時事
選挙が終わりました。この参院選を総括すると、「国民は安定を選択した」ということになるでしょう。自民57、公明14、立民17、国民6、共産7、維新10、社民1、れ新2、N国1、その他9と、自公で改選議席の過半数を確保する結果となっっています。
今年秋の消費増税を控えた中で、与党は一定の勝利を収めたと言えます。それを後押ししたのは、野党の体たらくです。大阪での維新の躍進や、れいわ新選組の健闘は、与党に対する有効な批判勢力として、この両者くらいしか機能しなかったことを示しています。
選挙期間中、政府が韓国に対して示した輸出規制見直しも、圧倒的な反韓の国民世論受けて与党を利しました。これまで日本政府が対外的に言うべきことをしっかり言わないことに歯がゆい思いをしてきた保守層は多く、安倍政権は毅然とした態度をとったと国民の目に映ったのでしょう。NHKの出口調査によれば、消費増税に賛成する人が43%、反対する人が57%でした。それでも与党が勝利したのは、韓国・文在寅政権の狼狽ぶりが安倍政権にとってうまく作用したからです。一般的に、外交は票につながらないものとされていますが、事、韓国に限っては別と言えます。左巻きメディアにとっては、野党が惨敗したことよりショックが大きいと思います。
一方の野党は、年金を争点にしたかったでしょうが、やはりNHKの出口調査によれば、年金問題を「大いに・ある程度考慮した」人は46%、「あまり・まったく考慮せず」は53%と不発に終わりました。野党の中では立憲民主党と日本維新の会が議席を伸ばしましたが、国民民主党は伸び悩んだ結果です。
参院選後の政局はどうなるのか。消費税を含む経済政策や、内政や外交における課題は何だろうか考えます。
まず政治日程を見ると、選挙後、速やかに臨時国会が開催されます。争点は憲法改正に向けた国民投票法の改正です。これは先の国会ですでに提出されていたにもかかわらず、野党が審議に応じず成立しなかったため、その再挑戦になります。この参院選の結果が、成立を後押しするでしょう。
ただ、公明党は真の改憲勢力でなく、今や与党内や党ですから邪魔するばかりでしょうが、創価学会の会員激減など足元がふらついているので攻めどころは沢山あります。憲法改正に関していえば、今回の選挙結果は「う~ん、微妙」という感じです。改憲に積極的な維新の躍進もありますが、憲法改正を見据えた国会内での駆け引きが、どれくらい活発化するかにかかっています。
自民党は、国民民主党に対する水面下の働き掛け、あからさまに引き抜きを仕掛けるはずです。表面的には改憲勢力で参院の3分の2を確保するのは難しいでしょうが、せめて臨時国会での国民投票法改正は、与党としては通したいところでしょう。
その次に待っているのは、憲法改正のスケジュール決めです。安倍総理が描く理想像は、2020年1月から6月までの通常国会で憲法改正発議をすることです。ここで、衆参両院で3分の2の勢力が必要になってくるのですが、公明党が必ずしも改憲勢力といえない以上、このハードルはかなり高く、ここでもやはり、国民民主党がカギを握ってくるでしょう。もともと、小池さんが始めた希望の党は改憲へ向けた党でした。そこで「足切り」をしたのが改憲へ危機感を持っていた朝日新聞を中心とした護憲メディアに足元をすくわれ、本来、小池さんに切られた残党が枝野氏を中心に立憲民主党を作ったのですから、立民へ移らなかった国民民主の面々は基本的には改憲勢力です。
首尾良く6月までに発議ができれば、国民に対する周知期間は初回の憲法改正においては6ヵ月と定められているので、国民投票は年内の2020年12月までに行われることになります。2020年のオリンピック・パラリンピックは7-8月なので、その後に憲法改正の国民投票が行われることになります。現在の衆院議員の任期は2021年10月までですから、もしそれまでに衆議院が解散されていなければ、国民投票と衆院選の「ダブル投票」になる可能性も高いと考えるべきです。
こうした政治日程に応じる形で、自民党の党内人事や閣僚人事も行われます。
