時事

連日世界をにぎやかす香港のニュース。先日は、警官隊が大学に突入、制圧するなど大きな騒動となりました。今回の問題が中国のほか、欧米、日本など国際社会に与える影響はどうか考えます。

24日の地方選挙は混乱の中で実施されました。香港で地方選挙は「最も民主的な選挙」といわれ、他の選挙では立候補者を共産党が限定するなど、とても民主的とはいえないなかで、比較的まともだと評価されています。

選挙をめぐっては、投票結果で民主派が勢いづくことを恐れた香港政府が、民主派の闘争によって安全上の理由が生じたとして延期するのではないかとの憶測もありましたが、結局実施はされたものの、香港の選挙は投票するために事前登録が必要で、そこでかなりの不正があったとも指摘されています。

一国二制度の矛盾は、司法の動向からよく分かります。デモ参加者のマスク着用を禁じる「覆面禁止規則」は香港基本法に違反するとした香港高等法院(高裁に相当)の判決に対して、中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)常務委員会法制工作委員会の蔵鉄偉報道官は、覆面禁止規則は「香港基本法に適合している」と発表しました。香港の司法に中国当局が不快感を示した形です。

もともと香港基本法158条は全人代常務委が基本法の解釈権を持つと定めます。これでは中国の意のままで、司法における一国二制度が成り立っていなかったのですが、金融シティの地位を守りたい共産党は、表面面を整えた香港を宣伝してきたものの、今回、面の皮が剥がれ、それが明確になったわけです。

欧米の自由・民主主義国では、高度な自治を有する一国二制度ともいえる自治領が歴史的に存在しました。しかし、やはり中国では、自由も民主主義もなく、その歴史もないので、一国二制度は当初から無理だった結論付けられますが、当時のイギリスには力も金もなく、香港を維持する体力がなかったのです。

返還前も無茶苦茶でした。日本のデパートの大丸が設立し、その後現地法人になった商社からの誘いがあり、一定量の資金を供託すれば永住権の現地法人等の優遇、今でいうタックスヘイブンを行政府自らセールスしてたんですから(笑)。

話を戻して、今の香港から一国二制度を除いたとすると、経済はガタ落ちになりかねません。経済しか特徴のない香港が、経済がガタガタになると香港そのものの存在価値がなくなります。実際に香港の今年7~9月期のGDP成長率は、前年同期比でマイナス2・9%でした。四半期のマイナス成長はリーマン・ショック以来10年ぶりです。抗議デモの深刻化による観光客の減少と、米中貿易戦争による中国経済の減速というダブルパンチに見舞われた形で、実際のダウン幅はもっと深刻でしょう。

香港は、英国スタイルの規制がない世界有数の金融センターですが、自由な金融取引ができなければ、ニューヨークとロンドンに次ぐ世界第3位の金融センターとしての将来は明るいとは言いがたく、中国式の金融規制や金融不正が支配的になれば、どんどんマネーは香港から逃げていくでしょう。今の機会を逃さず、安倍総理、特に世耕経産大臣には得意を発揮していただき、東京都千代田区を特別金融特区にし、香港マネーを強奪する動きだけでもしてほしいものです。

今回の中国政府の傀儡の行政府の行動を見れば、中国という国の本質が世界中に伝わったでしょう。口では自由などといったところで、共産党には自由の欠片も無く、所詮場当たり的な言い逃れでしかありません。中国は「支配」と「支配されるもの」しか価値観のない世界なのです。いくら選挙で勝ったところで、長い目で見れば共産党を壊滅させなければ香港に自由はありません。