時事

下記はWSJの記事で、人民元は国際通貨には程遠く中国の発表は捏造だということをデータを交えて述べています。

現実は下記の記事の通りなんですが、中国がデジタル通貨を急ぐ理由がここにもあります。

IMFの通貨バスケッツにも認定された人民元ですが、それでも貿易で人民元決済されるのはごくわずかでしかなく、中国からすると貿易をすればするほど外貨が流出するという矛盾を抱えています。相手国がドル決済を求めれば人民元を売ってドルを買い支払うという悪サイクルで、ますますドルは高くなり、ますます人民元は安くなります。その結果、アメリカには通貨安誘導をしている為替操作国に認定され、罰則規定が適用されるという泣きっ面に蜂で、頼みの通貨バスケッツも役に立たず、こと、為替に関する限り人民元は終了していますから、一気にゲームチェンジするためにも、為替や国境の概念が低いデジタル通貨を急がねば、このまま米中紛争が続くと、オーバーナイトのような短期決済などで通貨破綻する懸念もあります。

ただし、それはボジティブに事が進んだ場合で、人民元と同じように中国政府発行のデジタル通貨など人民元と同じだと市場が見てしまうと、現紙幣であろうとデジタルであろうと外貨準備高が間に合わなくなるのは同じことです。パンダ・ハガーのエコノミストや中国政府は「十分な外貨準備がある」といいますが、それはあくまで資産ベースの外貨ですから、オーバーナイト等で必要になる流動資金外貨とは別物です。現に、この数年の中国は、どんどん米国債を売却しドルを買う作業を続けているのですから、中国の言うことが眉唾なのは行動を見ても明らかです。

中国は置いといてEUとブレグジットの話をします。下記のデータを見ればわかるように、EUの共通通貨ユーロは、国際貿易市場では取引も信任も低く、EUがEU内貿易から脱却できていないことを表しています。それに対してユーロを拒みポンドを維持してきたイギリスポンドは国際市場での量も価値も信任されています。このことから言えることは、ブレグジット後のイギリスはポンドの価値を維持できますが、EUのGDPの26%を占めるイギリスがEUから離脱すると、ユーロの価値はますます下がるということです。

人民元が貿易の16%。ユーロが貿易の40%と、ともに為替に関する限り政府発表は信用できません。



人民元の国際化、データから見る厳しい現実


2019 年 12 月 11 日 15:23 JST 更新

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 中国人民元の影響力は拡大していると言われてきた。人民元はいずれ、世界の基軸通貨としてドルの地位を脅かす存在になるか、最低でも、複数の基軸通貨が存在する新たなシステムの到来を告げると言われてきた。

 しかし、実際の国際的取引での人民元の利用に関するデータや、過去10年の極めて遅々とした進展状況からは、厳しい現実が見えてくる。

 国際決済銀行(BIS)が今週公表したデータは、人民元の国際的役割について悲観的な印象を与える新たな一例となった。世界最大の貿易国としての中国の規模に比して、人民元の影響力は極めて期待外れの状況にある。

 人民元の外為取引の総額は、中国の貿易総額の約14倍になっている。この倍率はユーロ、円、ドルに比べて小さい。ユーロの同倍率は約40倍となっている。ユーロ圏の貿易の多くがユーロ圏内で行われているにもかかわらずだ。円は160倍、ドルは273倍だ。

国際通貨基金(IMF)が今年作成したデータによると、ドル建てで行われた貿易の比率で見ると、中国は他の全ての調査対象国を上回った。ブラジルやインドネシアといった新興国でさえ、より多様な通貨が貿易決済に使われている。

 人民元の熱狂的な信者たちは、まだ影響力は小さいものの、大きくなりつつあると主張するかもしれない。しかし、データはそれについても裏付けをほとんど示していない。人民元のオフショア取引は2016年4月から2019年4月の間に25.3%増加した。金額は大きいものの、伸び律はインドルピー、ブラジルレアル、韓国ウォン、ロシアルーブルを下回っている。

 人民元の国際化に関する話は当初こそ熱狂的に報じられたが、その後の続報が少ないため、順調に前進しているかのような印象を受ける。しかし、現実には、多くの取り組みが縮小したり、計画倒れになったりしている。

点心債(オフショア市場で発行される人民元建て債券)の市場は約10年前に大きく発達し、マクドナルドやキャタピラーといった米国企業が足を踏み入れた。2014年末までにFTSE点心債券指数の対象債券の総額は、2800億元(約4兆3400億円)超に膨れ上がった。

 今では点心債の目新しさは薄れ、FTSE点心債の発行残高は1150億元を下回る。同市場の規模は2016年と2017年に縮小し、その後は硬直化している。マクドナルド、キャタピラーの発行済み人民元建て債券は市場には存在しない。同指数の対象となっている債券の約3分の2は現在、中国政府あるいは国有の大手金融機関によるものだ。

 国際的に利用される通貨の強さは、保有者がその通貨で何をできるかにかかっている。人民元の場合、資本勘定は総じて閉鎖的で、資産市場は「超」がつくほど投機的であり、他の通貨と比べて魅力的とは言えない。

 そうした状況に変化がないのであれば、人民元の国際的役割をめぐる論議は、絵空事ばかりで実際の進展を伴わない内容と心得ておくべきだ。国際金融での新たな役割に関する人民元の発表があるとしても、話半分で聞いておくべきだろう。