麻生財務相・副総理と菅官房長官は留任確実。そもそも麻生財務相は、憲法改正と消費増税が持論であり、今回の参院選で安倍総理は全面的に麻生財務相の意見に従っています。党幹事長は二階氏の留任か岸田氏の昇格と見られていましたが、岸田派の落選続きで岸田氏の目は有りません。
既に、二階氏は昨日の選挙後に「安倍4選もあり得る」と発言しています。ただしポスト安倍について安倍総理は、菅氏と岸田氏らを競わせながら自己の影響力を高めていくつもりのようで、これは時の権力の常道でしょう。
さて、次に経済政策ですが、10月からの10%への消費増税は決まりです。ただし、その時の世界経済情勢を考えると、これまでにも繰り返してきた通り、増税は経済政策としては悪手中の悪手です。
これは、世界の著名なエコノミストたちの「総意」ともいえる共通認識で、ポール・クルーグマン(ニューヨーク市立大学、経済学者)は「日本経済は消費税10%で完全に終わる」、ローレンス・サマーズ(元米財務長官)は「2014年の増税も失敗した。今回も同じだ」、オリヴィエ・ブランシャール(元IMFチーフエコノミスト)は「消費増税は無期限延期すべき」、アデア・ターナー(英金融サービス機構元長官)は「消費増税を延期し、大幅な財政赤字を出し続けても問題ない」と、軒並み手厳しく、増税後に日本の経済指数が悪化すると世界中から袋叩き似合い麻生さん、黒田さんの首を飛ばすくらいでは済まなくなりますが、これは昨年から思っていたことですが、とことん緊縮財政主義の麻生さんと真逆な安倍総理の関係で、麻生さんを切り、デフレの完全脱却を目指すなら、安倍総理が麻生さんを切るのではなく、麻生さん自ら辞任すると言わせねばなりません。安倍総理悲願の改憲をするには、麻生派は重要な役割を担うからです。今回の消費税増税が失敗し国際発言力を問われる結果となれば、麻生さんは副総理のみ留任し財務大臣は辞任となるんじゃないでしょうか。
国際経済状況は、米中貿易戦争による中国経済の成長鈍化、10月末に予定されるブレグジットによるイギリスやEU経済の混乱、米イラン間の緊張による偶発的な中東紛争、日韓間の関係悪化など、「リーマンショック級」の不安材料が目白押しです。そういう世界経済のリスク要因が多数あると分かっている時に、わざわざ日本が、さらに波乱の要因となるような消費増税を実行する必要はないのです。
しかも、日本が財政破綻したり日本国債の信用が悪化する確率は無視できるほど小さいものです。今や、小売店でも軽減税率に向けたシステム対応が進行しているので、消費増税の延期は実務上困難。まして、消費税増税は民主党政権時に法律化されていますから、辞めるには新たな法律が必要になり、自民税調のバカどもを説き伏せるのも困難です。そこで、次善の策です!。消費増税後、「全品目を対象とする軽減税率」に備えることも検討しておくべきです。教育無償化の財源が不足すると批判する識者もいますが財源は山盛りあります。
世界経済の先行きが不透明となる中、欧米でも金融政策は緩和傾向となるでしょう。日本も負けずに緩和を続けなければ、民主党政権時の「悪夢の円高」の二の舞になってしまいますし、財務省が阻止に動いても、今の財務省に為替介入する勇気のある官僚などいません。為替をいじるとなれば国を背負ってアメリカと対峙せねばなりませんから、そんな腹の据わった財務官僚などいないのです。せいぜい、裏でコソコソやる程度です。
米中貿易戦争やブレグジットは、日本にはいかんともしがく、中東に関しては、米イランの仲介役として日本は世界からも期待されているものの、米国を中心とする有志連合の話も具体的に出ている状況ですから、有志連合に参加すると仲介役は諦めざるを得ないので、ここは安倍総理にひと肌もふた肌も脱いでもらわねばなりません。こういう時に思うのは、菅直人のようなサラリーマン上りでは世界は相手にしてくれない、世界は自由や平等を妄評するものの階級社会だということを忘れてはならないという事です。
