時事
イラン革命防衛隊「クッズ部隊」のガセム・ソレイマニ司令官が米軍機の攻撃によりイラクの首都バグダッドで殺害されたことは、日本でも大きく報じられました。日本メディアの多くは彼を「イランの英雄」と紹介し、米トランプ政権を非難していますが、時間がたつに従いソレイマニ氏が報道とは全く違う人物だったことがわかっています。
ソレイマニを英雄とたたえるのは、イランの体制派のみです。イランには国内外に自由化・民主化を求める分厚い層の反体制派がいて、彼らにとってソレイマニは、抑圧的独裁政権の暴力的側面の象徴のようです。
イラン・イスラム共和国は1979年、「イスラム革命」で親米政権を打倒することにより誕生しました。共和制を取りつつも基本的にはイスラム教シーア派のイデオロギーに立脚した統治を行っており、西洋的な自由・人権・民主主義を認めていません。反体制デモは弾圧され、女性は頭髪を隠すヒジャーブを取り外しただけで拘束され、同性愛者が毎年多数処刑されていようです。
イスラム革命の成就後、革命体制を防衛するため正規軍とは別に設立された武装組織が革命防衛隊で、その傘下に国外での工作活動に従事するクッズ部隊が創設されたとされます。98年頃からその司令官を務めていたのがソレイマニで、ソレイマニが最高指導者アリ・ハメネイの寵愛を受け、英雄とたたえられてきたのは、彼がイランの至上目的である中東における覇権確立、いわゆる「シーア派の弧」の形成任務を担い、それを一歩一歩着実に実現してきた参謀だったからとされます。
イランは正規軍を動員するのではなく、クッズ部隊の工作活動を通じて、主にシーア派勢力に資金や武器を提供・支援することで影響を強化し、次第に他国全体を実質的支配下に収める戦略を取ってきました。ソレイマニは20年にわたって中東各地でその活動を展開し、イラクとレバノンをほぼ手中に収めています。アラブ諸国において彼は反対者をことごとく虐殺し、国家を分裂させイランの属国化する最恐テロリストとして知られてきました。日本の報道とは真逆です。
クッズ部隊には1万人ほどの兵士がいて、破壊工作や要人暗殺だけでなく戦闘にも直接従事し、2011年に始まったシリア内戦ではアサド政権側に付き、反体制派住民を包囲して餓死させる残忍な戦術を実行した部隊です。また、毒ガス使用を指示したのも彼だとされる報告書が出てきました。19年10月からイラクで発生している反体制デモの参加者を殺害しているのも、クッズ部隊の指揮下にあるシーア派民兵組織です。
ソレイマニ死亡のニュースが伝えられると、シリアとイラクの両国で彼に弾圧されてきた人々が喜びを爆発させる映像や写真がSNS上に出回りました。アラビア語ではハッシュタグ「テロリスト・ソレイマニ死亡」の付いた「地獄に落ちろ」「神よ、呪いたまえ」などの罵詈雑言と、殺害を祝福する投稿があふれかえっています。
一方、「数百万人が殉教者ソレイマニ司令官の葬儀に参列」という国営メディアの報道について、イラン人ジャーナリストで人権活動家のマシ・アリネジャドが米ワシントン・ポスト紙に「イランのプロパガンダを信じるな」という反論を掲載。学生と公務員には葬儀への参加が義務付けられていると説明した上で、彼を戦争犯罪人だと非難するイラン人の声が西側メディアに届かないのは極めて遺憾だ、と記しています。
CNNの名物アンカーであるアンダーソン・クーパーは、ソレイマニを対ナチス・ドイツ戦を率いたフランスの国民的英雄シャルル・ドゴールになぞらえたようですが、これは全く的外れで無知の極みだとする多数のイラン人がSNSに投稿しています。
日本のマスコミなんて所詮、アメリカの左巻きのNYタイムスかワシントンポスト、テレビならCNNのコピーしか報道する能力も無いのですから、報道が偏っている自覚も無いのでしょう。
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