時事

昨日に続き。

リーマンショック後の財政政策の右往左往を象徴する国の1つは、今ブレグジットでもめているイギリスです。イギリスは、リーマン・ショック直後の2008年12月に、景気回復のため、付加価値税(日本でいう消費税)の17.5%から15%への引き下げを、各国に先駆けて実行しました。

しかし、財政悪化懸念の高まりを背景として、2010年1月には税率を15%から17.5%に戻し、その1年後の2011年1月にはそれをさらに20%にまで引き上げています。つまりイギリスは、わずか2年の間に5%もの増税を行ったのです。

今回の日本の消費増税の根拠となっている、旧民主党政権下の2012年6月に民主党・自民党・公明党によって取り決められた「社会保障と税の一体改革に関する合意」、いわゆる消費増税の3党合意も、ギリシャ危機以降の世界的な財政懸念を受けて成立したものとされています。そこでは、財政再建のために、5%であった消費税率を2014年4月から8%へ、さらに2015年10月から10%とすることが定められました。尚、全会一致原則をとる自民党にあって、この時点では総理大臣に返り咲いていない安倍総理は反対票を投じています。

しかしながら、その増税の完遂は結局、当初の予定から4年遅れることになりました。それは、3党合意成立直後の2012年12月の総選挙によって、自民党・公明党が政権に復帰し、アベノミクスすなわち「金融政策、財政政策、成長戦略という3本の矢を用いたデフレ脱却」を掲げる第2次安倍政権が成立したからです。

安倍政権は、2014年4月の消費増税は予定どおり実行したものの、2015年10月に予定されていた2回目の増税は、難航するデフレ脱却をさらに困難にするという判断により、2度にわたり延期。従って、今回の増税実施は3度目の正直ということになります。

今回の消費増税の影響については、専門家の間でも悲観論と楽観論が交錯しています。悲観論の最大の根拠は、これまでの前2回の増税がいずれも事前の想定以上の負の影響をもたらした事実にあり、ファクトとエビデンスがそろっていますから説得力があります。間が悪いことに、好調を維持していた世界経済も今年に入って明らかに減速している。最も懸念されるのは、デフレ脱却がいまだ不十分であり、人手不足が喧伝されつつも、十分な賃金上昇までには至っていない点にあります。

消費増税によって人々の実質所得がいったん減少したとしても、賃金が上昇し続けている限り、その負の影響は時間とともに打ち消されるものです。諸外国では消費増税の下押し効果が一時的でしかないのは、そのためであり財務省のポチ学者が宣うような「国民の福祉に対する理解」など全く関係がありません。単に「出ていく分もあるが増える分もある」という損得勘定のみです。

竹下登政権下の1989年4月に導入された3%という最初の消費税が、ほぼ何の影響ももたらさなかったのも、当時の日本経済では毎年5%弱程度の賃金上昇が実現されていたからです。意味の分からない高尚な学論を述べる識者や学者は「国民の損得勘定」など理解できず、絵に描いた餅を実行しようとしますが、この絵に描いた餅が、小渕内閣以降、日本の国債発行高を増やし続け、アベノミクスで初めて減ったのです。