時事

13日の続きです。

評論家やエコノミストは適当なポジショントークを言ったところで自分の腹は傷みませんが、投資家は自分のお金を投資するのですから現実に即しています。

中国が技術大国になるというのは、まず“パクリを止め”、自分で開発する想像力を蓄えてからの話です。


中国VCブーム終焉、身動き取れない投資家

2019 年 11 月 15 日 08:20 JST

 中国のベンチャーキャピタル(VC)ブームはここ数年、圧倒的な時価総額を誇るハイテク企業や起業家の成功物語を数多く生み出してきた。そのブームが終わりを迎えている。

 中国ハイテク新興企業の成長と利益見通しを巡る投資家の信頼感が急速に冷え込み始めてから1年がたった。同国内のVCの資金調達は2013年以来の低水準に沈みつつある。

 革新的な新興企業の価値が膨らむと当て込んでいた投資家は、 中国新興企業の上場ペースが鈍る中、 利益を確定させるのに苦労している。ここ数年で株式非公開のハイテク企業の評価額が急騰した結果、多くのVCファンドは多額の未実現利益を抱えている。懸案となるのは、中国の経済成長減速を背景に企業の見通しが暗転しており、公開市場の投資家が高値づかみを避けそうなことだ。

 アジア地域に特化したプライベートエクイティ(PE)会社PAGグループのウェイジャン・シャン会長は、「中国の投資家はPEやVCで手っ取り早く高リターンを得られると考えていた。そうした投資家の多くは現在、痛手を負っている」と語った。中国でバイクシェアリングを手掛ける新興企業がつまずき、電気自動車(EV)メーカーが苦戦する中、こうした企業への投資は損失を被り、多くが他の新興企業への支援に二の足を踏んでいる。

 調査会社プレキンによると、中国に注力する61のVCファンドが今年初めから10月までに資金調達を実施し、ドル建てと元建て合わせて126億ドル(約1兆3700億円)を調達した。2019年の年末2カ月で資金調達が活発化しない限り、調達額は昨年を大きく下回る見通しだ。昨年は170のファンドが合計256億ドルを調達した。

 減速はあれよあれよという間に広がった。わずか2年前には、中国を中心とする新たな資金流入を追い風に、アジアはVCの資金調達の場としてトップの米国を脅かす存在だった。VCファンドはこれに伴い、料理宅配やトラック配車、自動運転車、ヘルスケアなどのサービスで革新を打ち出すインターネット新興企業に資金をつぎ込んだ。ここ数年で「ユニコーン」と呼ばれる評価額10億ドル以上の未上場企業が相次ぎ生まれた1つの背景だ。

 最近では投資手続きにかかる時間が延びている上、一部新興企業では資金調達額や評価額が目標を下回っている。

 米国の年金基金や大学基金はかつて、中国のドル建てVCファンドの主要な資金源だった。だが、中国光大(チャイナ・エバーブライト)のマネジングディレクター、ビクター・アイ氏によると、貿易を巡る緊張の高まりを受け、米国拠点の投資家の多くが投資を見直している。

 さらに、中国の債務圧縮策によって、投資資金の借り入れが一段と困難かつコスト高になり、多くの国内投資家が高リスク投資の見直しを迫られてきた。

 プレキンによると、2019年3月時点でVC運用資産は3649億ドルと過去最高で、その大半は中国が投資先だった。これには1000億ドルの手元資金も含まれる。VCがこれまで以上に投資先を厳選するようになり、 エグジット(投資資金の回収)も困難になる中、運用資産の総額は当分のあいだ高止まりする可能性がある。

 米中貿易戦争や香港の政情不安を受け、中国の有望新興企業による目先の上場見通しが遠のく例もある。

 ゴールドマン・サックス・グループは10月上旬、顔認証技術の曠視科技(メグビー)による香港での新規株式公開(IPO)計画について、役割を負うか再考していると述べた。メグビーは先ごろ、中国がイスラム教少数民族を拘束している新疆ウイグル自治区で事業を展開する他のハイテク企業と並び、米商務省のブラックリストに掲載された。

 香港に上場した口コミ情報サイトの美団点評や、ナスダック上場の電子商取引企業ピンドォドォ(PDD)など、ここ2年で上場した中国ハイテク大手数社の株式は急騰しているものの、2018年以降に外国で上場した中国企業のほとんどは低調だ。

 調査会社ディールロジックによると、18年以降に米上場を果たした中国企業51社の株価は、10月末時点でIPO価格を平均30%下回っていた。

 かつて中国版テスラと称された上海のEVメーカー、蔚来汽車(NIO)もその1つだ。ニューヨークに上場した同社は18年秋のIPOで10億ドルを調達して以降、現金燃焼が続いている。上場後に8億5000万ドルの転換社債を発行した。9月には人員削減を発表。バッテリー不具合による車両リコール(回収・無償修理)も明らかにした。NIO株は8割ほど下落し、時価総額はこれまで調達した資金の総額を下回っている。


