時事

昨日に続き。

消費増税の場合には、単なる可処分所得減少による支出減少のみではなく、「増税前の駆け込み需要の反動減」が加わるために、増税実行後の経済の落ち込みは、より一層大きくなります。今回はポイント還元の期日が来年6月ですから、7月からのオリンピックが終われば日本経済は無風になります。

消費増税問題は、バブル経済が崩壊した1990年代以来、日本の経済政策の一大争点であり続けてきました。その長年にわたる論争と合意、そして延期の結果、2019年10月に因縁付きの増税が実行されるに至ったのです。

消費増税が政策課題としてクローズアップされた発端は、バブル崩壊後の税収減と財政支出によって急拡大した財政赤字を背景に、1994年に提起された細川元首相の「国民福祉税」構想です。この構想はあっさり頓挫しましたが、増税方針自体は生き残り、1997年4月に消費税増税が実行されました。

この増税により、日本経済は戦後最悪の経済危機に陥ります。それは、1996年頃までの緩やかな景気回復の中でそれなりに消化されているようにもみえた金融機関の不良債権が、景気の悪化によって一気に表面化したからです。その結果、1997年末から98年にかけて、日本を代表する金融機関が次々と破綻。そのようにして生じた金融危機は、その後の日本経済に、デフレという厄介な病を定着させる契機となったのです。

日本経済は、この消費増税を契機とした経済危機の後、一時的な景気回復は見られたものの、経済停滞と財政悪化が同時進行する長期デフレ不況に陥りました。そこで生じたのが、「増税による財政再建」論と「デフレ脱却と経済成長を通じた財政再建」論との路線対立です。

これは要するに、財政再建を優先するか、景気回復を優先するかの対立で、財政再建派は、増税が一時的には景気悪化をもたらすことは認めるが、それは財政破綻を防ぐために甘受すべきとします。

それに対して景気優先派は、財政再建のためにもまずは増税ではなく景気回復によるデフレ脱却が必要だとします。それは、デフレとは物価や所得が継続的に下落することであるから、その物価や所得に依存する税収はデフレが続く限り減少して当然だからです。

こうした財政緊縮論と、反緊縮論すなわち景気優先論の対立は、景気悪化が続けば、日本に限らずどの国でも必ず生じています。2008年9月に米投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻し、いわゆるリーマン・ショックが起きました。それを契機に「100年に1度」と言われる世界的不況が生じたとき、各国は一斉に景気回復のための拡張的財政政策、すなわち財政支出や減税を行っています。

しかし、多くの国の財政状況は、厳しい景気悪化に伴う税収の減少と、この財政支出拡大の相乗効果によって、急激に悪化しました。その結果生じたのが、2010年春のギリシャ危機を発端として欧州各国へと拡大した欧州債務危機です。世界各国はこれを契機に、今度は逆に財政再建のための緊縮財政へと舵を切りました。

しかし、考えれば緊縮財政がバカげているのは子供でも分かる話です。袋の底に赤字という穴が置いて漏れているところに、入り口を緊縮で絞めれば、どんどん袋の中が目減りします。

まず、袋の入り口を財政拡大で増やし、袋の目減りを止めてから穴を塞ぐというのが唯一の手法ですが、机上論しか勉強してない緊縮派は、穴が開いているなら穴を塞げとしか映らない大バカ者の集まりです。