時事

財務省と自民党税調に外堀を埋められ、官僚からはろくな報告が上がらないようになった安倍総理ですが、4月にトランプ氏と同調し対中圧力を強める指示を出しています。

「中南海(北京中心部にある中国指導部の執務区域)では、外資系企業の中国からの撤退を真剣に心配し、今までと真逆の上げ膳据え膳的な対応をしているようです。その理由は、安倍政権が緊急経済対策で打ち出したサプライチェーンの再構築です。中国内のインターネット空間でもこのテーマを巡って激論が交わされているのに日本のマスコミは一切報道しません。

本来なら習近平は今ごろ、4月上旬の日本国賓訪問を終え、安倍総理と高らかに日中新時代を宣言。日本は次の大行事、夏の東京五輪に向けて準備に忙しかったはずでした。ところが中国を起点とする中共ウイルスで習訪日も東京五輪も延期。

それに伴い、文化大革命以降初めての経済悪化に見舞われ、少しでも外資をつなぎ留めておくように、いきなり手のひらを返したサービスに励んでいる中国共産党です。

日本政府は緊急経済対策で、新型コロナのまん延により痛手を受けたサプライチェーンの再構築を打ち出しました。生産拠点が集中する中国から日本への国内回帰を促すため、企業規模に応じて関連費用を補助するというものです。すでに補正予算案に2400億円超が盛り込まれ、次の追加予算も国会審議中です。

3月5日、習近平の訪日延期が正式に発表された同じ日に、安倍総理は首相官邸で開いた自らが議長を務める未来投資会議で、高付加価値製品の生産拠点を日本に戻す方針を表明しました。「中国から日本への製品供給の減少による我が国サプライチェーンへの影響が懸念されるなか、一国への依存度が高い製品で、付加価値の高いものは日本への生産拠点の回帰を図り、そうでないものも一国に依存せずASEAN各国などへの生産拠点の多元化を図る」という、安倍総理の発言は極めて明快でした。

このサプライチェーン多様化は以前からあり、「チャイナプラス1」の考え方よりも明確に「中国離れ」を指向しています。それでも当時、日本では大きな話題になりませんでした。しかし、中国側の見方は全く違っていました。日本がかつて経験したような産業空洞化の端緒になりうる「中国撤退支援プロジェクト」であると考え、それゆえ、習近平の訪日を急いでいたのです。

北京で4月8日に開かれた共産党最高指導部メンバーによる政治局常務委員会で、習近平は「厳しく複雑な国際的感染と世界経済の情勢に直面しており、我々は『底線思考』を堅持し、比較的長い期間にわたって外部環境の変化に備える考え方と行動が求められる」。

常務委は通常、週1回のペースでかいさいされますが、開催の事実と中身が報道されるのは極めて稀です。議長の習は、最悪の事態も考えた「長期戦」への備えを求め、最高指導部内で共有されたと報道されています。

「中国が置かれた国際的な経済環境、安全保障、国際世論上の外部環境の変化への注意を呼びかけている」。中国の外交・安全保障専門家の指摘である。「国際的な経済環境」には世界経済の落ち込みに加え、間違いなく日本企業を含めた外資の「中国離れ」の行方も含まれます。

日本とリンクするように米国でも議論が浮上しています。「アメリカファースト」を掲げる米トランプ政権の国家経済会議委員長、クドローが中国から回帰する米企業の移転費用の負担を検討する考えを示しました。世界1位と3位の経済大国が動けば影響は甚大です。

戦いの行方を左右するのが、コロナ禍後の自国経済立て直しです。もし中国から主要な外資が退いてゆくなら、中国経済の復活など絵に描いた餅になります。

国内問題でフラフラの安倍総理ですが、トランプ大統領との日米合作は着実に進化しており、それは他の総理候補には描けない絵なのです。