次は火の手が上がったソフトバンクのお話

とめどなく下がり続けるソフトバンクの株価が急騰しました。理由はlineとの経営統合です。

Yahoo!とLINEの経営統合のニュースが流れるなり、両社の株価が急騰しましたが、これは一過性のものであり、LINEがラインモバイルをソフトバンクに売却した時点で、今回の経営統合は既定路線で、いつの時点で発表するかだけが争点でしたから、今の時点での発表は、ソフトバンクがこれ以上株価が下がらないようにする予防措置です。ソフトバンクに売られたり買われたりを何度も繰り返すヤフージャパンはソフトバンクの駒に過ぎず、また、LINEはすでに頭打ちで契約数も売り上げも横ばいですから、頭打ち同士が統合しても沸くようなシナジーは生まれません。ソフトバンクから見れば、これでしばらく時間が稼げる程度のことですが、LINEとdocomoが行っているラインペイにソフトバンクが楔を打つメリットはあります。ラインのようなメッセンジャーアプリを含むアプリ業者は、設備投資など必要なく、アイディア一つでもうけられますが、アプリ同士の差別化はむつかしく、時間とともに集約する運命にあります。IT産業と一口に言っても、設備投資の必要な企業、携帯電話で言うところのキャリア以外は、長期的収益は出ないのです。

そういう意味で考えれば、今回の経営統合はLINEのメリットが大きく、ソフトバンクのメリットは時間稼ぎのみとなります。


LINEとヤフー統合、成否の鍵はどこに?

2019 年 11 月 15 日 09:13 JST 更新

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 日本のネット業界の巨人2社の統合は理想的な組み合わせに見える。問題は、統合をいかにうまく機能させるかだ。

 対話アプリのLINEとソフトバンクが間接的に支配するネット検索サービスのヤフー・ジャパンは14日、経営統合に向けた協議を進めていることを明らかにした。いずれも日本で収益の大半を稼ぐ。LINEのユーザーの半分は日本以外(台湾・タイ・インドネシア)だが、売上高に占める海外市場の割合は約25%しかない。ヤフー・ジャパンは、ベライゾン・コミュニケーションズが保有する米国のヤフーとは別だ。

 今回の経営統合がどのような構造になるのか、詳細はまだ分かっていない。双方はソフトバンクとLINE親会社の韓国ネイバーが、LINEとヤフージャパンを束ねる持ち株会社を折半で所有する案を検討しているようだ。ネイバーはLINE株式の72.6%、ソフトバンクはヤフージャパンの親会社Zホールディングス株式の47.5%を保有する。統合交渉が発表される以前、両社の持ち株の価値は70億~80億ドル(約7600億~8700億円)でほぼ同程度だった。LINEとZホールディングスの株価は14日の取引でいずれも15%超急伸した。

 今回の経営統合には明確なシナジー効果が期待できる。若者が中心のLINEの日本ユーザー8200万人と、年齢層がより高めのヤフージャパンのユーザー5000万人を束ねることができるためだ。 LINEのユーザーがアプリ内でヤフージャパンの電子商取引サイトから商品を購入するといった相互のユーザー層への販売が可能になる。両社はデータを共有してLINEのターゲット広告の精度を上げることもできるだろう。これにはヤフージャパンの出店業者に代わって行うものや相互の広告枠販売などが含まれる。

 統合による大きな商機として期待できるのが、依然として現金社会の日本ではまだ黎明(れいめい)期にある電子決済市場だ。ヤフージャパンはソフトバンクとともにスマホ向け決済サービス「ペイペイ(PayPay)」を所有する一方、LINEは「ラインペイ(LINE Pay)」を展開する。この2つを合わせれば、ユーザー層の拡大やコスト削減が可能になる。両社とも現時点では、決済サービスでは赤字だ。

 究極の目標はおそらく、統合によって誕生する新会社の規模と幅広い業態を生かして、中国の「微信(ウィーチャット)」のような、対話メッセージからネット検索、買い物まで、あらゆるサービスが1カ所で済む「スーパーアプリ」を構築することだろう。

 しかしながら、両社ともそれぞれ取り組むべき問題を抱えている。LINEのユーザー数は伸び悩んでおり、新たな成長事業に向けた投資がかさみ、最終損益は赤字となった。Zホールディングスも広告収入が落ち込んでおり、電子商取引事業では業界トップのアマゾンと楽天に大きく引き離されている。経営統合によるシナジー効果はプラスになるだろうが、両社の企業文化の違い(双方は異なる年齢層に異なるサービスを提供)が慎重に管理されて初めて、シナジー効果は実現する。

 「LINE-ヤフージャパン」の統合は望ましい組み合わせだが、大半の統合計画に比べなおのこと、それをうまく生かす巧みなスキルが求められる。