時事

財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会で、榊原定征会長の談話が発表されました。下記の通りです。今後の財政運営について「悪化した財政から目をそらしてはならない」など、財政再建の必要性を訴えられました。

一般的にこうした談話は財務省官僚が用意することがほとんどです。財務省官僚が財政制度等審議会会長に意見を振り付け、はっきり言えばゲラを渡します。その審議会が財務相に諮問する形となっているので、結局、審議会が官僚の隠れみのとなり、大臣を誘導する装置になっています。つまり、会長談話には財務省官僚からの最初の意見が凝縮されているのです。

財務省の見解はいつも同じで、「今の財政状況は悪い」と決めつけています。財政状況を正確に分析するには、ストックとフローからアプローチするのは、国の財政でも企業財政でも同じですが、もちろん財政状況という以上、ストックの情報がベースになります。

見方は国も企業も、ストックは貸借対照表(バランスシート)、フローは損益計算書です。ただし、企業会計とまったく同じではなく、公会計によるストックのバランスシートとフローの毎年度予算になります。

会長談話では、ストックとして公債残高964兆円、フローとして基礎的財政収支赤字66・1兆円を挙げていますが、重要な数字を隠しています。

ストックのバランスシートは、企業会計なら本体だけではなく、連結ベースのグループ会社全体のもので考えます。政府も同じで、中央銀行など子会社を含めた「統合政府」ベースです。無償還・無利子を除く実質的な資産負債でみれば、日本の統合政府ベースのバランスシートは、純債務がほぼゼロの状態です。この意味から、負債だけを強調する会長談話は全く正しくなく間違っています。

では、フローの基礎的財政収支赤字はどうかというと、これも正しい数字ではありません。今回の補正予算では、政府と日銀の連合軍、つまり5月22日の麻生財務大臣と黒田日銀総裁の共同声明を読めば分かるように、国債発行額はほぼ日銀が買い取ることになっています。その場合、国債の償還・利払い負担は実質的にありません。「ゼロ」なのです。どういうことかというと、国債負担は通貨発行益で賄われるのです。償還は新札を刷って支払いますし、金利はマイナス金利ですからマイナス分の儲けが出ます。

しかし、基礎的財政収支の計算上、初年度の国債発行分が赤字としてカウントされます。しかし、高校レベルの数学ですが、翌年度以降の日銀納付金の現在価値を合算すれば通貨発行益となるので、その赤字分は意味がない数字です。

これでお分かりと思いますが、会長談話は、あえて不適切な基礎的財政収支赤字の数字を使って、財政状況が悪いという建付けにした説明で、裁判でいえば「有罪」です(笑)。ここで狡猾なのは、あくまで会長個人の発言として、財務省は責任を逃げていることです。

今回の補正予算では、政府と日銀の連合なので、財政状況を悪くしません。例えば、解散総選挙の目玉に100兆円の補助金と消費税を向こう3年間停止するという減税策を取り190兆円の財源に国債を新規に発行しても、我々の税から190兆円払われるのではなく、税からの支払いはゼロ、しかも発行益とマイナス金利分の2800億円ほどが黒字になります。

下記上段が、役立たずのクズばかり集まった財務省の操り人形の委員の名簿です。財政について知識があるわけでもないのに選ばれ、自身の名誉欲や出世欲のために国民に迷惑かける輩で知ってる人も数人いるだけに、倍腹が立ちます。

