時事
今は、米中貿易戦争が経済・安全保障問題を超えて「人権問題」にもなりつつあります。「あの」トランプ大統領が中国に対して人権を言うというのも、我々、西側民主主義国の人間からみれば奇妙と感じる部分もありますが、中国のような無頼に対しては言ってもおかしくありません。
そもそも香港人権法案が議会で圧倒的多数で成立したので、トランプ大統領も署名せざるをえませんでした。署名せずに大統領が拒否権を使っても、議会両院の3分の2以上の多数で再可決すれば、拒否権は意味がなくなるからです。ウイグル人に対しても似たような人権法案が議会で成立するでしょう。
これらはトランプ大統領にとって中国との交渉カードの一つで、中国も簡単に妥協できず、更に、貿易紛争は「利害の対立」ですから他国の同意は得られませんが、人権問題は世界共通の問題ですから、西側諸国は一致できます。アメリカからすれば、交渉カードはまだ豊富にあるので、貿易だけの第一段階で、中国の足下をみて合意したという見方が正しいと思います。
こう考えると、米中貿易戦争は容易に終結しないという前提で考えるべきで、第1~3弾の関税25%も、いつなくなるのかわかりません。第1~3弾の対象となっている中国製品は、アメリカによって輸入代替品、つまり価格が高くなれば中国以外の国から輸入可能な製品で構成されています。中国企業は、アメリカ国内シェアを失いたくないばかりにアメリカ向け輸出価格を引き下げているところが多かったのですが、これがますます中国経済へ大きな打撃を与えています。
こうした状況が継続するので、中国経済と関係の深い韓国や日本への悪影響は当分続くとみるべきですし、アメリカが神経をとがらす産業や品目は、ゆっくりフェードアウトしていくべきです。
悪影響を軽減するためには、日本国内経済をしっかりさせることが最低限必要で、その上で、これまでの歴史を振り返ると、中国はアメリカから制裁を受けると日本にすり寄って来ましたから今回も同じで、来春に習近平主席が国賓として来日する予定です。
これについては、自民党内の保守系議員から反対意見があります。尖閣諸島など安全保障上の問題や人権問題についてはっきり言う覚悟がなければ、習主席を国賓として訪日させることは、国際社会に間違ったメッセージをあたえてしまいかねません。安倍総理は習近平国家主席と一緒に壇上に立ち、その場で中国の人権問題や領土問題を非難できるでしょうか?政治的に考えれば、国賓扱いをやめるか、同席上で中国を非難するの2択以外を選択した場合は、世界での存在価値が下がります。
最近は、西欧諸国が多数加わる北大西洋条約機構(NATO)の29カ国も、NATO宣言の中で「中国からの挑戦」に言及しています。対中国の距離感をどのようにとるか。下手をするとアメリカの虎の尾を踏みかねません。対中国の対応ミスで、日本企業がアメリカ市場から締め出しを食らえば、日本経済にも大打撃になりますから。ここは日本外交の試金石です。
最後に、北朝鮮です。米朝首脳会談が膠着しています。米朝首脳会談は、第一回が2018年6月にシンガポールで開催され、第二回は2019年2月にハノイで行われました。ハノイでは決裂しましたが、2019年6月に米朝両首脳が板門店で面会しています。もっともこれは米朝両国とも「首脳会談ではない」としていて、その後、年内の首脳会談を模索されましたが、その前段階の実務者協議で難航しています。
アメリカは、柔軟姿勢を示すためにボルトン補佐官を9月に解任し、10月に北朝鮮との実務者協議をストックホルムで行いましたが決裂しました。その後、北朝鮮は一方的に交渉期限を年内に設定し、アメリカを牽制してきましたが、昨日、韓国を訪問中の実務団が「非核交渉に期限はない」と文大統領に述べ、文大統領の顔が硬直しました。
北朝鮮は8日、北西部・東倉里にある「西海衛星発射場」で、前日の7日に「非常に重大な実験が行われた」と発表。これに対して、アメリカの要請により、11日の国連安全保障理事会で核・ミサイル開発に関する公開会合が開かれました。北朝鮮は14日、13日に「重大な実験」を再び実施したと発表し、さらにアメリカを牽制。まさに米朝のチキンレースの様相を呈しています。
現在のアメリカは、軍事偵察衛星や弾道ミサイル情報収集用偵察機「コブラボール」を朝鮮半島に飛行させ、さまざまな情報収集を行いつつ、B52戦略爆撃機を日本周辺まで飛行させ、北朝鮮に圧力をかけています。
今の状況は、トランプ大統領と金正恩委員長との個人的な関係だけが頼りの危うい状況で、両者による個人的な関係があるので、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射はこの2年間抑えられてきましたが、この年末にどちらかが行われれば、トランプ大統領と金委員長が会談する前の険悪な米朝関係に戻ってしまいます。というより、頼みの綱であった個人的な関係が崩れることになるので、2年前よりもさらに悪い状況になりかねません。その場合、ここ30年間で朝鮮半島はもっとも危険な状況に突入することになるでしょう。
ここ30年間の「もっとも危険な状況」とは、1994年の北朝鮮危機です。当時のクリントン政権下のアメリカは、北朝鮮の核施設を攻撃する一歩手前でした。韓国の金泳三大統領がクリントン大統領に懇願し、なんとか北朝鮮への攻撃は回避されました。
トランプ大統領は、政治家や軍人の経験のない民間人出身なので戦争は避けるだろうという見方もある一方で、もし金委員長との個人的な約束が反故にされたら、どうなるかわかりません。現代の常識では文官によるシビリアン・コントロールが戦争を回避するというのが一般論になっていますが、歴史が教えるのは軍人でない政治家や権力者が戦争を仕掛けてきました。軍人が軍事行動を肯定するのは仲間が殺された時だけです。
その上、米韓関係も冷え込んでいるのを通り越して、アメリカは韓国を裏切り者と受け取っていますから、クリントンの時のようにソウルでの死者を思いやるかどうかも微妙ですし、米軍はソウル近郊からは完全に撤退済みです。
ブレグジット、米中貿易戦争、北朝鮮のどれをとっても、日本への影響は深刻で、この時期に桜を見る会の報道に終始する日本のマスコミは、存続する必要があるのでしょうか?朝日や毎日など数社が倒産しても日本の報道は無くなりません。いい加減、日刊新聞法を廃止すべきです。
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