時事

下記はウォールストリート・ジャーナルの記事です。記事から読み取れる日本の教訓は2つ。一つ目は、中央銀行の独立性とは「手段の独立」であって「目的の独立」ではなく、ホワイトハウスが再三利下げを発言した結果、FRBの利上げというバカげた政策が利下げという金融緩和に転換されるという事。もう一つが、黒田宣言以来、6年が経っているのに未だ2%のインフレターゲットも達成できずにいる日銀の怠慢を放置すべきでないという事。黒田さんを呼び出し引導を渡し日銀法改正すべきです。更に下段にはブルームバーグの記事で、「金融緩和で増税?」という再びバカにされたことが背景の記事の内容です。





米利下げ観測、貿易摩擦で拍車 FRB議長も示唆

2019 年 6 月 5 日 04:49 JST 更新

 米連邦準備制度理事会(FRB)当局者は最近、エスカレートする貿易摩擦の行方を注視している。ジェローム・パウエル議長は4日、景気見通しが悪化すれば利下げで対応する可能性があるとの考えをほのめかした。

 パウエル氏は、利下げが必要になると考えているかどうかは明らかにせず、「こうした貿易問題がいつどのように解決するかは分からない」と語った。

 ドナルド・トランプ米大統領は関税を交渉のツールとして多用すると同時に、FRBに対しては利下げを求めている。エコノミストはトランプ政権の関税措置は経済の不透明感を高め、FRBによる年内利下げを後押しする要因になると予想している。

 大方のエコノミストはこれまでのところ、FRBが6月18・19日の会合で措置を講じるとはみていない。その理由の一つは、FRBは世界の指導者たちが貿易摩擦を緩和できるか見届けたいと考えているとみられることだ。特に、今月は日本で20カ国・地域(G20)首脳会議が開催される。

 バークレイズのエコノミストは現在、FRBが9月に0.5ポイント利下げし、12月にはさらに0.25ポイント利下げすると予想している。従来は、2020年末まで政策金利が据え置かれると予想していた。

 JPモルガン・チェースのエコノミストも、たとえ米国がメキシコとの貿易摩擦の長期化を回避したとしても、9月と12月にそれぞれ0.25ポイントずつの利下げが実施されると予想している。

 モルガン・スタンレーのチーフエコノミスト、チェタン・アーヤ氏は2日付のリポートで、貿易を巡る緊張が続けば「3四半期後にはリセッション(景気後退)入りする恐れがある」と指摘。最近の投資家との会合では、「市場は貿易摩擦の影響を過小評価しているとの感触が裏付けられた」と述べた。

 調査会社イーブンフロー・マクロのマーク・スマーリン氏は5月30日付の顧客向けリポートで、米国債利回りの低下は「FRB(の政策)がきつすぎる」ことを示唆していると述べた。また、これまで9月としていた利下げ時期の予想を7月に前倒しした。

 ドナルド・トランプ米大統領は先週、中米からの不法移民流入を阻止するよう迫るため、メキシコに関税を課すと表明した。アナリストはこれに対する国債市場の反応を織り込み、予想を見直している。

 米国債市場からは、従来予想以上に大幅に景気が減速し、リセッション(景気後退)のリスクが高まるとの見方がうかがわれる。長期債利回りが低下し、償還期限がより短い米国債の利回りを下回る逆イールド現象が起きているが、イールドカーブの逆転は利下げやリセッションの前にしばしば発生する傾向がある。

 今のところ、利下げすべきと明言しているFRB当局者はセントルイス地区連銀のジェームズ・ブラード総裁1人だけだ。同総裁は、逆イールドのほか、トランプ政権が早々に貿易合意を達成する見通しが変化したとみられることから、利下げが正当化されるとの見解を示した。

