香港

続き。


トランプ大統領、怒りの演説

トランプ大統領は5月29日午後3時前、わざわざ中国問題のためだけに、ローズガーデンで記者会見を開き、中国に対して罵詈雑言を浴びせました。「通商強硬派」だったトランプ大統領の再選に賭ける中国に向けた怒りに、「軍事強硬派」の激しい主張も組み入れた、盛りだくさんの内容でした。少し長くなりますが、10分間の演説の要旨を訳します。 

 「今日は中国との関係と、アメリカの安全、繁栄を守るためのいくつかの新しい対策について話す。  中国の不正行為のパターンは周知のごとくで、彼らは何十年もの間、前代未聞のようにアメリカを食い物にしてきた。年間何千億ドルもが、特に前政権時代に中国との取引で失われた。中国はアメリカの工場を襲撃し、仕事を奪い、産業を根絶やしにし、知的財産を盗み、WTO(世界貿易機関)での関与をエスカレートさせた。さらに悪いことに、中国は発展途上国ヅラして、アメリカを含む他国には与えられない多くの権益を享受してきたのだ。  中国はまた、太平洋の領土を違法に主張しており、航行の自由と国際貿易に脅威を与えている。かつ中国は、香港の自治を保証するという世界に向けた約束を反故にした。  アメリカは中国とのオープンで建設的な関係を望んでいるが、そこへ至るには、こちらも国益を積極的に守っていく必要がある。中国政府は絶えずアメリカや他国との約束を破っているからだ。  これらの明白な事実を見過ごしたり脇へ置いておくわけにはいかない。いまや世界は、中国政府の不正行為の結果に悩まされているからだ。武漢ウイルスの中国の隠蔽によって、疫病は世界に広がり、パンデミック(世界的流行)を起こし、10万人以上のアメリカ人、100万人以上の世界の人々の命が犠牲になったのだ。  中国当局は、WHO(世界保健機関)への報告義務を怠り、自分たちがウイルスを最初に発見した際、WHOに圧力をかけてミスリードした。無数の命が奪われ、世界中が深刻な経済危機に見舞われた。私は中国からの入国禁止措置を強く勧められてそうしたが、これは100%正しい応対だったことが示された。  中国は完全に、WHOを支配している。アメリカは年間4.5億ドル近く払っているのに、中国は4000万ドルしかはらっていないにもかかわらずだ。そこでアメリカが関与するWHO改革を直接、要求したが、WHOは行動することを拒否した。だから今日、WHOとの関係を断ち切り、その資金を他の世界的で価値ある、緊急の公共衛生のニーズに振り向けることにした。  世界は中国からのウイルスに関する回答を必要としている。透明性を持たねばならない。なぜ武漢を封鎖して感染者を閉じ込めたのか? それによってウイルスは北京へは行かず、代わりにヨーロッパやアメリカを含む世界中を回遊した。  計り知れない死と破壊をもたらしたのだ。アメリカだけでなく世界に対する釈明が必要だ。このパンデミックによって、アメリカの経済的独立を築き、重要なサプライチェーンを再構築し、アメリカの科学的技術的先進性を保護するという決定的な重要性を強調したい。  何年もの間、中国政府はアメリカの産業機密を盗もうと多くの違法なスパイ行為を行ってきた。今日、私は、国家の重要な大学研究をより安全にすること、及び潜在的な安全リスクのある中国からの特定の外国人の入国を一時停止するという宣言を行う。  私はまた、アメリカの金融システムを保全する行動を取っている。それは世界最高のものだ。私は金融市場に関する大統領ワーキンググループに、アメリカの投資家を保護する目的で、アメリカの金融市場に上場している中国企業の様々な慣行を研究するよう指示している。投資会社は顧客に対し、同じルールに則っていない中国企業への資金調達に関して、目に見えない過度のリスクを課すべきではない。アメリカは公正さと透明性を付与されるべきだ。  アメリカが取っている最重要の行動の中には、深く込み入った香港で繰り広げられている状況に関するものがある。今週、中国は一方的に香港の安全保障上のコントロールを敷いた。これは1984年の(中英共同)宣言における北京のイギリスとの条約上の義務、及び27年前の香港基本法に明記された規定への明らかな違反行為だ。  今回の中国政府の香港に対する行動は、香港が長年にわたりとても誇りにしてきた地位を低下させる中国側の一連の措置の最新のものと言える。  これは香港人と、中国の国民、それに世界の人々にとっての悲劇だ。中国は、国家の安全を守っているのだと主張する。だが実際には、香港は自由社会として、これまで安全で繁栄してきたのだ。北京の決定こそがそれらすべてをひっくり返すことになる。中国の侵略的な国家の安全保障の範囲を、以前は自由の砦だったものにまで拡大することなのだ。  他の最近の領土の自由を貶める行為と同様の今回の侵犯行為によって、香港はもはや明らかに、中国に返還以降の特別待遇に値する十分な自治が行われていないとみなす。中国は、約束した「一国二制度」という公式を、「一国一制度」に組み替えてしまった。そのため私は、香港の(中国本土とは)異なる特別例外措置を取り外す作業を始めるよう行政府に指示している。  今日の私の発表は、犯人引き渡し条約から双方使用の技術の輸出管理まで、ほとんど例外なく、香港とのあらゆる協定に影響を与えるものとなるだろう。  中国の安全保障機関による監視と処罰の危険の高まりを反映させるため、香港に対する国務省の旅行勧告を改定する。他の中国の地域とは異なる分け隔てた香港の税関、旅行の特恵待遇を解除する手続きを起こす。  アメリカはまた、香港の自治の侵食――それは見ただけで完全に香港の自由を窒息させる措置だ――に、直接もしくは間接に関与する中国と香港の当局を制裁するための必要なステップを取る。アメリカの行動は強力で、意義のあるものだ。  20年以上前、1997年の雨夜に、香港でイギリスの兵士がユニオンジャックを降ろし、中国の兵士が五星紅旗を掲げた。香港の人々は、同時に中国の遺産とユニークな香港のアイデンティティに誇りを持っていた。香港の人々は、その数年、数十年の後に、中国が香港を明るくダイナミックな都市に似合うよう変容させてくれると期待を寄せていた。世界の人々も、香港が過去の中国を反映させた成長ではなく、中国の未来を垣間見るような存在になるという楽観的な目で刮目していたのだ。  以上、私はすべての決定において、引き続き自信を持って、アメリカの労働者、家族、市民を守っていく」  

以上です。

ずいぶんといろんな要素をてんこ盛りになってますが、トピックとしては次の7つでしょう。  1)貿易・産業上の不正 2)南シナ海の不当な支配 3)新型コロナウイルスの蔓延 4)WHOの支配(WHOからの脱退) 5)中国人研究者・留学生の制限 6)中国企業のアメリカ市場からの追放 7)香港の特別措置の見直し  このうち、今回は香港問題に絞って述べます。


続く。