時事
この数か月、ことあれば「円高!」と円高になるという論調を繰り広げたエコノミストたち。下記のロイターのコラムも同じですが、エコノミストのいうことは「すべてポジショントーク」ですから、自身の所属企業、団体の利益、あるいは投資家の利益になることしか言いませんので、その話がどうこうより、逆張りに考え、それが論理的かどうかを考えなければ先々のことは読めません。早い話が、エコノミストという職業は詐欺師です(笑)。
円高になるということはドル安になります。ユーロやポンド、人民元など、ほかにも国際通貨はありますが、世界は円とドルは表裏一体と考えていますから、円高イコール、ドル安なのです。しかし、トランプ大統領だから荒れると考えられているアメリカといえど、大統領選の年にドルが安くなれば多くの経済指標が傷つきますから、通常、大統領選の年はドル高。強いドル、強い株価を背景に、一番大事にされるのが失業率です。コロナで棄損した失業率も回復基調に乗っているように見えますから、今年はドル高で推移します。すなわち、米株式市場への投資、日本の輸出企業への投資はOK。
コラム:米金利低迷でもドル円が上昇する理由、その鍵を探る=亀岡裕次氏
大和アセットマネジメント チーフ為替ストラテジスト 亀岡裕次
[東京 14日] - 米国の金利低下がドル安要因となってきた。米2年国債利回りは一時、5月安値の0.105%に迫る水準に低下し、10年国債利回りも3月以来の低水準である0.50%台まで低下した。
ただ、最近の日米金利差縮小は大幅なものではない。日米10年国債金利差は、年初の1.93%から4月初めには0.63%へと1.30%幅も縮小したのに対し、4月初めから8月4日では0.50%へと0.13%幅しか縮小していない。日米金利差は低水準だが、縮小は緩やかになっており、ドル安・円高圧力が大きいとは考えにくい。
<ドル安に作用してきた米実質金利低下>
しかし、名目金利から実質金利に目を転じると、様相が一変する。米国の名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は、インフレ連動国債利回りで見る限り、顕著に低下している。10年の日米実質金利差(日米インフレ連動国債金利差)は、年初の0.36%から4月初めにマイナス0.41%へと0.77%幅縮小したのに続き、4月初めから8月6日にはマイナス1.06%へと0.65%幅縮小したのだ。
為替には、名目金利だけでなく実質金利の動向も影響する。国際的な価格競争力を考えた場合、インフレ率が相対的に高い国の通貨ほど減価しやすいので、期待インフレ率が高いことは通貨にとってマイナス要因となる。
したがって、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利が他国に比べて相対的に上昇していれば通貨は増価しやすく、逆に低下していれば減価しやすいはずである。前述の通り、最近の日米の名目金利差縮小は小幅であるものの、実質金利差縮小は大幅であるので、ドル円にはそれなりの下落圧力がかかっていると考えるべきだろう。
では、なぜ米国の実質金利が低下しているかといえば、それは米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和政策によるところが大きいだろう。FRBは、少なくとも2022年末まで現行の低金利政策を継続する見通しを示すとともに、資産買い入れや貸出などの量的緩和を行っている。こうした政策が、名目金利を低位に抑え込む一方で、期待インフレ率を押し上げ、実質金利を低下させる要因となっている。
<米実質金利の低下が続きにくい理由>
ただ、新型コロナウイルスの影響で急増した資金需要に対応したFRBの緊急的な流動性供給は鈍化し、米国債や住宅ローン担保証券(MBS)などの資産買い入れによる安定的な量的緩和へ変化している。量的緩和ペースが緩やかとなることで、実質金利の低下圧力は小さくなる可能性がある。
また、米国の期待インフレ率を示す10年のブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は1.65%まで上昇している。期待インフレ率が高まり、現実のインフレ率も高まり始めると、いずれは中央銀行が金融緩和を弱めるとの期待が強まり、名目金利と実質金利が反発しやすくなる。
実際、今週発表された米国の生産者物価や消費者物価が市場予想を上回ったことにより、名目金利と実質金利は反発した。米国の景気回復が進むまでは、実質金利は大幅には上昇しにくいだろうが、すでに低下が進みにくくなり、金利面のドル安圧力が強まりにくくなっている可能性はある。
<リスクオン・オフと為替を左右する経済指標>
これまでは、実質金利低下によるドル安圧力が働くなかでも、ドル円の下落は限定的だった。なぜなら、リスクオンの円安圧力が働いていたからだ。例えば、今年5月から7月にかけてドル実効為替の下落(ドル安)が進んだが、ドル円は7月中旬までは5月上旬の安値106円を下回ることはなかった。
これは、クロス円の上昇にあるようにリスクオンの円安圧力が働いたからであり、その背景には経済指標の改善があった。ドル円が6月上旬に110円近くまで上昇した背景にも、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の減産期待による原油価格上昇のほか、5月米非農業部門雇用者数の市場予想を超える増加があった。
経済指標の強弱はリスクオン・オフと為替を左右しやすい。3月下旬から4月にかけては、世界的に株価は上昇したものの、リスクオンの円安とはならず、ドル安によりドル円は下落した。その原因には、FRBのドル供給によるドル需給緩和や米金利低下のほかに、米経済指標の弱さがあった。市場予想と比べた経済指標の強弱を示すエコノミック・サプライズ指数(ESI)は、米国もユーロ圏も低下していたため、リスクオンの円安が強まらず、ドル安が優勢となったのだ。
一方、5月以降は、米国やユーロ圏のESIが上昇に転じ、景気回復期待が高まったため、リスクオンの円安が強まり、ドル安圧力があってもドル円が下落しなかった。最近は、米経済指標が予想に比べて弱い結果となるケースも出てきたため、米国のESIは上昇が止まりつつある。7月下旬にドル円が下落したのも、米経済指標の弱さが原因だった。ただ、7月の非農業部門雇用者数が市場予想を上回ったことなどから、ドル円は反発した。
<経済指標の堅調維持でリスクオンの円安基調か>
ときには新型コロナ感染第2波の影響が反映されて米経済指標が市場予想を下回り、リスクオフの円高に傾くケースもあるだろうが、おそらくは一時的かつ限定的だろう。中長期的には米国やユーロ圏の経済指標が堅調さを保ち、リスクオンの円安に支えられてクロス円もドル円も上昇傾向となるのではないか。
米国では新型コロナの新規感染者数が減少しつつあるので、感染拡大を懸念した米国売りのドル安が緩和し、リスクオン局面でドル安より円安が優勢となりやすいはずだ。たとえ米実質金利が上昇しなくても、ドル円が上昇基調となる可能性は十分にあると考えられる。
(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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