時事

下記はFTの記事です。イギリスのブレグジットだけでなく、ECB理事長の交代など、ECBは頭の痛いことだらけですが、ちょっと違うんじゃないかというところを書き込みしました(下線部)。




欧州中央銀行の政策をゆがませる、インフレ目標2%の呪縛

THE EUROZONE’S 2% FIXATION

2019年10月19日(土)13時40分

ダニエル・グロー(欧州政策研究センター研究部長)

<経済見通しの悪化を理由に金融緩和を再開、ユーロ各国に財政支出の拡大も促す危うさ>

欧州の経済政策をめぐる議論でこれまでよく引き合いに出される数字は3だった。GDP比の3%という財政赤字の上限だ。マーストリヒト条約が定める財政ルールはそう単純ではないが、政策論議では3%という数字が独り歩きしていた。

マーストリヒト条約が定める3%の財政赤字の上限は、EU内の上位国に適用し南欧や東欧の加盟国には3%から緩和しなければ足並みが乱れるばかりです。ドイツやフランスなどとギリシャをはじめとする債務国とは置かれている立場が違うという、スタートラインにさかのぼる必要があるでしょうが、頑固なドイツが壁になり話がまとまりません。


それが今や2という数字が幅を利かしている。ECB(欧州中央銀行)のインフレ目標2%だ。マーストリヒト条約に定められたECBの最優先課題は、「ユーロ圏の物価の安定」だが、ECBは何年か前に中期的にインフレ率を「2%未満だが、2%近く」にすると決定した。

ECBはこの目標を神聖視してきたが、長らく達成できなかった。ECBだけではない。この10年近く、多くの先進国では中央銀行がどう頑張ってもインフレ率は2%に届かない。

とはいえ、物価が思うように上がらないことが経済に悪影響を及ぼしているかと言うと、そうは見えない。ユーロ圏の雇用は着実に拡大し、失業率は記録的レベルまで下がっている。それでもなおECBは2%の旗を降ろそうとはしない。

インフレターゲットの数字は、失業率とインフレ率から換算します。例えば日本の場合、一番失業率が完全雇用に近くなる数字が2.5%ですから、本来は、日銀のインフレターゲットは2.5%に設定すべきなのです。


同じように、EUも漠然とした2%という数字ではなく、失業率換算すれば5%前後になるはずで、5%というと非現実的ですから他の先進国に合わせて2%にしているのです。そういった経済学を知らずに記事を書くと、この記事のようにでたらめな記事になります。


そればかりか、今やECBはユーロ圏の景気が陰りを見せ、緩やかな景気後退もあり得るとして、マイナス金利の深掘りなどあらゆる手を使って金融緩和を推し進めようとしている。

経済見通しが悪化したから、金融緩和を推進する――この主張には何の問題もなさそうだが、よく考えてほしい。ECBの役割は中期的に物価の安定を維持することであり、好不況の波に対処することではない。景気に陰りが見えたからといって再び金融緩和に舵を切る理由にはならない。景気循環がもはや物価に影響を与えないような現下の経済状況ではなおさらだ。


上記で説明したように、金融政策は物価の安定と完全雇用という2面がありますから、「景気後退」だから金融緩和するのではなく、「景気後退に差し掛かり、不景気による失業率上昇を止めるため」に金融緩和するのです。


金融危機は時間の問題

インフレ率が「2%近く」に達する見込みがないため、ECBはユーロ圏各国に財政支出を拡大するよう盛んにハッパを掛けてきた。これにはあきれる。マーストリヒト条約は、物価の安定を財政政策ではなく、金融政策で実現するよう定めているからだ。

最初に述べたように、マーストリヒト条約を改正し、EU内の債権国は不景気を脱出するために3%以上の財政支出で景気刺激する必要があります。ギリシャ危機以降を見ても、3%に縛られドンドン不景気になっている状況を理解していたら こんな発言になりません。


ユーロ圏の雇用状況は引き続き良好なのに、「財政赤字を増やせ」と言うに等しい呼び掛けはいかがなものか。「財政赤字はGDP比3%以内」というユーロ圏の鉄則すら無視していいと言わんばかりだ。

何が何でもインフレ目標を達成すべきだという主張の論拠は単純だ。低インフレは(潜在的な)経済停滞の兆候だ、というのである。経済が成長し、失業率が下がっていても、政府と中央銀行はこの理屈で財政出動と金融緩和を正当化しようとする。

だが残念ながら、この理屈は通らない。近年では、ほぼどの国でも経済の停滞と物価上昇率の相関関係は見えにくくなっているからだ。インフレ率が2%に届かないからといって大盤振る舞いをする理由にはならない。

にもかかわらず、今や拡張主義的な見解が大きな影響力を持っている。特にこの何年か金科玉条のように「財政規律」が叫ばれた欧州では、各国政府はようやく支出拡大の理由を見いだし、世論もそれを歓迎している。

ECBもそれを後押ししている。公然とは言わないまでも、より積極的な財政政策を呼び掛けることで、金融政策のみではインフレ目標を達成できないことを暗に認めているのだ。

ECBの政策的なブレのせいで公的債務は拡大する。超低金利のおかげで当面は破綻を免れても、金融危機を招くのは時間の問題だろう。今度ばかりは違うって? さて、どうなるかは見てのお楽しみだ。

根本的に金融政策も財政政策も緊縮主義イデオロギーに縛られ、現実が理解できないのでしょう。緊縮主義は宗教の教義のようなものですから、協議に縛られて方は現場から身を引いていただくのが世界のためになります。