時事
数回にわたり増税後を考えます。
政府が行う経済政策の中で、税金ほどわれわれの生活に直結するものはありませんし、政府から見ても税は国家の根幹です。税金の必要性は、社会全体の観点からは明らかなのは言うまでもありません。
国家や経済には、公的インフラや公共サービスのように、民間企業では適切に供給できないものが存在します。先の台風被害を見ても明らかです。また、社会の安定化のためには社会保障も必要で、現代の自由主義社会では、それらは政府が担うことが当然と考えられてます。
しかしそれには資金が必要で、政府はその資金を取りあえず国債の発行で賄うこともできますが、それには自ずと限度があります。その政府債務の限度がどのくらいかは実際にはよく分かりませんが、それが行き過ぎると、財政破綻や悪性インフレが生じると信じられています。そうならないために必要と考えられてきたのが、増税を通じた「財政再建」です。
他方で、われわれ個人の観点からは、税金は単に「政府による所得の収奪」です。所得税は文字どおり政府への直接の所得移転です。消費税はそれを、物品売買ごとに間接的に行います。従って、増税すなわち税率の引き上げが行われれば、われわれの可処分所得は確実に減少するのです。当然、収入や貯金には限りがあるので、われわれは支出の切り詰めを余儀なくされます。
つまり増税は、仮にそれが財政再建に必要であったとしても、ほぼ常に経済全体の需要を減らすように作用するということです。場合によっては、深刻な景気悪化につながります。
実際、1997年4月に行われた消費税率の3%から5%への引き上げは、厳しい景気悪化をもたらし、その後に続く長期デフレ不況の引き金となりました。また、第2次安倍晋三政権によるアベノミクスの発動によって進展していたデフレ脱却を頓挫させたのは、2014年4月に行われた消費税率の5%から8%への引き上げでした。
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