時事
ふるさと納税で泉佐野市と総務省が衝突していた件に結論が出ました。総務省の完敗です。
下記は産経と日経の記事ですが、改めてプロセスを遡るとともに総務省の圧力に屈せず戦った泉佐野市に祝辞を送ります。
総務省は今年の3月22日に、ふるさと納税の収入が大きい大阪府泉佐野市などの自治体に対する特別交付金を減額しました。違法性が高い圧力行使です。
特別交付税は、12月と3月の年2回、自然災害で被害などがあった自治体に交付されます。算定のルールは総務省令で決められてますが、3月20日の省令改正(要は通達。ハッキリ言えば官僚の一存)により、ふるさと納税の寄付金の見込み額から一定の経費を引いた額を地方税収に加えた形で算定するとしたのです。
その結果、泉佐野市は前年同時期に比べて1億9500万円減となったほか、静岡県小山町が7400万円減、和歌山県高野町が2億3300万円減、佐賀県みやき町が2億900万円減となっってしまいました。
この措置の最大の問題点は事後対応、つまり後出しじゃんけんだということです。これは、法治国家ではやってはいけないもので、中国を馬鹿にできない役人のおごりです。
実際問題としても、各自治体は定められたルールの下で交付税を当てにした事業を行っていて、それを事後的にルール変更したら、自治体としても困るでしょうし、表向きは「地方が独自に知恵を絞り」と地方自立を促したところで、総務官僚の腹は「中央が差配する」という時代錯誤そのものだと地方が委縮し、ますます自立から遠のきます。
総務省は、2017年4月1日、ふるさと納税の返礼品競争に歯止めをかけるため、返礼品を「寄付額の3割以下の地場産品」にするよう通知しました。上記の4自治体はこれを上回る返礼品を出していたから、総務省の意趣返しが明らかになり、怒った泉佐野市が総務省を相手取り「国地方係争処理委員会」に提訴しました。泉佐野市と総務省の全面対決となったのです。
そこで総務省は、先の国会にふるさと納税見直しのため地方税法等の改正法案を提出し通過させました。そこでは、総務相は、地方財政審議会の意見を聴いた上で、寄付金の募集を適正に実施する地方団体として、返礼品の返礼割合を3割以下とすることおよび返礼品を地場産品とすることを満たすものを指定するとされてます。つまり、17年4月の通知を守らない地方自治体への寄付金はふるさと納税での税額控除の恩恵を受けられないとしました。この地方税法などの改正案は、3月27日に国会で成立。その内容については、ここでも異議を書きましたが、民主主義プロセスから逸脱した悪法ですが、法として順守するのは当然で、今年4月から各自治体もそのルールに従っています。
それなのに、この年度末の3月になぜ総務省令改正という「後出しじゃんけん」をしてまで、4自治体の特別交付税を減額したのか、決められたルール通りに行政を行う通常の役人感覚からみれば理解不可能で異常です。しかも、石田真敏総務相は「財源配分の均衡を図る観点から行ったもので、過度な返礼品などを贈る自治体へのペナルティーという趣旨ではない」と大臣会見で述べましたが、これは典型的な詭弁であり、そもそも事後ルール変更がペナルティーではないかと前回書いた通りの判断が「国地方係争処理委員会」からなされ、総務省の完敗となったのです。
総務省という省庁が時代にそぐわず、もはや不必要で解散すべきと何度も書いています。現在の大臣の石田氏も旧態依然とした利益誘導型政治家で頭はカラッポ。内閣改造を前に、野田、石田とロクな大臣を指名しなかった安倍総理が誰を指名するのか楽しみです。総務省の官僚の喉元に刃を突き付けるには、外務大臣の河野氏を総務大臣に指名するのがいいと思うのですが…。
ふるさと納税 総務省の“狙いうち”に不当判断
2019年9月2日 産経新聞
ふるさと納税をめぐる大阪府泉佐野市と総務省との対立で「国地方係争処理委員会」は2日、総務省の手法が強引だったと認定した。
総務省は昨年末、ギフト券などで多額の寄付を集めた自治体を問題視したが、泉佐野市は総務省に反抗する形で「地方自治」の名の下に高額品での寄付金集めを続けた。総務省の“狙い撃ち”するかのような対応が、今回は不当だと判断された。
「(泉佐野市の)やり方はひどいと判断している。だからといって、法律的に除外でいいのか」
委員長を務めた富越和厚元東京高裁長官は記者会見で、勧告決定の理由をこう述べた。
最大の焦点だったのは、新制度が始まる前の状況を理由に除外決定をしたことだった。委員会は総務省の対応について、「(違法ではなかった)過去半年間ほどの募集の態様から、ただちに不指定団体の要件とするのは法律の範囲を超える恐れがある」と指摘した。
一方で委員会は、「泉佐野市によるふるさと納税の募集態様が、ふるさと納税の存続が危ぶまれる状況を招き、是正を求めるべき事情にあった」とも認めた。
