時事
先月の話になりますが、財務省は9月11日に政府が保有しているNTT株のうち、4866万6700株を売却しました。これにより、国庫には約2494億円の売却益が入ることになります。マスコミではなかなか取り上げらることも無い政府の「臨時収入」です。そもそも、政府がこうした株式を保有していること自体、財務行政に興味のない国民には知られてないかもしれません。
政府が株式を保有していることについては、かつてNTTが国営企業だったことに尽きます。同社が自社株買いを発表し、政府がそれに応えるわけです。もちろん、NTTの株価の状況で売却損益は決まるわけで、政府であったとしてもタイミングの巧拙は問われます。一般の投資家とは違い、国庫にも影響するわけで、むしろ大問題です。
これまでの政府保有のNTT株の売却の歴史をみると、大規模売却は、'86年10月、'87年11月、'88年10月、'98年12月、'99年11月、'00年11月と6回あります。NTT株と言えば、'87年2月の上場を覚えている人もいるでしょう。時代はバブルたけなわ、ボクも電電公社がとバカにしてました。初値で160万円という株価を付けたNTT株ですが、売り出し後は低迷し、結局配当金込みでプラス転換したのは30年後の'17年でした。
もっとも、政府がすべての売却において高値で売り抜けられたわけではありません。特に'02年以降は、NTTの自社株取得・消却に応じて売却するという形になっています。この間の17年で同社が行った自社株取得・消却は27回。このうち10回で政府は保有株を売却してきました。
自社株取得・消却とは、上場企業が自らの資金を使って、株式市場から自社の株式を買い戻すことを言います。上場企業は、発行済み株式数を減らし、1株当たりの利益や資産価値を向上させられる。投資家にとっては発行済み株式数が減ることで、1株当たりの配当金の増加が期待できます。
ではつまるところ、政府の株式売却の成果はいかほどなのか。先述の6回の大規模な売り出しは、いずれもNTT株価が高値を付けた時期に行われたもので、マネーゲームとしては政府の「勝ち」です。一般投資家は割高の株をつかみ、損をした人も多いでしょう。
そして、この6回の大規模売り出しと、'02年以降の11回行われた自社株取得・消却の際の売却のすべての売却金額合計は約15・8兆円でした。
詳しい計算はこの際省きますが、仮にこれまで政府が毎月同じ割合で株式を売却していたとすると、その売却金額は総額10・7兆円だったとされます。つまり、少しずつ売り続けるよりも5兆円高く政府はNTT株を売り抜けたことになります。
一時期、時価総額が世界一となったNTT株の熱狂で、高値づかみさせられた一般投資家の犠牲はありますが、ある意味、政府の「株屋」としての腕前は上々だということです。
国が取得している株式や権利を「政府出資」といいますが、その額は'18年3月末で76・4兆円もあり、民間に手放したり、組織ごと民営化できるものは、さっさと民営化して、財政収入を増やしたほうがいいに決まっています。
天下りができなくなるから官僚としては都合が悪いでしょうが、「株屋」として腕を振るって欲しいものです。
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