予算

先日も書いた予算の話を世間的に分かりやすく書いてみます。事業費総額73兆円(財政支出40兆円)のコロナ経済対策がまとまりました。一般的な予算は年明けの通常国会で決まります。財政支出40兆円の内訳は、コロナ拡大防止策6兆円、ポストコロナ経済構造転換18兆円、国土強靭化6兆円、予備費10兆円です。

国民が「知る権利」を代弁していると自負するマスコミ報道を見てみましょう。大手新聞社の社説をみればわかります。 朝日「追加経済対策 財政規律を壊すのか」 毎日「コロナと追加経済対策 規模で不安は解消されぬ」 読売「追加経済対策 効果的支出で感染拡大抑えよ」 日経「経済対策の規模が膨らみすぎてないか」 産経「追加経済対策 実効性高めコロナ克服を」 東京「追加経済対策 財源への目配り足りぬ」。 この中で、日経、朝日、毎日、東京は今回の経済対策を酷評しています。 日経では、タイトルが「経済対策の規模が膨らみすぎてない」。文中でも、「無駄やばらまきを排除できたとは言い難い」、「最たる例は「国土強靱(きょうじん)化」と銘打った防災・減災事業だろう」とし、最後に「競うべきは「賢い支出」であって、経済対策の規模ではない。」と、前回バカにした内容が書かれています。 朝日はタイトルが「追加経済対策 財政規律を壊すのか」。社説以外の記事でも、今回の経済対策によりと大量の国債発行となることについて、「新型コロナ前から先進国で最悪レベルだった財政状況は一層の悪化が避けられない」と書いています。 毎日は「いたずらに規模を押し上げると、将来へのつけ回しが増えるばかりだ。」と笑うしかないバカさを呈し、 東京も「国債の増発が国の財政赤字を一層膨張させ、借金を次世代につけ回ししていることは確かだ」と、自らの無知をさらけ出しています。

 基本的な部分がわかっていない 産経、読売は比較的中立的に書いてあるものの、だからといって今回の経済対策を評価するという立場ではありません。 総じて見ると、(1)規模が大きすぎること(2)財政赤字で将来世代への付け回しの2点を問題にしています。 日経では、(1)の批判について、防災・減災事業(国土強靱化)をやり玉にあげ、「本当に必要な事業を選別したようにはみえない」としています。 公共事業が、コストベネフィット分析による費用便益比の大小という客観分析によって採択されることを日経新聞は知っているのでしょうか?多分、『経済新聞‼』を謳いながら、それすら知らない経済音痴なんでしょう。 もし知っていれば、これまで割引率が15年程度前に設定された4%となっていることもわかっていたはずです。割引率は基本的に金利水準に連動するので、4%の水準は現在から見れば異様に高すぎます。 公共投資は4%以上収益がないと、採択されなくなっています。逆にいえば、必要な公共投資は採択されずに、過小投資になっていたと言い換えることができます。もっと平たく言えば、政府がやらなければならない公共工事をやっていなかったところを是正しただけと言えます。現在、4%という割引率の見直しが政府内で検討されていて、 こうしたことをきちんと取材していれば、防災・減災事業が補正予算に含まれてもいいと『経済新聞』ならわかるはずです。これまでの過小な公共投資を少しでも補うという意味においてでも重要案件です。 それにしてもひどいのが、日経社説の最後の「競うべきは「賢い支出」であって、経済対策の規模ではない」という書き方です。 これでは、マクロ経済政策の基本がわかっていないと言わざるを得ません。

 「将来世代の負担増」も間違い まず、潜在GDPと実際のGDPの差であるGDPギャップは、内閣府の推計でも30兆円超もあります。 これを放置すると、半年後以降の失業率が上昇します。おそらく失業率2%程度上昇、失業者で見れば120万人程度が増える計算になります。それに伴う自殺者は6000人程度増えるのです!!。それはコロナによる死者2300人の2倍以上!!。 マクロ経済政策の究極の目標は雇用の確保です。それさえできれば自殺者の増加を抑えることができます。 以上のことから、GDPギャップを経済対策の有効需要で埋めないと後で失業が増え、結果として命が失われるので、経済対策はまず規模というのが、マクロ経済学からは正解になります。日経社説の他、規模が問題ということを書いた記者は、マクロ経済学のイロハのイから学びなおしなさい。 ちなみに、今回の経済対策による支出が直接的に実質GDPを下支え・押上げする効果は、内閣府試算によれば3.6%程度で、これは、財政支出から、予備費、融資などを除いた真水ベースで今回の経済対策が20兆円程度というわけです。予備費を含めれば、GDPギャップのかなりの程度は埋められるので、マクロ経済政策としてはまあまあの出来といっていいでしょう。 こうしたことから、マクロ経済音痴な日経社説などで「規模が大きすぎる」と批判されたのは、今回の経済対策は妥当な規模だと評価されたようなものだと読者は読み解けばいいのです。書いてあることは間違いばかりですから‟深読み”が必要です(笑)。

明日に続く