総務省の態度を強硬にさせたのは、制度改正に水を差すような、泉佐野市の規制強化前のなりふり構わない対応だった。「閉店キャンペーン」と銘打つ寄付募集で総務省を挑発し続け、今年度も4、5月の2カ月間だけで、約185億円の寄付金を集めた。
ふるさと納税は、都市部に比べて税収が少ない地方を応援するのが本来の趣旨だ。返礼品競争の過熱に歯止めをかけたいという総務省の立場に、委員会は理解も示した。
過度な寄付集めを継続した泉佐野市が制度に復帰するとなれば、制度見直しに従ってきた大多数の自治体との不公平は解消されないままとなる。委員会による同市除外の再検討勧告は総務省にとり打撃だが、総務省も簡単には引けず、両者が対立する構図は当面、続きそうだ。(高木克聡)
ふるさと納税「除外再検討」勧告 泉佐野市「感謝」
2019/9/2
6月からのふるさと納税新制度を巡り、総務省の第三者機関である「国地方係争処理委員会」が大阪府泉佐野市の参加を再検討するよう総務相に勧告することを決めた。市は2日、「委員の皆様には本市の主張をおおむねご理解いただき、感謝いたします」とのコメントを出した。市にとって有利な勧告とみられ、今後は総務省の対応が焦点となる。
泉佐野市は総務省がふるさと納税新制度への参加を認めなかったことを不当として、6月に係争委に審査を申し出ていた。総務省の決定を取り消し、新制度への参加を認める勧告を出すことを求めていた。今後、審査結果の文書を「手元に届き次第、改めてしっかりと確認させていただく」(泉佐野市)という。
ふるさと納税の新制度は6月1日施行の改正地方税法を根拠に、返礼品を寄付額の3割以下の地場産品に規制している。同市は改正法施行前にこの規制に従わなかったとして新制度から除外され、「法の遡及適用は認められない」(千代松大耕市長)などと主張してきた。係争委は泉佐野市の主張を全面的に認めたわけではないが、総務省が法に基づくルールを遡って適用し、新制度から除外したことを問題視した。関西では同市のほか、和歌山県高野町も除外されている。
「分権」忘れた総務省、ふるさと納税で失策
編集委員 斉藤徹弥
地方分権の旗振り役の総務省が分権の意味を忘れていたようだ。ふるさと納税の大阪府泉佐野市への規制をめぐり、国地方係争処理委員会は分権の観点から規制の理由が乏しいと判断した。国と自治体を対等とした地方分権一括法の成立から20年。曖昧な権限で国が自治体を統制し続けることに警鐘を鳴らした形で、霞が関の各省も我が身を振り返る必要があろう。
問題になったのは、ふるさと納税で過熱する返礼品競争を抑えようと、返礼品の金額を寄付額の3割以内にするよう求めて総務省が自治体に出した通知だ。これは「技術的助言」と呼ばれる要請で、法的には自治体に従う義務はない。
それでも多くの自治体は「高額な返礼品はふるさと納税の趣旨にそぐわない」という総務省の考え方を受け入れて3割ルールに従った。しかし泉佐野市などは返礼品を工夫するのは自治の範囲内だとして要請を無視し、高額の返礼品で多額の寄付を集め続けた。
正直者が損をする事態に、総務省は自治体の良識に期待するのをあきらめ、法律で規制することにした。規制の要件に考えたのが3割ルールに従わなかったという事実だ。しかし守る義務のない技術的助言に従わなかったというだけでは規制の理由として不十分だと係争処理委は判断した。
係争処理委は泉佐野市をふるさと納税から外したこと自体が誤りだとはしておらず、総務省は規制する理由を追加して除外という判断を維持したい考え。ただその場合、泉佐野市は高裁に提訴でき、規制の根拠が法廷で問われることになる。
技術的助言を規制の根拠にすることについて、総務省内にも「行政法的に弱い」との見方があり、法的な枠組みの詰めに甘さがあった面は否めない。係争処理委の判断に、ある幹部は「想定外とは言わないが、かなり厳しい」との認識を示す。
国と自治体のトラブルを審査する係争処理委はこれまで訴える資格がないなどと自治体を門前払いすることが多かった。それだけに今回は「争いの中身に立ち入って国に厳しい判断を下すのは珍しい。初めて仕事らしい仕事をした」(総務省幹部)と驚きが広がった。
国と自治体の関係は1999年に成立した分権一括法で大きく変わった。自治体を国の下請け機関としてきた機関委任事務制度が廃止され、国は強制力を持って自治体を「指導」することはできなくなった。代わりに技術的助言や勧告などの仕組みができたが、従うかどうかは基本的に自治体の判断になった。
それから20年。自治体に求められる行政サービスが多様化する一方で、人口減少に苦しむ地方は人材も財源も余裕がない。自治体は国に頼らざるを得ず、強制力のない国の助言にも従うのが当たり前になりつつある。
こうした分権の後退ともいえる状況への慣れが、制度設計に甘さをもたらした一因だろう。これは総務省に限らず、霞が関全体に言える現象ではないか。分権の理念と行政の実態を改めて点検する時期に来ている。
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