時事
まずはWSJの記事を。
デモで揺れる香港が強権的に制圧されない理由は一つ。中国本土の金融資産を心配してのことで、共産党が人権を憂慮してではありません。中国の金融資産100に対し香港の金融資産は140の割合ですし、何よりも共産党幹部の賄賂の蓄財による金融資産の多くは香港に置かれているので、賄賂がバレる、自分の資産が目減りするといった理由で、広州に集合させている特高や人民解放軍が突入しないのです。
【オピニオン】香港は革命にかじを切った
抗議者の多くは一国二制度は維持できないと判断した
2019 年 10 月 25 日 15:46 JST
――筆者のジリアン・ケイ・メルチャーはWSJ論説ページのライター
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【香港】ある中国当局者は今年8月、香港での抗議行動は「カラー革命の性格を明確に帯びている」と語った。カラー革命とは政府転覆を狙った市民の蜂起のことだ。中国国務院の香港・マカオ事務弁公室の張暁明主任によるこの発言は脅し文句だったが、一理ある。抗議デモは革命的な方向へ転換しており、全ての関係者にとって重要性が増している。
現在の危機的状況は今年6月に始まった。何百万人もの香港市民が「逃亡犯条例」改正案の撤回と、同改正案を推し進めた林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の辞任を求めた。その後、ラム氏が香港市民の要求を無視し続け、平和的な抗議行動に警察が暴力で応じたことから、抗議行動参加者らの目標は拡大した。彼らが掲げる「5項目の要求」の1つは、普通選挙、つまり行政長官と香港立法会(議会)議員の直接選挙だ。
抗議行動の参加者らは、香港基本法に「最終目標」として普通選挙の実施が盛り込まれていることを用心深く指摘している。それでも普通選挙の実施は革命に相当する。政治システムを完全かつ根本的に変えるものだからだ。現在の制度は、比例代表制、区議会選、職能団体を通した選挙、そして選挙委員会が複雑に組み合わされている。中国政府は結果を操作し、好みの指導者らを指名することができる。普通選挙では、有権者が指導者たちを直接選ぶことになる。
民主派活動家で元議員の羅冠聡(ネイサン・ロー)氏によれば、香港市民の一部は何十年にもわたって民主主義を求めてきたが、いま抗議行動に参加している人々は「文字通り命を賭けている」という。「街頭に繰り出している人々の大半は、後戻りはできないと考えている。劇的な変化が起きて彼らの権利が保護されるか、権利が奪われ完全に破壊されるかのどちらかだ」
民主主義の要求は、独立の要求と同じではない。筆者は最近3回香港を訪れ、数十人の抗議行動参加者から話を聞いた。香港を中国から切り離すことが目的だと語ったのは2人だけだった。大半の人々は香港の独自性を誇りに思っているものの、香港が中国の一部であることは認めていた。民主派の若者の活動家組織「香港衆志(デモシスト)」のチーフリサーチャーであるジェフリー・ゴー氏は「中国政府は常にわれわれを分離主義者と呼ぶが、独立は現在の運動の要求項目には入っていない」と指摘。「われわれの憲法の枠組みの中で民主主義のために戦うことは『一国二制度』が目指していた状況に一層近づくことにつながる。自決は独立と同じではない」と語った。
とはいえ、香港政府は「代理政府」であるため、「香港政府との戦いは事実上、中国政府との戦いだ」とロー氏は述べる。大半の抗議活動参加者は実名を公表する形ではそう言いたがらないが、デモ自体はその気持ちを明確に示している。10月1日、中国政府は共産党政権誕生70周年を祝い、香港では何万人もの市民が暗い気持ちで街頭に繰り出した。いつもはきれいな香港の街中に「Chinazis(チャイナチス)」を非難し、「暴政が事実なら、革命がわれわれの義務だ」という落書きがあふれた。香港大学のキャンパスで最近見かけたポスターには、「G** D*** Commies(くそったれ共産主義者)」や「CCP Go To Hell(中国共産党は地獄に落ちろ)」と書かれていた。巨大な抗議者の像「民主の女神」はデモに欠かせない存在だ。この像は1本の傘と「香港を解放せよ。今こそ革命を」と書かれた旗を持っている。