 ブラード氏は3日、シカゴでの講演後に記者団に対し、「世界の貿易を取り巻く状況は悪化している」と語った。

さらに、逆イールドに関して「こうした環境では金融政策が過度に引き締め的なように見える」とし、「たいていの場合、米経済見通しに悪い兆候となっていた」と述べた。

 トランプ氏がメキシコに関税を課す構えを示して以降、大半のFRB当局者は公の場で発言していない。リチャード・クラリダ副議長はトランプ氏の発表前、米国の見通しは依然として良好なようだとしながらも、必要とあれば利下げを支持する可能性をにじませていた。




各国中銀は行動の構え、世界経済に警戒信号-日本が最大のジレンマか

Enda Curran

2019年6月5日 14:54 JST

米金融当局は年内2回利下げか、他国も一段の緩和へ-JPモルガン

需要下支えにG20全般の広範囲な政策協調が至急必要-HSBC

世界経済が困難な状況に向かう中、各国・地域の中央銀行はかつて自由に使えた火力が欠如していても、率先して対応する役割を再び果たそうとしている。

  オーストラリア準備銀行(中央銀行)は4日、約3年ぶりに利下げを実施し、インド中銀も6日にこれ追随する形で緩和に動く可能性が高い。各国・地域の金融当局は、弱い成長とインフレを反転させようと再度てこ入れを目指す構えだ。

I  米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、必要なら利下げの可能性を閉ざさない姿勢を示唆した。サマーズ元米財務長官はツイッターで、リセッション(景気後退)リスクを遠ざけるために金融当局が今後数カ月で少なくとも0.5ポイント利下げすべきだと指摘した。欧州中央銀行(ECB)当局者らは6日の政策委員会で、新たな条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)について、ユーロ圏の銀行にとって有利な条件で合意する見込み。

  アジア株式相場はパウエルFRB議長発言の後に上昇。日本株が上昇を主導し、TOPIXは一時2%余りの大幅高となった。

  世界の金融政策はわずか数カ月前よりも緩和に転じつつある。外交問題評議会(CFR)の指数によると、現在の金融政策は2014年以降で最も緩和状態にあるが、JPモルガン・チェースは年内2回の利下げが見込まれる米国を筆頭に、先進国・地域の指標金利の平均が今よりも緩和的な水準で年末を迎えると予想している。

  今週末に福岡市で開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席する各国・地域の当局者はこうした見通しに向き合うことになる。

  元ホワイトハウス当局者で、現在は戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアバイスプレジデントを務めるマシュー・グッドマン氏は「世界経済成長に関するムードは前回のG20会合当時よりも際だって暗くなる公算が大きい。これを受けて主要国の財務省と中銀には、新たな刺激策を求める圧力がかかる可能性がある」と述べた。

  世界銀行は貿易が金融危機以来の低い伸びにとどまるとして、19年の世界経済成長率予想を下方修正した。

  各国・地域の当局者は金融政策が以前ほどの効力を持たないことを認識しつつ今回の会議に臨む。バンク・オブ・アメリカ(BofA)のアナリストの試算によると、08年の金融危機以来、各国・地域の中銀は計700回余り利下げし、総額12兆ドル(約1300兆円)相当の金融資産を買い入れた。

  米金融当局は現在、政策金利のフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を2.25ー2.5%としており、ゼロまで利下げする余地はあまり残されていない。前回の景気後退への対応で当局は計5ポイント利下げしていた。その後米当局は少なくとも利上げしたが、ECBと日本銀行は危機対応の利下げから方向転換には至っておらず、政策金利はゼロを下回る水準にとどまっている。

  最大のジレンマに見舞われそうなのはG20開催国の日本だ。5カ月連続で輸出が減少した上、予定される消費増税がリセッションを招きかねないとの警戒感もあることから、日銀の黒田東彦総裁は再び対応を迫られている。

  HSBCホールディングスのアジア経済調査共同責任者、フレデリック・ニューマン氏(香港在勤)は、「景気指標が赤信号を点滅し始めた中、需要を支えるためG20全般のより広範囲な政策協調が至急必要とされる」と指摘。「その一方で当局者らは、各国経済の緩衝材が薄くなったという現実に直面している」と付け加えた。