であるのなら、これは恐ろしいまでの経済敗北主義ではないかと思うのです。
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