時事

ブルームバーグ氏が大統領選に立つことを発表しました。ただ、民主党候補として出るのか、以前のように単独で出るのかははっきりしていません。今のところ民主党のようですが、当の民主党からは歓迎されない州も多く、現有候補はもちろん批判しています。

ホワイトハウスは、記者会見を含む全ての報道からブルームバーグの記者を締め出すと発表し、これが再び批判の的となっていますが、ホワイトハウスの決定は至極全うです。敵陣営の社員が記者の顔をして入り込むという異常な話がすり替わって、トランプ大統領の言論封殺という風に報道される現在のアメリカメディアの在り方は異常ですし、問題の核心はそこではなく、ブルームバーグという市場データをいち早くキャッチし膨大なデータ蓄積のある企業のオーナーが大統領になっていいのかということです。利益相反どころか、ブルームバーグ氏が大統領になったと仮定すれば、大統領のすべての行動が利益相反になります。

そこで、ブルームバーグ氏も既に77歳ですから、ブルームバーグ社を売るんじゃないかと憶測されています。そのニュースが下記。事の次第より、掛け算をするアメリカ経済のダイナミックさが、足し算と引き算しかない日本経済との差となっているように思える記事です。



ブルームバーグ社は売却されるか、大統領選で臆測

2019 年 12 月 3 日 10:45 JST

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 ブルームバーグを巡るレースと言えば、ほとんどの人は民主党の大統領予備選への参加を表明したマイケル・ブルームバーグ氏(77)のことを思い浮かべるだろう。しかし投資家は全く別のものを想像するかもしれない。同氏の名前を冠した金融情報最大手のブルームバーグ社だ。

 ブルームバーグ氏の政治家としての未来が自身の会社にとって何を意味するのかをめぐり、さまざまな観測が流れている。今のところははっきりしない。同氏が民主党の大統領候補に指名されるか大統領に当選した場合、自身の保有株はブラインド・トラスト(白紙委任信託)に移管する可能性が高いと、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は報じてきた。ブルームバーグ氏自身は、年齢も考慮して、当選した場合には会社の売却を検討する可能性もあるとしてきた。ブルームバーグ社の広報担当者は「当社は売り物ではない」と述べている。

市場データ世界売上高ブルームバーグやリフィニティブといった企業が提供する市場データサービスの売上高は急拡大Source: Burton-Taylor International Consulting

(単位:10億ドル)2013’14’15’16’17’180510152025$30

 ブルームバーグ氏の政治家としての運命にかかわらず、投資家がブルームバーグ社売却の可能性について考える理由はもう一つある。それは、金融技術関連の買収交渉をまとめるには今が非常にいいタイミングだということだ。トレーディングとデータを扱うブルームバーグの同業他社は、企業価値評価の急上昇に伴って大きな資金力を確保している。各社の売上高は拡大し、買収案件が相次いでいる。ブルームバーグに最も近いタイプの企業であるリフィニティブが、ロンドン証券取引所グループ(LSE)と合体するという大きな戦略的飛躍を遂げたことは、とりわけ注目される。

 ブルームバーグが身売りするとなれば、規模の面でも戦略的にも、こうした買収案件の中で最大のものになる可能性がある。同社の事業の柱は、銀行・ヘッジファンド・資産運用会社・保険会社などに利用されているコンピューター端末の使用契約料だ。トレーディングなどの機能や商品はこの端末網を通じて提供される。

 金融仲介業者TP ICAPの子会社で、金融データセクターの動向を追跡するバートン・テーラー・インターナショナル・コンサルティングによると、2018年時点で約33万0500台の端末が稼働していた。端末1台当たりの料金は年間約2万5000ドルのため、ブルームバーグの推計総売上高約100億ドルの大半を占める計算だ。バートン・テーラーの推計では、ブルームバーグの利益率は約37%、EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)は約38億ドルだ。

 ブルームバーグの企業価値はどのくらいなのか。同社と競合する端末を販売し、やはりデータおよびトレーディングに関する資産を保有するリフィニティブは、EBITDAの約13倍という企業価値でLSEに買収された。この倍数を使うと、ブルームバーグ社の企業価値は500億ドルに達する可能性がある。

 ブルームバーグの倍数はより大きいという見方もある。同社端末にはチャット機能があるため、ウォール街でより一層中心的な役割を担っているなどの理由からだ。一方、同社を分割して一部の売却でより高い倍数を得るのは難しいという理由で、倍数はより小さいとの見方もある。精査できる公開された財務諸表がないため、推測するしかない。

 リフィニティブの売却案件を参考にすると、明らかなパートナー候補として2社が浮上する。取引所を運営するCMEグループと、ICEとして知られるインターコンチネンタル・エクスチェンジだ。時価総額730億ドルのCMEは、ブルームバーグ全体を株式で買収した場合でも、ブルームバーグ氏に支配的な地位を与えずに済む(同氏はブルームバーグの90%弱を保有していると言われている)。

 ICEの規模はCMEより小さく、時価総額は520億ドル。ただ戦略的にはより自然な組み合わせかもしれない。ICEは2015年にブルームバーグと競合するインタラクティブ・データ(IDC)を買収した。IDCとブルームバーグはともに、急速に発展する債券電子取引市場における主要企業であり、投資家が高い価格をもいとわない組み合わせである。両社の事業の重複は買収成立の理由になるかもしれないが、逆に反トラスト法(独禁法)上、買収が成立しない理由となるかもしれない。

 パートナー候補として考えられる別の可能性は、他の金融データ企業だ。とりわけブルームバーグが主要取引所からの独立を維持したい場合はそうだろう。リフィニティブが取引所と統合した今、独立はブルームバーグの資産価値の一部かもしれない。例えばS&Pグローバルの時価総額は650億ドルで、十分な規模がある。データや分析サービスを提供するSNLフィナンシャルの買収を含め、格付け事業以外への拡大を続けている。

 ブルームバーグ同様、米金融市場のデリバティブ事業で主要な地位を占めるIHSマークイットの時価総額は300億ドルをわずかに下回る。同社、あるいはナスダックやマーケットアクセス・ホールディングスなどより小規模な取引所との統合の場合、ブルームバーグ氏が支配的な株式の保有を回避しようとするのであれば、ある程度の手元資金が必要となるだろう。

 手元資金が問題となるのであれば、いつでもプライベート・エクイティーという手段がある。リフィニティブを所有していたトムソン・ロイターは、LSEが買収する前に、ブラックストーン・グループに支配株式を売却している。また、アマゾンやマイクロソフトなどハイテク企業との組み合わせも想像できる。両社とも自社のクラウド事業部門と金融データの統合を進めつつある。とはいえ、自社でデータを保有したり、当局の監督対象となっているブルームバーグのブローカー事業などを取得したりするのはハードルが高い。

 ブルームバーグ氏は候補者の多い大統領予備選で浮上しないかもしれず、そうなれば以上の議論はすべて机上の空論となる。それでは投資家にとって面白くないだろう。