時事

先週、中国国内で5Gが稼働しだしたとのニュースが踊りました。なにせ13億人の人口ですから世界最大市場です。

しかし、5Gとはいうものの、電波帯のバンド幅が大きくなっただけで、言われているほどの通信速度は出ていません。それは下記の記事の例にあるように半導体やメモリーの中に使われる根幹部品が不足しているからです。

日本との関係悪化で韓国が内製を強めたり、米中摩擦で中国が内製を強めたりと報道されていますが、技術というのは簡単に進歩しませんし、大手1社だけでなく多くのサプライアーの協業によって完成するものです。韓国も中国も、大手の技術力、資本力は世界レベルですが、それを支える中小企業が全く育っていないのです。

下記の記事は、そんな一例に過ぎず、自社製、自国製できない部品がたくさんありますし、現状は供給できていても、アメリカがさらなる圧力をかければストップする部品がたくさんあります。技術をパクリ、それに補助金を出し、国策として発展してきた企業にフロンティア精神など育つわけもなく、経済誌や大手投資家が言うような「技術大国中国」などというのは、ただの幻想にすぎません。



中国5G戦略に影 ASML、半導体装置の納入「保留」

【イブニングスクープ】

2019/11/6日本経済新聞 【台北=鄭婷方、伊原健作、北京=多部田俊輔】半導体製造装置世界大手のオランダASMLが、半導体の性能を飛躍的に高める次世代装置の中国顧客への納入を保留していることが、部品などを供給するサプライヤー関係者の話で分かった。次世代通信規格「5G」対応で重要になる技術で、ハイテク分野の覇権を巡る米中摩擦が激化するなか、米国の規制を懸念したとみられる。高度な半導体の内製化を目指す中国に逆風になりそうだ。

貿易摩擦で米規制を懸念か

ASMLに関わる複数のサプライヤー関係者が明らかにした。同社は2019年末までに中国政府系の半導体大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)に対し、「EUV(極紫外線)露光装置」を納入する予定だった。ただ計画は足元でストップしているという。関係者の一人は「ASMLは中国に最先端装置を出荷して米国を刺激するのを避けるため納入をいったん保留した」と述べた。

EUV露光装置は現状でASMLが独占的に開発・製造し、代替がきかない。半導体の性能向上では回路線幅の微細化がカギとなる。細ければ細いほど演算処理などの能力が上がるためだ。ただ微細化が進展するにつれ難易度が増している。こうした技術的な壁を突破するために開発された装置で価格は1台150億円程度とされる。

半導体製造の世界大手、台湾積体電路製造(TSMC)と韓国サムスン電子が19年から最先端品の量産用に導入したばかり。20年後半の発売が見込まれる米アップルの新型スマートフォンではこの技術を活用したCPU(中央演算処理装置)が搭載される見通しだ。

SMICは回路線幅が14ナノ(ナノは10億分の1)メートルの製品のテスト量産を19年から開始した段階だ。EUV技術が必要になるのは7ナノメートル以下まで微細化が進んだケースとされ、この装置が導入できなくても即座に業績に響くわけではない。

ただ、中国政府の資金を背景にTSMCなどを技術で猛追する計画には打撃となる。今後、5Gの普及が本格化すれば、スマホなどのデータ処理量が爆発的に増える。半導体の性能を向上させる重要性は高まる一方で先端技術の導入が遅れることの意味は大きい。

中国向けの納入保留は米国による事業への圧力を懸念したためとみられる。装置部品の約2割は米北東部コネティカット州の自社工場で生産する。また同社はマイクロン・テクノロジーなど米半導体企業が重要顧客で、2018年12月期は米国向けが売上高の16%を占める。米国から規制を受ければ影響は甚大だ。

米中対立は復調し始めた半導体市場の先行きにも影響する。国際半導体製造装置材料協会(SEMI)によると半導体製造装置市場は20年に前年比7%増の558億ドル(約6兆1000億円)と2年ぶりに増加に転じる見通し。中国が大幅に伸び世界最大の市場になる方向で、韓台などの停滞を補ってけん引役を果たす。半導体業界は中国頼みが色濃くなっている。

ASMLにとっても中国向けは成長の源だ。売上高比率は約2割と韓国向け(35%)に次ぐ。EUV露光装置の納入計画は撤回されたわけではなく、米中の緊張緩和などで状況が好転するか、慎重に見極め対応を決めるとみられる。

日本の装置会社では米国の規制強化を懸念し、中国ビジネスを減速する動きは出ていない。ASMLなど世界大手の動向を各社は注視している。

中国の半導体自給率向上にも逆風

欧米の半導体製造装置の導入が遅れれば、5G向けの先端品だけでなく中国の半導体強化計画に狂いが生じかねない。中国の習近平(シー・ジンピン)指導部は18年で15%程度だった半導体の自給率を20年に40%、25年に70%に引き上げる目標を掲げるが、その実現は難しい情勢だ。

ASMLが最新鋭装置の納入を保留したSMICは半導体受託生産の中国最大手で、米クアルコムから生産を受託した実績を持つ。ただ台湾の調査会社トレンドフォースによると世界シェアは約5%にとどまり、約5割を握る首位のTSMCなどと差は大きい。米中対立や中国経済の減速を受け業績は低調に推移している。米国企業の中国工場の買収も実現できず、イタリア子会社の売却も決めた。

米国は中国の台頭を警戒し、習指導部の半導体強化策に圧力をかける。18年には中国通信機器大手、中興通訊(ZTE)は米国から半導体の供給を一時的に止められたことで経営難に陥り、経営陣の刷新に追い込まれた。普及型の半導体メモリーDRAMを手掛ける国策企業、福建省晋華集成電路(JHICC)の量産計画も頓挫した。米国の規制で装置最大手の米アプライドマテリアルズ(AMAT)などとの取引を絶たれたのが原因だ。

SMICの周子学董事長は9月に上海市で開かれたイベントで「半導体は高度にグローバル化した産業で、多くの企業の連携が必要だ。オープンに提携して共同の成長を模索することで初めて各社が利益を得ることができる」と述べ、米国をはじめ海外と連携することの重要性を強調した。