時事

ボクはトム・ブレディが好きではありません。しかし、傑出したQBでありリーダーであることは疑ったことがありません。下記はNWのコラムです。ブレディ・ファンのコラムニストが書いており、彼らは20年間、どこのチームのファンよりトム・ブレディというリーダーによって‟いい目”をしてきたのです。まさに「神(GOT)」。

プレッシャーに押しつぶされるQBが9割。自分の精神状態を保てない、ハードヒットに怖気づく、フォーメーション・ブックが理解できていない、チームの士気を下げるなどが9割のQBです。大学での戦績やスカウティング・コンバイン、面接で何を見ているのかと疑問に思うQBが多い中、ブレディはドラフトの最底辺から歴史上最高のQBになりました。ブレディは常にチームの士気を一定に保ち、自分自身も凹むことがありません。鈍足でみじめなくらいどんくさいのですが、へぼな選手を一流に見せるほど多彩な攻撃を仕掛けNEの黄金期を長い期間保ってきました。

タンパへの移籍が吉と出るかどうかはわかりませんが、タレント揃いのタンパに足りないものは「勝者の思想」、「チームの規律」など、‟ゆるい”ところを改善すればSBは見えてきますから、ブレディ嫌いのボクも楽しみです。




私が愛した名クオーターバック──トム・ブレイディの栄光に乾杯

2020年4月18日(土)11時00分

ハンク・ギルマン(本誌編集ディレクター)

<NFL最強のペイトリオッツを率いたトム・ブレイディが他チームへ移籍、記憶に刻まれた素晴らしき瞬間を振り返る>

ついにやって来た。ニューイングランド・ペイトリオッツに入団して20年。NFL(全米プロフットボールリーグ)の優勝決定戦スーパーボウルに9回出場し、個人として最多の通算6度の優勝を果たしたクオーターバック(QB)、トム・ブレイディが移籍する日が。移籍先はタンパベイ・バッカニアーズだ。

ペイトリオッツの地元ボストンでは嘆きの声が上がったが、もういい頃合いだ。一ファンとして言わせてもらえば、昨シーズンのブレイディはそれまでと違った。昨年のスーパーボウルの後、栄光の中で引退すべきだったと、ボストン・グローブ紙のスポーツ担当コラムニストのダン・ショーネシーは発言したが、その意見には激しく同意する。

だが本人は引退を選択しなかった。ならば、幸運を祈ろう。そして、たくさんの思い出をありがとう。チームの司令塔としてブレイディが輝いていた瞬間を(あまりに多過ぎる! とペイトリオッツのアンチは言うだろうが)思いつくままに振り返ってみよう。

黄金時代の幕開けの日

まずは、セントルイス・ラムズ(現ロサンゼルス・ラムズ)と対戦した2001年シーズンのスーパーボウル。残り時間1分21秒でスコアは同点、ペイトリオッツは自陣17ヤードラインでボールを保持しており、タイムアウトは残っていなかった。

伝説的な元NFLコーチのジョン・マッデンは「時計を進めるしかない......オーバータイム(延長戦)を狙うべきだ」と試合中継で解説した。未熟なブレイディが、華麗な攻撃で知られたラムズ相手にドライブをかけるのは無理だと言いたかったのだろう。

だがブレイディは短いパスを繰り返し、ラムズの30ヤードラインにボールをスパイク。アダム・ビナティエリが48ヤード地点からフィールドゴールを決めた。この瞬間、ブレイディ率いるペイトリオッツの黄金時代が幕を開けた。

アトランタ・ファルコンズと対戦した2016年シーズンのスーパーボウルでは、友人2人が電話をかけてきて私をからかったほど、ペイトリオッツは低調だった。第3クオーターで28対3と大きくリードされたが、ペイトリオッツはスーパーボウル史上最高の大逆転をやってのけた。

勝利を決めたタッチダウンを除けば、記憶に残るのはスコアが28対12だった第4クオーターでの場面だ。

タックルを受けたファルコンズのQBマット・ライアンがボールをファンブル。敵陣25ヤード地点でペイトリオッツの選手がフリーボールを拾う。ブレイディはといえば、スタジアムの超大型スクリーンを見上げ、見開いた目で一連のプレーを追っていた。ファルコンズと私の友人らにとって残念なことに、彼はチャンスを見逃さなかった。

シアトル・シーホークスと対戦した2014年シーズンのスーパーボウルでのペイトリオッツの勝利も見ものだった。とはいえ、その次に素晴らしかったのはトロフィー授与式での出来事だろう。

ペイトリオッツのヘッドコーチのビル・ベリチックやMVPに選ばれたブレイディが壇上に立つなか、NFLコミッショナーのロジャー・グッデルはブーイングの嵐で迎えられた。意図的に空気圧の低いボールを使用した疑惑を受けて、グッデルがペイトリオッツとブレイディに対する調査を命じたためだ。ファンにとって実に痛快な瞬間だった。

肝心なときに頼れた男

2018年シーズンのプレーオフが始まる前、ペイトリオッツの評価は最低で、専門家は黄金時代の終焉を予言していた。「事情通」の意見など、ブレイディは無視? いや、もちろん気にしていた。

2019年1月のプレーオフ第2戦を制した直後、不利と言われた次戦についてブレイディはこう言った。「今のチームは最悪で、どんな試合にも勝てないと思われているのは知っている。結果はそのうち分かる。楽しい試合になるよ」

そのとおりだった。ペイトリオッツは次戦にオーバータイムで勝利し、スーパーボウルに進出。見事優勝した。最後は、ロサンゼルス・ラムズを相手にした2018年シーズンのスーパーボウルでのプレーだ。

第4クオーターはディフェンス合戦で、残り時間7分強の時点でスコアは3対3。ブレイディが放った完璧なロングパスを、ロブ・グロンコウスキーがキャッチする(その直後に、ソニー・ミシェルが決定打となるタッチダウンを決めた)。いかにもグロンコウスキーで、いかにもブレイディな瞬間だった。

もちろん「らしくない試合」だったと批判する声はあったが、ブレイディはいつもどおり、肝心なときに本領を発揮したのではないか。この試合の後、すぐに引退を発表したグロンコウスキーも光っていた。