時事

日本シリーズ前日、ドラフトが行われました。NPBのドラフトは強豪チームに有利に働くシステムです。「くじ引き」という訳のわからんルールで行われる光景を見ると、テキヤの屋台の場所取りと変わりありません。元来、公平な戦力均衡を目指したドラフトのはずが、「くじ引き」で戦力均衡できると思っているのでしょうか。我が西武ライオンズは2連覇を果たしながらも、2年続けてCS敗退。リーグ優勝しても日本シリーズへ出れていない元凶は、各球団の戦力不均衡から来る、その場しのぎの経済効果を狙うクライマックスシリーズにあります。年間通じて強いところが出る日本シリーズではなく、CSの時期に戦力があるチームが出るのですから、それは日本シリーズとは呼ばず単なる交流戦です。

そもそも、セ、パ両リーグとも6チームしかいないのに、上位3チームでCSを戦う意味がありません。2年続けて西武を破ったソフトバンクの辛辣なファンの書き込みを見ればわかります。CSで勝ったって、それは日本一じゃないってファンも考えてる制度を維持することは、ファンに対する背信であり、今は球団努力で観客動員数や売り上げも伸びていますが、そんなものは微々たる話で持続性がありません。抜本改革なしに繁栄はないのです。

今、ホットな話題で中国と揉めているNBAは、中国だけで4000億円の収益を得ていますし、メジャーへ目を移せば、3地区の30チームで、まだ新球団申請をしている地域もあるというように、常に拡大拡張の努力がなされています。3地区30チームだからプレーオフも必要なのです。放映権も入札が行われ、莫大な放映権料がリーグに入りチームに分配されます。更に、読売、中日のような報道を生業とする企業が球団を持つことは禁じられています。ドラフトは前年下位チームから指名し、重複指名できませんから、強豪チームは29番目、30番目に指名することになりますし、1年以内にFAで有力選手(毎年、年棒の基準が変わります)を獲得したチームは、1位指名権を辞退するという「競争こそが繁栄の根源であり、競争の前提となる戦力は公平に獲得できるようにする」という精神が貫かれています。

更にメジャーリーグより進化しているのがNFLです。NFLでは1936年からドラフトが開催されており、ドラフトのみならず、毎年、オーナー会議、コーチ会議、経営諮問委員会で、制度やルールの改正が行われています。一度決めたらなかなか変えられない日本の制度と違い、とにかく新しいことにチャレンジし、それも毎年見直していくのです。NFLはこの30年で売り上げが480%アップ、各チームの時価総額は30年で25倍に増えました。2倍や3倍じゃなく25倍!。30年前に250億円の時価総額でプロスポーツ界で1番だったダラス・カウボーイズの時価総額は7000億円になっています。不動産など足元にも及ばない投資価値が球団にあり、その価値を常に高める努力がなされることによって、価値に見合うためにオーナーにも努力が必要で、それが認められないオーナーは除名となり球団を手放さなければなりません。また、企業が球団を持つことは禁止されており、地域密着型の個人か株式を市民に持ってもらう市民球団しか認めていませんから、NPBのように親会社の意向など介入しないシステムになっています。チームの年会支出は全チーム共通でサラリーキャップという上限が設けられており、サラリーキャップはNFLの売り上げに伴って上がったり下がったりします(下がったことはありませんが(笑))。したがって、NFLが繁栄すれば選手を含めギャラが増え、衰退すればギャラも減る仕組みですから、チーム一丸となり人気の獲得、地域奉仕活動、社旗福祉活動へまい進するのです。

NFLドラフトは、下位球団から指名する完全ウエーバー制度を敷いてますが、ドラフトでやり取りされるのはドラフト候補生だけではありません。①ドラフト候補生。原則は大学卒業者に限りますが、アーリーエントリーといって高卒後に3シーズンプレー経験があればエントリーできます。②他の指名権との交換。例えば、今年全体6番目の指名権を持っているとして、その指名権と2巡目の指名権2回とか、来年の1巡目6位以上早い指名権といった「権利交換」ができます。③マネー&キャップ。例えば6番目指名権を欲しいチームに、そのチームが持っているサラリーキャップと金銭を合わせた交換ができます。④支配下選手。ドラフト指名権と支配下選手を交換できます。上記の4種類に加え、各々の組み合わせ、例えば、指名権+現役選手+現金という風に組み合わせが可能ですから、理論上は256通りの組み合わせがあり、それをドラフト当日の指名時間(10分)の間に、他チームと交渉したりしますから、頭のトロい人では務まらない仕事ですし、チームの運営方針、長中短期目標などの指針が明確でなければできませんから、その目標をも公表し地域の賛同を得ながら進めていきます。また、その交渉を担うチームのドラフトブースも公開されるなど、ドラフトそのものが大きなイベントであり、二日間にわたって行われるドラフトの放映料は、今年のドラフトは1200億円でした。また、ドラフトが開催される候補地の選定すらイベントになっており、各州、各市がPRイベントを開きプレゼンテーションするという風に、オリンピック開催地選びより遥かに力もお金も動いています(政治家は立ち入れないようになっています)。

このように、スポーツ先進国のアメリカと比べれば周回遅れの日本のプロ野球で、NFLと比べれば周回遅れどころか50年遅れていますから、日本のプロ野球はまだ高度成長にすら達していません。