中国政府は革命運動が拡散しやすいことを知っている。1989年の天安門広場での抗議デモは、東欧で反共革命の動きが始まるなかで発生した。もっと最近では、1人の男性による抗議行為――チュニジアの露天商、モハメド・ブアジジ氏が2010年12月17日に焼身自殺した――が「アラブの春」のきっかけとなった。中国政府にとってのリスクは、デモが成果を生むことを本土の人々が知ることだ。中国のツイッターに相当する微博(ウェイボー)で香港の政治危機に関する会話を追跡している香港大学のキンワ・フー准教授によると、本土の人々は既に、香港政府がなぜ抗議に屈して逃亡犯条例改正案を撤回したのかを疑問に思っている。
中国の経済成長は鈍化している。政府はテクノロジーを駆使して、市民に対して前例のないほどの統制力を働かせている。しかし、不満は変革を引き起こすのに十分でない。革命の精神史に関する本を執筆しているスタンフォード大学のダン・エデルスタイン教授は「無駄なことに命を賭けているわけではないことを確信するまで、人々は革命を始めないことが多い。自暴自棄の行為による革命はほとんどない。成功の可能性に幾分の希望がなければならない」と話す。
何百万人もの香港市民は自分たちの不満を平和的に表現しているが、政府は要求の大半を無視しているため、少数のデモ参加者は非暴力は無益だと信じるようになった。彼らの行為は中国のプロパガンダ部隊への贈り物になっている。本土では、警察と争ったり、火炎瓶を投げたり、地下鉄の駅を破壊したりしている抗議者の映像を国営メディアが流している。こうしたプロパガンダ部隊は決まって香港の抗議活動参加者を暴徒と表現し、彼らの行為がテロリストのようだと述べることもある。
中国のプロパガンダによると、香港からの教訓は、抗議デモが暴力と混乱につながるということだとフー准教授は述べる。香港の武闘派は映画「ハンガー・ゲーム」のセリフを引用し、「もしわれわれが燃やされれば、おまえたちも一緒に燃える」と話す。
フー氏は、中国政府の根底にある懸念は、「人間社会に関するこの種の現代的でリベラルな思想が広がれば、(本土にも)何らかの影響を及ぼす」というものだと指摘する。しかしウェイボーでの会話は、中国政府のプロパガンダがこれまでのところ奏功していることを示している。本土の人々は、香港市民が自由ではなく独立のために戦っていると考えている。中国共産党のプロパガンダは国民のナショナリズムと嫉妬心に訴えるもので、本土の人々よりも自由が認められ繁栄しているのに国に歯向かう香港市民のことを恩知らずだと表現している。国営メディアはまた、外国人とりわけ米国人は香港の抗議行動を操っている「黒い手(black hand)」だと主張している。
中国が香港と深圳の境界付近で武装車両を集結させ軍事訓練を行う時、そのメッセージは、香港の抗議行動参加者だけでなく本土の人々にも向けられている。中国政府は騒乱に暴力で対応する手段を持っていることをはっきりと伝えていた。しかも暴力は社会をコントロールする唯一の手段ではない。もし監視国家である中国が信号無視の歩行者を把握できるのであれば、反体制派はどうだろう。共産主義者は常に集合的罪悪感というものを信じてきたが、「社会信用制度」によって法執行をより効率的に行うことができるようになった。ブアジジ氏は、もし自分の一族が何世代にもわたって罰せられる可能性があると知っていたら、果たして自らに火を放っただろうか。
香港の人々は反撃しなければ、自分たちの生活が著しく悪化することを理解している。中国政府は本土の人々に対し、彼らを縛る鎖以外にも失うものがあることを知らしめたいと考えている。
マルクス思想をかじったロシア革命以降に誕生したマルキストや共産党と違い、中国共産党は人民を抑圧する「手段」として共産主義を取り入れましたから、真の意味で共産主義ではないにしろ、一国二制度などという幻想は実在しえません。共産党否定につながるすべての異分子は粛清(死刑)すると相場は決まっています。
ただ香港は最初に述べたお金のおかげで生き延びているだけです。
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