時事

米国側が韓国に在韓米軍の駐留費負担を現在の5倍以上に増やすよう求めています。一方の韓国側は、ハリス駐韓米大使らへ無意味な批判を強めています。

アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所のHPによれば、米軍の海外駐留経費は人件費を含むと約210億ドル(2・3兆円)。そのうちドイツ、日本、韓国における駐留経費が150億ドル程度を占めています。人件費を除いた場合、3カ国で75億ドル程度で、内訳はドイツが約37億ドル、日本が約22億ドル、韓国が約15億ドルです。

これに対して各国が負担している額は、ドイツが10億ドル(1100億円)、日本が約18億ドル(2000億円)、韓国が約9億ドル(1000億円)で、負担割合はドイツが約3割、日本が約8割、韓国が約6割。この割合は、各国ともに米国との協定で決められています。

一昨年、米韓で協定期限切れになったので、交渉が行われ、米国はコストを完全に賄う額(5割増)を要求しましたが、韓国が1割増しか応じませんでした。その結果、通常は協定が5年間有効であるところ、1年間となり、昨年再交渉せざるを得なくなったのです。

そこで、米国は「5倍増の要求」と報じられ、これは人件費を含めたコストの1・5倍という水準です。韓国は一昨年に渋ったためにしっぺ返しをくらっているのが実情です。昨年末で期限切れになっていますが、いまだに交渉は纏まる目途も立っていません。しかし、基地に出入りする韓国の業者への支払いは米軍が韓国政府に支払い、韓国政府が業者へ支払うため、負担割合にかかわらず韓国の出費が増しています。

仮に「2割増」で決着したとしても、韓国の負担割合は80%弱で、せいぜい日本と同じレベルですからアメリカも引かないでしょう。

この米韓交渉の過程で、抑制の利かない韓国側から、米国への批判も出ています。韓国に駐在する日系人のハリス米大使が口ひげを生やしていることに関して日本の朝鮮総督を連想させるというもので、人種差別になりかねないもので、米マスコミも批判的に報じています。

米韓関係は、韓国の日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄表明から歯車が狂ったままです。文在寅政権は、4月の総選挙を控えて、米韓同盟を離脱する最悪のシナリオも、あり得ないことではありません。

日本の場合、来年3月末に米国との協定が期限切れになります。事務的には秋口以降に交渉が始まりますが、11月の米大統領選をにらんで大幅な増額要求があるでしょう。

もっとも、韓国の事例にならうと、まず人件費なしのコスト負担全額を要求される可能性が高く、それの具体的なものは、日本へ2割増の要求です。

日本の負担割合8割は、米国の同盟国中、サウジアラビアと並んで最も高い数字で、これを理由として米国の要求をはねのけるというのも一案ですが、要求の半分の1割増で手を打つという対応もありです。1割増でも200億円程度ですから、予算編成上は大した額ではありませんし、2割増であっても予算編成で対応可能な数字なので、さっさと受け入れて日米関係を強固にし、大統領選を控えるトランプ大統領に貸しを作るという選択肢の方が、今後も引きずるより賢明です。ボクなら100%負担を選択し、他国に先んずる方法をとります。