下段が会長談話です。こういう茶番をやるところは中国共産党とよく似た体質です。



財政制度等審議会 財政制度分科会 名簿

令和2年7月1日現在

<委 員> 赤井 伸郎 大阪大学大学院国際公共政策研究科教授

遠藤 典子 慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授

大槻 奈那 マネックス証券(株)執行役員チーフアナリスト・名古屋商科大学大学院教授

黒川 行治 千葉商科大学大学院会計ファイナンス研究科教授

神津 里季生 日本労働組合総連合会会長

◎ 榊原 定征 東レ(株)社友 元社長・会長

櫻田 謙悟 SOMPOホールディングス(株)グループCEO 取締役 代表執行役社長

佐藤 主光 一橋大学国際・公共政策大学院教授

角  和夫 阪急電鉄(株)代表取締役会長

十河 ひろ美 (株)ハースト婦人画報社ラグジュアリーメディアグループ編集局長

兼ヴァンサンカン総編集長兼リシェス編集長

武田 洋子 (株)三菱総合研究所政策・経済研究センター長 チーフエコノミスト

中空 麻奈 BNPパリバ証券(株)グローバルマーケット統括本部 副会長

南場 智子 (株)ディー・エヌ・エー代表取締役会長

藤谷 武史 東京大学社会科学研究所教授

○ 増田 寛也 東京大学公共政策大学院客員教授

宮島 香澄 日本テレビ放送網(株)報道局解説委員

<臨時委員> 秋池 玲子 ボストン・コンサルティング・グループ

マネージング・ディレクター&シニア・パートナー

雨宮 正佳 日本銀行副総裁

上村 敏之 関西学院大学学長補佐・経済学部教授

宇南山 卓 一橋大学経済研究所教授

葛西 敬之 東海旅客鉄道(株)取締役名誉会長

河村 小百合 (株)日本総合研究所調査部主席研究員

喜多 恒雄 (株)日本経済新聞社代表取締役会長

木村 旬 (株)毎日新聞社論説委員

権丈 英子 亜細亜大学副学長・経済学部教授

小林 慶一郎 東京財団政策研究所研究主幹・慶應義塾大学経済学部客員教授

小林 毅 (株)フジテレビジョン取締役

進藤 孝生 日本製鉄(株)代表取締役会長

末澤 豪謙 SMBC日興証券(株)金融経済調査部部長金融財政アナリスト

竹中 ナミ (社福)プロップ・ステーション理事長

田近 栄治 一橋大学名誉教授

伊達 美和子 森トラスト(株)代表取締役社長

田中 里沙 事業構想大学院大学学長・(株)宣伝会議取締役

土居 丈朗 慶應義塾大学経済学部教授

冨田 俊基 (株)野村資本市場研究所客員研究員

冨山 和彦 (株)経営共創基盤代表取締役CEO

平野 信行 (株)三菱UFJフィナンシャル・グループ 取締役執行役会長

広瀬 道明 東京ガス(株)取締役会長

別所 俊一郎 東京大学大学院経済学研究科准教授

堀 真奈美 東海大学健康学部長・健康学部健康マネジメント学科教授

神子田 章博 日本放送協会解説主幹

村岡 彰敏 (株)読売新聞東京本社代表取締役副社長

横田 響子 (株)コラボラボ代表取締役・お茶の水女子大学客員准教授

吉川 洋 立正大学長

◎は分科会長、○は会長代理 



令和2年7月2日

財政制度等審議会会長 榊原 定征

今後の財政運営について 新型コロナウイルス感染症の影響により、本年に入ってからの財政 制度分科会は二回の開催に留まり、建議の策定が困難な状況となっ た。しかしながら、今後の財政運営に対する国民の関心も高まってい ることから、財政制度分科会における議論を踏まえ、今後の財政運営 に関する見解を示すこととしたい。 当面の財政運営にあたっては、新型コロナウイルス感染症拡大への 対応について、国民の生命と経済社会を守り、不安を解消していくこ とが最優先である。令和二年度第二次補正予算も成立した中、まずは これまでの累次の措置を適正かつ速やかに実行するとともに、執行状 況を把握し、事後的に効果を検証していくことが重要である。また、 今般の感染症拡大への対応においても、将来世代に対して恥ずること のない歳出を旨とすべきであり、機動的な対応は、適時かつ的を絞 り、一時的なものとすることが大原則であることを忘れてはならな い。なお、予備費については、状況の推移を注視し、必要に応じて適 切な執行を図りつつ、財政民主主義の精神に照らし、十全の説明責任 を果たすべきである。 感染症の収束のタイミングは見定めがたいものの、今後は、経済再 生と財政健全化の両立はますます重い課題となる。 感染症の拡大が経済社会の不可逆的な変化をもたらすことは確実で ある。デジタル化の遅れ等、既存の制度や仕組みの脆弱な側面も明ら かになった。経済再生と財政健全化を同時に果たしていくためには、 過去の対応の教訓を踏まえつつ、ポストコロナの経済社会の変化を見 据え、これまで以上にワイズスペンディング・選択と集中を徹底しつ 資料3 - 2 - つ、経済財政一体の改革を進めていく必要がある。その際、平時は民 間の創意工夫や自由闊達な事業活動こそが経済の原動力であることを 肝に銘じ、過度な政府の支援が、現状の維持・固定化を通じ、かえっ て今後の成長の足枷となることは厳に避けるべきである。 他方、感染症の拡大を経ても変わらぬ課題が、少子高齢化と現役世 代の減少である。2022 年には団塊の世代が後期高齢者となり始めた 後、後期高齢者数は高止まりを続ける。社会保障の主な支え手となる 現役世代についても、既に足元で大規模な減少が始まっている。この ような中において、現行制度では、社会保障給付費が大幅に増加し、 現役世代の負担は大きく増加する。限られた資源の中で、真に国民が 必要とするサービスに重点化しつつ、社会保障制度の給付と負担のア ンバランスを正し、制度の持続可能性を確保することは引き続き待っ たなしの課題である。これまで進められてきた取組を含め、社会保障 制度の改革をいささかも後退させることなく、着実に進めていく必要 がある。 今般のような感染症の拡大を含め、経済危機、大規模な自然災害な どの事態はいつ起こっても不思議ではない。平時に財政健全化を進め ておくことの重要性が再確認されたと言えよう。万全の機動的対応も 平時の健全化努力があってこそ可能となる。当初予算で見れば、新規 国債発行額は現政権において8年連続で縮減されていたが、令和二年 度補正後予算の歳出は 160 兆円を超え、一般会計の基礎的財政収支の 赤字は 9.2 兆円から 66.1 兆円に拡大、新規国債発行額も 90 兆円を上 回り、令和二年度末の公債残高は現時点で 964 兆円となる見込みであ り、一層悪化した財政から目をそらしてはならない。低金利環境の継 続を当然視せず、経済再生と財政健全化の両立に向け、歳出と歳入の 両面から不断に取組んでいくことが今後も必要であり、国民にもその 旨を訴えていくべきである。 財政制度分科会においては、その責務を果たすべく、今後も財政健 全化に向けた議論を進めていく所存である。