時事
下記の記事は日韓関係の記事で、論者はヘリテージ財団というトランプ政権の中核をなすシンクタンクです。要は、日韓協定で決着済みで、その金は韓国政府が使ってしまったんだから、これは韓国内の国内問題だと言っています。ヘリテージ財団の意見は、おおよそそのままトランプ政権の政策となります。日本のマスコミもヘリテージ財団のHPくらい読んでおきなさい。
日韓対立は「文在寅政権に責任」 韓国研究の米権威
2019年8月9日
日韓対立が国際的波紋を広げるなかで米国有数の韓国研究学者が7日、今回の対立では韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が国内政治のために対外政策を政治利用し、対日関係を犠牲にする形にしたのだとする見解を発表した。
同学者は文政権の動きは国交正常化などを取り決めた日韓基本条約に違反するとして「文大統領が国際条約の順守を怠ったことの責任」を批判するとも述べた。(ワシントン駐在客員特派員 古森義久)
ワシントンの大手研究機関「ヘリテージ財団」が7日に開いた「日韓貿易紛争」と題する討論会での最初の論者として登壇した「外交問題評議会」の上級研究員で「米韓政策研究部長」のスコット・スナイダー氏が文在寅大統領を批判するこの見解を述べた。同氏は1990年代からスタンフォード大学やアジア財団で朝鮮半島情勢の研究を続けてきた著名な学者で、韓国や米韓関係の研究では全米有数の権威とされる。
スナイダー氏は今回の日韓対立の原因について「文大統領が慰安婦問題での日韓外相合意に基づく財団を解散し、さらに元徴用工問題での韓国最高裁の判決を放置したことが対日政策を誤らせた」と述べ、日韓対立の原因はまず文政権にあるとの見解を示した。
同氏はさらに文大統領の措置について「韓国の国内政治のために対外政策、対日政策を犠牲にする形で政治利用したが、大統領としては国内、国外の両政策の適切なバランスをとるべきであり、まず慰安婦問題を日韓関係の最前面におくことで自分自身を箱詰めにしてしまった」とも批判した。
いわゆる元徴用工に関する判決についてはスナイダー氏は「三権分立とはいえ、行政トップの大統領には1965年の日韓基本条約を含めて国際条約を守ることや対外政策を含めての総合的な国益を守ることの特別な責任がある」とも述べ、文大統領はその責任を果たさず、外交への十分な配慮なしに対日関係を韓国内の民族主義的感情で押し流すことを許した、という批判を明確にした。
同氏は韓国最高裁の判決による日本企業からの補償金の取り立てについては「韓国の民間が寄付をしてその資金にあてるという案が一時出たが、私はそれに賛成する」とも語り、文大統領の政治的な計算についても「元徴用工などの問題を使って日本側に過去の諸問題での反省を一気に強いることを狙ったようだが、この考えは明らかにミステークだ。日本側を強制的に追い詰め、謝罪などを強いても誠意ある反応が得られないのは明白だからだ」とも論評した。
さて、昨日の続きです。ヴィクセルが論じたように、マクロ経済の安定化のためには中央銀行による適切な金利調整が必要不可欠だとすれば、それはこれまで、どのような制度によって担保されると考えられてきたのでしょう。
古典派経済学者たちについていえば、彼らは概ね、信用貨幣に金兌換を課すこと、すなわち金本位制こそがその必要条件と考えていました。というのは、もし中央銀行の低金利政策によって貨幣が過剰に発行された場合には、インフレや為替下落が生じ、中央銀行が保有する金準備の流出が生じるので、中央銀行はそれを阻止するために金利を引き上げざるを得なくなると考えられたためです。こうした19世紀的原理は、後にケインズによって「金本位制のゲームのルール」と名付けられています。
ケインズが『貨幣改革論』(1923年)で批判したように、金本位制には金本位制なりの大きな欠陥があります。それは、金準備という「足かせ」に縛られて貨幣供給が不足しがちになり、デフレが生じがちになるという点です。しかし、リカードウやソーントンの時代のように、中央銀行の役割も明確ではなく、また真正手形主義による野放図なインフレのリスクが明らかな状況では、その足かせの方が「まだまし」と考えられたのです。
1971年のニクソン・ショック、すなわちドルと金の兌換停止、さらには世界的固定為替相場制度としてのブレトン・ウッズ体制の崩壊によって、世界は最終的にMMT論者のいう「制約なき不換紙幣(fiat money)」の体制に移行しました。各国は、もはや金融政策を為替平価維持のために割り当てる必要はなくなります。そこで、政策運営の基本枠組みとして主要中央銀行が採用し始めたのが、「中央銀行がマネー・サプライを安定化させるように政策金利を調整していく」という、マネタリズム由来のマネタリー・ターゲティングでした。
しかし、このマネタリー・ターゲティングは、いくつかの理由により、1990年代半ば以降は徐々にすたれていきます。その後に主流になったのは、「中央銀行がテーラー・ルール的な金利調整ルールを用いてインフレ目標を達成する」という、インフレ・ターゲティングです。このテーラー・ルールとは、「中央銀行がインフレ率と産出ギャップを両睨みしながら政策金利を調整する」というルールで、こうした政策論の理論的裏付けとなっているのが、MMT派が批判してやまない「新しい貨幣的合意(NMC)」です。しかしそれは、ヴィクセルが提起した課題に対する、現代の「正統派」マクロ経済学からの現時点での回答なのです。
以上までが示すように、正統派とMMT派とは、基本的に水と油にように混じり合わないマクロ経済思考の上に構築されています。しかし、クルーグマンやブランシャールなどが典型ですが、反緊縮正統派の側からは時々「少なくともゼロ金利であるうちはMMTと共闘できる」といった発言も聞こえてきます。それはなぜかといえば、1990年代末以降の日本やリーマン・ショック後の各国のように、金融政策が政策金利の下限に直面した状況では、「金利調整を通じたマクロ経済の安定化」というNMCの根本戦略が実行不可能になるからです。反緊縮正統派の多くが、金融政策と財政政策との何らかの意味での政策協調を訴えているのはそのためです。反緊縮正統派が唱えるその政策協調は、財政政策が主導し金融政策がそれに同調するというMMTの政策戦略と、少なくとも結果においては一致します。
しかし、インフレ目標が達成されてゼロ金利の世界を抜け出そうとしたとたんに、両者は再び元の対立関係に戻ります。MMTは当然、これまで通り、中央銀行による金利調整の無効性を訴え、マクロ安定化の役割をすべて財政政策に担わせようとするでしょう。それがMMTの基本的な論理だからです。しかし、正統派の多くは当然ながら、「中央銀行による金利調整もなしに財政政策だけに頼るのでは、マクロ経済の安定化など到底実現できるはずはない」と考えます。それは、ヴィクセル的な不均衡を自ら引き寄せるようなものだからです。浜田宏一・内閣参与がその論考 Does Japan Vindicate Modern Monetary Theory?で述べているように、それはまさに最悪の選択(the worst thing to do)なのですが、日本経済新聞は浜田参与の英語が読めないのか「浜田参与も同意」と真逆の記事を出しました。悪意か無知かは知りませんが、日経のスタンスはMMT論と同調していると見え、その理由は、日系の大手クライアントが金融関係なのでゼロ金利解除を即しているのでしょう。
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