中東問題は、まさに日本のエネルギー安全保障です。トランプ大統領は、ツイッターで日本と中国を名指しし「ホルムズ海峡は自国で守れ」と言いました。早速、中国はこれを奇貨として、自国のタンカーを自国で守るという方向で動いていますから、日本も同じように動くべきなのです。これは法改正も必要になるので、与野党間で早急に議論すべきです。日本は、中東、特にイランへの影響力を保持しておきたいので、有志連合への参加ではなく単独警護のほうが国益にかないます。
対外関係では、連日ニュースを賑やかしている韓国の問題があります。いま韓国は相当焦っている状況です。日本は韓国に対する輸出管理見直しを強化し、8月には「キャッチオール規制」の対象外であるホワイト国から除外する予定です。これが韓国経済に短期的、中長期的にどのような影響を与えるのか。日本にも悪影響は出るのか。
ホワイト国から除外されると、輸出品目が包括許可から個別許可になり、客観要件である「需要者確認」について時間がかかるために、許可までに要する時間は、日本政府の裁量次第となるでしょう。事実上の門前払いです。
韓国側の懸念は、どのような品目が個別許可になるかです。経産省がホームページで掲げている懸念の強い貨物(監視品目)は40種類あります。数値制御工作機械、大型発電機、放射線測定器、人造黒鉛、大型トラック、遠心分離機、耐食性各種機器など等々。
これらの品目が、外国ユーザーリストへ間接的に渡るかどうかの審査には、かなりの時間がかかります。ここで言う「外国ユーザーリスト」とは、経済産業省が大量破壊兵器等の開発等への関与が懸念される企業・組織を掲載し公表しているもので、UAE、イラン、北朝鮮、シリア、中国、パキスタンなど13ヵ国の計534社です。
いずれにしても、経産省がどのような品目について個別許可を厳格に行うかについてはまだ全くわからないだけに、韓国企業にとっては不透明な状況が続くこととなり、日本の措置が韓国経済に中長期的な悪影響を及ぼすことになります。
短期的には、「韓国の半導体生産には大した影響がない」とする日本の金融機関系シンクタンクによるレポートも出てきました。すでに台湾などでの海外生産に移行したメーカーもあることから、韓国メーカーの半導体在庫がすぐにも枯渇する可能性は少ないとしています。先日来日したサムスン電子副会長も、「日本がダメなら台湾で」と半導体製造素材のフッ化水素探しに必死だったようですが、台湾などで現地生産されるフッ化水素を「迂回輸入」しようとしても、日本の経産省による最終承認が必要になる事実を確認しガッカリしたようです(笑)。つまり、日本企業が生産する半導体素材については、経済産業省による管理がしっかりと行われているわけです。
この点、「影響はない」というレポートを出した日本の金融機関系シンクタンクは調査不十分であったというより、韓国での利益を確保したMUFJとみずほの情報操作と見るべきです。韓国の半導体メーカーの幹部が東奔西走するくらいなのですから、短期的な影響もあることは目に見えています。実際、韓国政府にも「どのような品目が個別許可対象になるのか」という韓国メーカーからの問い合わせが殺到しているようで、連日大騒ぎです(笑)。
さらに、中長期的な影響はどうかというと、韓国はアジアで唯一のホワイト国でしたが、先端素材を扱う企業にとっては今後、韓国進出のメリットがなくなりましたし、これまでに進出していた企業の韓国撤退もあり得るでしょう。韓国経済にとっては大きな打撃です。
日本企業への悪影響もあり得るますが、生産メーカーへの局地的な打撃はあるものの、懸念された不買運動も散発的であり、日本経済全体への悪影響は限定的になるはずです。
韓国は日本の規制措置を、いわゆる徴用工問題に対する報復と誤解していますが、これは安全保障上重要な、貿易管理措置の見直しなのです。
韓国はEUからもホワイト国認定をされていません。韓国の貿易管理の不備については、韓国自身が日本に説明し、疑惑と懸念を払拭しなければならない立場です。ボールは韓国側にあり、日本としては「次に韓国が何をするのか」をじっくり見定めるべきで、下手に懐柔策を弄する必要は全くありません。
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